こんな馬鹿でダメな男、好きなはずないから

知見夜空

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オマケ・学園祭とメイド服

褒められたり貶されたり(視点混合)

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 1学期は「白石君って千堂に弱みでも握られているのかな?」と周りから見られていた僕たちだが、恋人になってからは脅迫の噂は払しょくされて、おおむねいちばんの親友、または千堂が飼い主で僕が犬として認知されていた。親友はともかく飼い主と犬扱いは不本意だが、女子たちが気を遣って、休憩時間が同じになるように調整してくれたのはありがたい。

 そのお陰で午前の当番から解放された僕たちは

「さぁ、自由時間だ。昼飯に行こう、誠太郎。ついでに奢ってくれ」

 流れるようにたかって来る守に、僕は流石に非難の目で

「当然のようにたかって来る……。僕はお前の恋人であって財布じゃないんだぞ……」

 金が惜しいわけではないが、もしかして金目当てなんじゃないかと不安で、つい恨み言を言う。すると守は僕の腕にスルッと抱きついて、上目遣いでこちらを見ると

「恋人だから甘えたいんじゃん。女の子みたいに彼氏に甘えたい。ダメ?」
「うぐぅぅ! なんでも頼めばいい!」

 恋人の媚態に負けて自ら財布を取り出す僕に、守は「やった」と笑って

「じゃあ、行こうぜ。聖のクラスが食堂をやっていて、遊びに行く約束なんだ」

 守に連れられて聖さんのクラスに向かった。家庭科室で調理したものを教室で提供しているようだ。

 食堂風に飾り付けられた教室に入ると、制服にエプロン姿の聖さんが出迎えて

「いらっしゃい、お兄ちゃん! 可愛いね、メイド服! すごく似合っている!」

 余談だが、僕も守もそれぞれ執事とメイドの格好のままだった。休憩を終えたらまた接客に戻らないといけないので、着替えの手間を惜しんだ形だ。僕はともかく守は女装なので、身内なら普通「女装なんて恥ずかしい」と嫌がりそうなものだが

「写真を撮ってもいい?」

 嬉々としてスマホを取り出す聖さんに守は

「いいぞ。ついでに誠太郎も入れるか?」
「ううん。お兄ちゃんだけで大丈夫」
「聖! ブラコンもいい加減にして! ここは普通、白石さんも入れるところだよ!」

 聖さんのあまりのブラコンぶりに、彼女の友人がツッコんだが

「普通とか分からない。私はお兄ちゃんだけの写真が欲しいの」

 聖さんは、やや狂気を感じさせる真顔で言い切った。彼女の友人は異常だと言いたげな顔をしたが、僕は守が好きなので、千堂家の兄妹仲が良くてとても嬉しい。

 守にとっても聖さんの反応はいつものことのようで、特に動じる様子も無く

「じゃあ、俺も聖の写真を撮らせてもらおうかな。皆も入ってよ。友だちも一緒のほうが、いい記念になるから」

 聖さんの希望どおり守だけの写真を撮った後に、集合写真を撮るように促した。僕はこの流れに便乗して

「守。いま気づいたんだが、僕もお前の写真が欲しい。後で撮らせてくれ」
「いいぞ。1枚500円な」
「有料なのか!?」
「嘘だよ。お前はタダでいい。どうせだから後で一緒に、誰かに撮ってもらおう」

 それから約束どおりツーショットを撮ってもらった。食事が運ばれて来るまで行儀は悪いが、スマホに表示されたツーショットをしげしげと眺めた。こうして見ると僕たち、衣装もお揃いだし、すごくお似合いじゃないか? と、とても幸せだった。


【千堂視点】


 誠太郎と聖には好評だった女装だが、一般の方々の感想はどうかと言うと

「見ろよ。今すれ違ったメイド、男だぜ」
「えっ、マジか? うわー、男のくせによくあんな恰好ができるな。恥ずかしくねーのかな」
「俺だったら無理だわー」

 聖のクラスを出て廊下を歩いている時、同じ学校の上級生たちが口にした言葉が、まぁ普通の反応だろう。趣味で女装しているわけでも自信があるわけでもないので、俺自身はノーダメージだったが

「よせよせ、誠太郎。殺気を放つな」

 修羅の表情で上級生を振り返る誠太郎を止めるも

「でも失礼だ、アイツら。謝らせて来る」

 言葉だけでなく実際に引き返そうとするのを見て、俺は慌てて誠太郎の腕を掴むと

「やめろって。今のは悪口じゃなくて、感想の範疇はんちゅうだろ。いちいち突っかかることじゃない」
「でも……」
「俺は全く気にしてないから、お前も気にするなよ。むしろ男の女装なんて笑われてナンボだからな」

 笑い話にするように自ら笑って見せたが、誠太郎はムッとして

「僕にはそんなノリ分からん。僕はどんな状況であっても、お前が馬鹿にされるのは嫌だ」

 例え傷つく言葉でも、あからさまな悪意じゃなければ流すのが普通だ。でもコイツは俺自身が目を瞑るような些細な悪意まで許せないと言う。ほんの少しでも傷つけたくないと思ってくれる。俺はその気持ちがくすぐったくて

「全く可愛いヤツだね、お前は」
「僕は真面目に言っているんだぞ!?」

 笑いながら言ったせいか冗談だと思ったようで、誠太郎は憤慨したが

「分かっているよ。だから嬉しかった。名前も知らんヤツラからの不評なんて吹っ飛ぶくらいにね」

 もう一度、今度はちゃんと真面目に言うと、アイツの背中をポンと叩いて

「だからお前も、もう機嫌を治せよ。せっかくの学園祭なのに、イライラしていたらもったいないぞ」
「……分かった。善処する」

 そんなやり取りのあと、気を取り直して教室に戻った。
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