こんな馬鹿でダメな男、好きなはずないから

知見夜空

文字の大きさ
22 / 25
オマケ・学園祭とメイド服

素直ワンコ誠太郎

しおりを挟む
 夏休みの最後に、終わったはずの僕の初恋は予期せぬ形で成就した。脅迫者と被害者から恋人へと関係が変わったことで、お互いを名前で呼び合うようになった。彼に「 誠太郎せいたろう」と呼んでもらえるのも、彼を「 まもる」と呼べるのもとても嬉しい。

 僕が理想としていた清く美しい交際ではないが、無意識下でずっと願い続けていた恋が叶ったのだから、とても幸せだ。

 それから少し月日が経って10月の下旬。

 僕と守は学園祭の出し物で、クラスの皆で喫茶店をやることになった。調理係と接客係がハッキリと分かれており、後者は執事かメイドの仮装をする。

 普通なら単純に男子が執事で、女子がメイドになるところだ。けれど、せっかくの学園祭なのに普通じゃ面白くないと、身長170センチ以上と以下で、執事服かメイド服か分けることになった。身長180センチの僕は執事服で接客することになったのだが

「お前は恋人になっても僕で商売するんだな」

 学園祭当日。守は僕と写真が撮れる権利を、1枚500円で販売した。芸能人でもない男の写真に、500円は高い気がする。しかし執事服が良かったのか予想外に売れて、午前中だけで20人以上の女性に写真を撮られた。

 僕が不満を述べると、守はキュルン顔で

「だって、こんなに女子にモテる男が自分の彼氏だなんて自慢じゃん。だから写真を売るの。商売じゃないよ」
「そ、そうなのか?」

 自慢と言われて喜ぶ僕に、守は途端にゲス顔になって

「嘘だよ。チョロいな。俺の損にならない限り売れるもんはなんでも売ろうってだけだよ」
「やっぱり商売なんじゃないか! お前は本当に僕が好きなのか!?」

 守の僕を使った商売は、今日に限ったことじゃない。流石にナンパや合コンには駆り出されなくなったが、運動部への貸し出しは今も続いている。写真くらいならこうして売られてしまうし、なぜか恋人なのに各種雑用もさせられている。本当は僕の気持ちに付け込んで、いいように利用しているだけなんじゃないかと、しばしば不安になる。

 けれど守は激高する僕の唇にチュッとキスすると、頬に手を添えたまま僕を見上げて

「そうやってカンカンに怒りながら、俺を嫌えないところが可愛い。だから意地悪しちゃうの、分かる?」
「分からないがキスはズルい……」

 どんなに怒ったり悲しかったりしても、僕は守にキスされたりハグされたりすると、感情がリセットされて嬉しさでいっぱいになってしまう。そんな僕の心情など、相変わらずお見通しの守は

「機嫌が直ったみたいだな?」
「いや、流石に僕を安く見積もりすぎだ。後10回はしてもらわないと直らないぞ!」

 本当はとっくに機嫌が直っていたが、もっとキスして欲しくて駄々をこねてみた。しかし守はスッと僕から離れると

「今はいつ人が来るか分からないからダメ。その代わり、後でたくさんサービスしてやるよ。今日はちょうどメイド服だしな」

 身長168センチの守は、メイド服を着せられていた。しかもいわゆるミニスカメイドだ。女子はともかく他の男子は気の毒なことになっているが、守だけはとても可愛い。……そしてちょっとエロいので

「そ、その格好でサービスしてくれるのか?」
「満更でもないみたいだな? リアクションが薄いから、流石に女装は趣味じゃないのかと」
「女装が好きなわけじゃないが、お前が可愛らしい恰好をしているとドキドキする。とても可愛い」

 素直に愛情を口にすると、守は珍しく照れたように

「……お前はいろいろ甘酸っぱいね」

 目を逸らしたのも束の間、再び距離を詰めると今度は頬にキスをして

「後夜祭までこれで我慢して?」

 悪戯っぽく微笑んで接客に戻った。さっきは色々と文句を言ってしまったが、以前の一方的な搾取とは違い、恋人になってからの守は僕にたくさんご褒美をくれる。ただの奴隷は御免だが、愛の奴隷ならやぶさかではない。学園祭後のご褒美を目指して、仕事をがんばろうと僕は気を引き締めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

脱落モブ男が人気アイドルに愛されるわけがない

綿毛ぽぽ
BL
 アイドルを夢見るも、デビューできずオーディション番組に出演しても脱落ばかりの地味男、亀谷日翔はついに夢を諦めた。そしてひょんなことから事務所にあるカフェで働き始めると、かつて出演していた番組のデビューメンバーと再会する。テレビでも引っ張りだこで相変わらずビジュアルが強い二人は何故か俺に対して距離が近い。 ━━━━━━━━━━━ 現役人気アイドル×脱落モブ男 表紙はくま様からお借りしました https://www.pixiv.net/artworks/84182395

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

処理中です...