34 / 52
秋のお話
誠慈君の欲しいもの
しおりを挟む
9月は誠慈君の誕生日がある。
クリスマスにはマフラーを、バレンタインにはチョコを渡したけど、異性にプレゼントを選ぶのって苦手だ。
あまり高いと気を遣わせてしまいそうだし、安いものだと特別感が無い。
考えすぎて外すよりは、と私は思い切って誠慈君に相談してみた。
例によって私の部屋に来た時に尋ねると
「あ、ありがとう。俺の誕生日を覚えていてくれて」
謙虚な誠慈君は、ただ私が誕生日を覚えていただけで喜ぶと
「でも俺は萌乃が祝ってくれるだけで嬉しいから、プレゼントはなんでもいいよ。強いて言うなら、萌乃の負担にならないものがいいな」
自分は全財産を捧げる勢いなのに、私の懐は痛ませまいと思うんだな。
あまり高額なものを買えないのは確かだけど、気持ちだけじゃなくてちゃんと誠慈君が喜ぶものをあげたい。
だからちゃんと何が欲しいか、考えてみて欲しいと改めて頼むと
「俺が欲しいもの……」
誠慈君は難しい顔で考え込んだ末に
「欲しいものって急に聞かれても、萌乃しか思いつかない……」
「私が欲しいって、どういう意味?」
彼の片想いならともかく私たちは恋人同士だ。人間を完全に所有することはできないが、すでに限りなく彼のものである。
「ゴメン、自分でも分からないんだけど。萌乃が好きすぎて、もっと萌乃が欲しくなる……」
誠慈君はそう言いながら、もどかしそうに私を抱きしめた。彼の艶っぽい声音に、欲情を感じた私は
「じゃあ、もっとエッチなことする?」
「わぁっ!? そういう意味じゃないんだけど!」
私の率直な指摘に、誠慈君は飛びのくように離れた。
ただ彼の真っ赤な顔を見れば、的外れではないと分かるので
「誕生日にものをもらうのと、いっぱいエッチするのだったら、どっちがいい?」
猫のように忍び寄りながら問うと、誠慈君は「うぅ……」と目をグルグルさせた。
「遠慮しないで正直に言っていいよ? 誠慈君が誕生日に、本当に欲しいのは何?」
重ねて問うと、誠慈君は火が出そうなほど真っ赤な顔で
「も、萌乃と……いっぱいエッチしたい……」
「話だけで待ち切れなくなっちゃうの、可愛い」
下半身の変化を指摘すると、誠慈君は「うぁ……」と、か弱い声をあげた。もうけっこうこういうことをして来たのに、初々しさを失くさないのすごい。
例によって最後まではできないけど、誕生日だし、いつもよりすごいことをしてあげたいなと
「あんまり嬉しくないかもだけど、私の裸でも見る?」
裸に自信があるわけではないので遠慮がちに尋ねると、誠慈君は「えっ!?」と目を見開いて
「は、裸を見せてくれるの? それって全部?」
驚き半分、期待半分といった感じで聞き返す彼に
「本当に何も着ていないところ、誠慈君が見たいなら見せる」
「それがプレゼントでいい?」と確認すると、誠慈君は少しためらいがちに
「あの、俺は嬉しいけど、萌乃は本当にいいの? 誕生日だからって、裸を見せてもらって」
私に無理をさせていないか心配らしい。かなり見たそうなのに、いつも私の気持ちを優先させてくれる。そんな彼の優しさが嬉しくて
「ダメなら自分から言わないよ」
私は彼にそっと身を寄せながら
「私も誠慈君に、そろそろ全部見られちゃいたい」
ちょっと自惚れっぽいけど、大好きな誠慈君を、もっと喜ばせたいから。私にあげられるものは、なんでもあげてしまいたい。
そんな気持ちで口にしつつ
「でも前に胸は見せたし、今さらプレゼントにはならないかな」
そもそも他人ならともかく恋人なら、そのうち自然と裸を見る。加えて私は、夏にすでに胸は見せている。そんなものをプレゼントにするのは、かえって誠慈君に悪い気がする。
しかし考え直す私に
「なる! 全然なる!」
誠慈君は咄嗟に否定したものの、恥ずかしくなったようで俯きながら
「……あの、がっついてアレだけど、萌乃の裸を見せてくれるなら、すごく見たい。だからいい? 誕生日プレゼントにねだっても」
いつも慎み深い誠慈君だが、こういう時は意外とハッキリ求めてくれる。
それはきっと彼自身、相手の気持ちが分からなくて不安になりやすい人だから。
私が独り相撲かもと不安にならないように、自分も欲しいんだと言ってくれる。
気持ちが通じている安心感に、私は「うん」と微笑みながら
「誕生日に私の全部、誠慈君に見せるね」
と約束した。
クリスマスにはマフラーを、バレンタインにはチョコを渡したけど、異性にプレゼントを選ぶのって苦手だ。
