40 / 40
エピローグ・あの日の続き
最終話・眩しい光の中で
しおりを挟む
今は秋の終わりなので、約束の成就までは最短でも数ヶ月かかる。
その前にカイルは聖騎士をやめる旨を、教会の本部に報告しなくてはならない。カイルほどの逸材が「結婚するから聖騎士やめます」と言って、スムーズにやめさせてもらえるかも不明だ。
もしかしたら結婚までは、数年かかるかもしれないな。
しかし私の予測とは裏腹に、翌朝。村を出る前。空が明らんで来た頃。まだ村人たちが寝静まっている時間に、私とカイルは神父様の管理する教会に居た。
何故かと言うと
「ゴメンね。俺は半年後でいいって言ったんだけど、父さんが善は急げだって。どうしても今、自分の手で式を挙げたいって」
カイルの言うとおり、私たちの婚約を知った神父様は驚くほど喜んでくださった。
ご本人も言っていたが、よほどカイルの意思を力ずくでねじ伏せてしまったことを後悔していたのだろう。
その反動か、私たち以上に結婚を急いで、今ここである。
「すぐにでも結婚したいのは俺も同じだけど、大々的にすると村の人にバレちゃうからって、こんなにひっそりで。ドレスも用意してあげられなくてゴメンね」
カイルの言うとおり、招待客もドレスもご馳走も無い、ほぼ身1つの結婚式だが
「いいの。私が欲しかったのは、これだけだから」
私の手にはエニシアの花冠があった。
今はエニシアの咲く時期ではないのに、なぜ花を入手できたのかと言うと
「花冠が編めるほど、花を見つけるのは大変だったよね? どうしてもこれだけは被りたいって、ワガママを言ってゴメン」
眉を下げて謝る私に、カイルは笑顔で首を振りながら
「ううん。ピィも花を探すのを手伝ってくれたから、全然大変じゃなかったよ」
花畑でカイルは朽ちかけた花に光の魔力を注いで蘇らせた。その要領で、花冠を編むための花を無理やり用意したのだった。
本人は謙遜しているが、ほぼ徹夜で生気を失った花を集めるのは、明らかに大変だ。
けれどカイルは疲れを見せるどころか、恥ずかしくなるほどうっとりした目で
「花冠すごく似合っている。アニス、世界一綺麗」
以前この村の結婚式を見た時から、エニシアの花冠は、私にとって幸せな結婚の象徴だった。
私はもう花冠が似合うような無垢な少女ではないけど、愛する人から婚礼の証を受け取れたことが、奇跡のように嬉しかった。
朝日が差し込む教会のステンドグラスを背に、頬を染めて笑うカイル。たくさんではないけど、優しい眼差しで私たちを見守る神父様とピィ。美しいドレスは無いけど、約束の花冠を被った私。
それらの光景が、夢のように綺麗で幸せで、また涙が出そうになった。
そんな私たちの様子を、神父様は微笑ましそうに見つめながら
「では神の前で誓いの口づけを」
カイルは一歩近づいて、私の肩に両手を置くと
「これからはずっと傍に居て、君を護るから。一緒に幸せになろう」
ずっと受け入れられなかった「護る」という言葉に、今度は「……私も」と素直に応えると
「二度と君を悲しませない。ずっと大事にする」
彼にというより、自分への誓いにすると
「あ、ありがとう。嬉しい」
カイルは照れたように笑って、ゆっくりと顔を近付けながら
「愛している、アニス」
生まれてはじめて受け取った『愛している』とともに、神父様とピィに見守られながら、誓いの口づけを交わす。
まだ穢れを知らない子どもの頃。無邪気に抱いたまま、ずっと忘れていた夢が、今になって叶った奇跡を繰り返し感じながら。
その前にカイルは聖騎士をやめる旨を、教会の本部に報告しなくてはならない。カイルほどの逸材が「結婚するから聖騎士やめます」と言って、スムーズにやめさせてもらえるかも不明だ。
もしかしたら結婚までは、数年かかるかもしれないな。
しかし私の予測とは裏腹に、翌朝。村を出る前。空が明らんで来た頃。まだ村人たちが寝静まっている時間に、私とカイルは神父様の管理する教会に居た。
何故かと言うと
「ゴメンね。俺は半年後でいいって言ったんだけど、父さんが善は急げだって。どうしても今、自分の手で式を挙げたいって」
カイルの言うとおり、私たちの婚約を知った神父様は驚くほど喜んでくださった。
ご本人も言っていたが、よほどカイルの意思を力ずくでねじ伏せてしまったことを後悔していたのだろう。
その反動か、私たち以上に結婚を急いで、今ここである。
「すぐにでも結婚したいのは俺も同じだけど、大々的にすると村の人にバレちゃうからって、こんなにひっそりで。ドレスも用意してあげられなくてゴメンね」
カイルの言うとおり、招待客もドレスもご馳走も無い、ほぼ身1つの結婚式だが
「いいの。私が欲しかったのは、これだけだから」
私の手にはエニシアの花冠があった。
今はエニシアの咲く時期ではないのに、なぜ花を入手できたのかと言うと
「花冠が編めるほど、花を見つけるのは大変だったよね? どうしてもこれだけは被りたいって、ワガママを言ってゴメン」
眉を下げて謝る私に、カイルは笑顔で首を振りながら
「ううん。ピィも花を探すのを手伝ってくれたから、全然大変じゃなかったよ」
花畑でカイルは朽ちかけた花に光の魔力を注いで蘇らせた。その要領で、花冠を編むための花を無理やり用意したのだった。
本人は謙遜しているが、ほぼ徹夜で生気を失った花を集めるのは、明らかに大変だ。
けれどカイルは疲れを見せるどころか、恥ずかしくなるほどうっとりした目で
「花冠すごく似合っている。アニス、世界一綺麗」
以前この村の結婚式を見た時から、エニシアの花冠は、私にとって幸せな結婚の象徴だった。
私はもう花冠が似合うような無垢な少女ではないけど、愛する人から婚礼の証を受け取れたことが、奇跡のように嬉しかった。
朝日が差し込む教会のステンドグラスを背に、頬を染めて笑うカイル。たくさんではないけど、優しい眼差しで私たちを見守る神父様とピィ。美しいドレスは無いけど、約束の花冠を被った私。
それらの光景が、夢のように綺麗で幸せで、また涙が出そうになった。
そんな私たちの様子を、神父様は微笑ましそうに見つめながら
「では神の前で誓いの口づけを」
カイルは一歩近づいて、私の肩に両手を置くと
「これからはずっと傍に居て、君を護るから。一緒に幸せになろう」
ずっと受け入れられなかった「護る」という言葉に、今度は「……私も」と素直に応えると
「二度と君を悲しませない。ずっと大事にする」
彼にというより、自分への誓いにすると
「あ、ありがとう。嬉しい」
カイルは照れたように笑って、ゆっくりと顔を近付けながら
「愛している、アニス」
生まれてはじめて受け取った『愛している』とともに、神父様とピィに見守られながら、誓いの口づけを交わす。
まだ穢れを知らない子どもの頃。無邪気に抱いたまま、ずっと忘れていた夢が、今になって叶った奇跡を繰り返し感じながら。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
83
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
毎日更新嬉しいです(^^)
かるぼり様へ。
コメントありがとうございます。こちらこそ毎日読んでいただけて嬉しいです。