あまり高いと気を遣わせてしまいそうだし、安いものだと特別感が無い。
考えすぎて外すよりは、と私は思い切って誠慈君に相談してみた。
例によって私の部屋に来た時に尋ねると
「あ、ありがとう。俺の誕生日を覚えていてくれて」
謙虚な誠慈君は、ただ私が誕生日を覚えていただけで喜ぶと
「でも俺は萌乃が祝ってくれるだけで嬉しいから、プレゼントはなんでもいいよ。強いて言うなら、萌乃の負担にならないものがいいな」
自分は全財産を捧げる勢いなのに、私の懐は痛ませまいと思うんだな。
あまり高額なものを買えないのは確かだけど、気持ちだけじゃなくてちゃんと誠慈君が喜ぶものをあげたい。
だからちゃんと何が欲しいか、考えてみて欲しいと改めて頼むと
「俺が欲しいもの……」
誠慈君は難しい顔で考え込んだ末に
「欲しいものって急に聞かれても、萌乃しか思いつかない……」
「私が欲しいって、どういう意味?」
彼の片想いならともかく私たちは恋人同士だ。人間を完全に所有することはできないが、すでに限りなく彼のものである。
「ゴメン、自分でも分からないんだけど。萌乃が好きすぎて、もっと萌乃が欲しくなる……」
誠慈君はそう言いながら、もどかしそうに私を抱きしめた。彼の艶っぽい声音に、欲情を感じた私は
「じゃあ、もっとエッチなことする?」
「わぁっ!? そういう意味じゃないんだけど!」
私の率直な指摘に、誠慈君は飛びのくように離れた。
ただ彼の真っ赤な顔を見れば、的外れではないと分かるので
「誕生日にものをもらうのと、いっぱいエッチするのだったら、どっちがいい?」
猫のように忍び寄りながら問うと、誠慈君は「うぅ……」と目をグルグルさせた。
「遠慮しないで正直に言っていいよ? 誠慈君が誕生日に、本当に欲しいのは何?」
重ねて問うと、誠慈君は火が出そうなほど真っ赤な顔で
「も、萌乃と……いっぱいエッチしたい……」
「話だけで待ち切れなくなっちゃうの、可愛い」
下半身の変化を指摘すると、誠慈君は「うぁ……」と、か弱い声をあげた。もうけっこうこういうことをして来たのに、初々しさを失くさないのすごい。
例によって最後まではできないけど、誕生日だし、いつもよりすごいことをしてあげたいなと
「あんまり嬉しくないかもだけど、私の裸でも見る?」
裸に自信があるわけではないので遠慮がちに尋ねると、誠慈君は「えっ!?」と目を見開いて
「は、裸を見せてくれるの? それって全部?」
驚き半分、期待半分といった感じで聞き返す彼に
「本当に何も着ていないところ、誠慈君が見たいなら見せる」
「それがプレゼントでいい?」と確認すると、誠慈君は少しためらいがちに
「あの、俺は嬉しいけど、萌乃は本当にいいの? 誕生日だからって、裸を見せてもらって」
私に無理をさせていないか心配らしい。かなり見たそうなのに、いつも私の気持ちを優先させてくれる。そんな彼の優しさが嬉しくて
「ダメなら自分から言わないよ」
私は彼にそっと身を寄せながら
「私も誠慈君に、そろそろ全部見られちゃいたい」
ちょっと自惚れっぽいけど、大好きな誠慈君を、もっと喜ばせたいから。私にあげられるものは、なんでもあげてしまいたい。
そんな気持ちで口にしつつ
「でも前に胸は見せたし、今さらプレゼントにはならないかな」
そもそも他人ならともかく恋人なら、そのうち自然と裸を見る。加えて私は、夏にすでに胸は見せている。そんなものをプレゼントにするのは、かえって誠慈君に悪い気がする。
しかし考え直す私に
「なる! 全然なる!」
誠慈君は咄嗟に否定したものの、恥ずかしくなったようで俯きながら
「……あの、がっついてアレだけど、萌乃の裸を見せてくれるなら、すごく見たい。だからいい? 誕生日プレゼントにねだっても」
いつも慎み深い誠慈君だが、こういう時は意外とハッキリ求めてくれる。
それはきっと彼自身、相手の気持ちが分からなくて不安になりやすい人だから。
私が独り相撲かもと不安にならないように、自分も欲しいんだと言ってくれる。
気持ちが通じている安心感に、私は「うん」と微笑みながら
「誕生日に私の全部、誠慈君に見せるね」
と約束した。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。
そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!?
貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる