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第86話 魔王、尋問する
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ヴォルトの魔法の矢を受けてボロ雑巾のようになった教皇イルマジェンダだが、みるみるうちに全身に開いた穴が再生してゆく。
ヴォルトはその姿を呆れながら眺める。
「アークデーモンの生命力は恐ろしいものだな」
肉体は再生していっているが、横たわるイルマジェンダの首元には『殲滅し尽くす聖剣』の剣先が立てられており、ヴォルトの意思一つで簡単に首を落される状況にあった。
それに先程簡単に瀕死にさせられたヴォルトに対し、逆らう気はない。
イルマジェンダは降伏し、殺さないでくれるならばなんでも話すと言っていた。
「そろそろいいか?」
アークデーモンの融合を解いても死なない程度に回復するのを待っていたヴォルトだったが、傷が埋まったのを確認するとそう呟いた。
「≪魔力吸収≫!」
「あああああああ!!!」
ヴォルトはイルマジェンダの頭をその手で掴むと、その魔力を吸い取り始めた。
イルマジェンダが召喚魔法によって呼び出し融合したアークデーモンは、その名の通り悪魔である。
悪魔とは、地獄という世界に棲む、悪い魔力の塊の生命体である。
良かろうが悪かろうが魔力は魔力。
ヴォルトはイルマジェンダに乗り移ったアークデーモンの魔力を吸いつくした。
ヴォルトの腕を伝って光となって魔力が流れて行く。
アークデーモンの魔力を奪われたイルマジェンダは、元の非力な老人の姿へと変わってゆく。
ヴォルトはそこで魔力吸収を止めない。
イルマジェンダ自身の魔力も吸い取る。
アークデーモンを取り込むほどの魔力である。ヴォルトが失った魔力を補って有り余るほどの魔力を手に入れる事が出来た。
「これでもう悪さはできんだろう」
そう言ってヴォルトは手を離す。
魔力を完全に吸い尽くされたイルマジェンダは、力なく横たわっていた。
その姿は先ほどのように背筋が引き締まったたくましい姿ではなく、年齢通りの年老いた非力な老人であった。
「さあ、お前が知っている事を全て話してもらおう。まずはお前があらわれたこの部屋は、転移装置だな?」
「そうだ……。ここから遠く離れた大陸にある、オーテウス教団の本拠地であるオーテウス教国と繋がっておる。この転移門を使用がゆるされているのは、大司祭以上の高位の者だけ。今では再現できない、古代文明の遺産だ……」
「そのオーテウス教国へは、この転移門以外に行く方法はあるのか?」
「海を越え長い年月をかければ辿り着くことができるが、海には大海獣がいるし、途中人の住めない砂漠などが広がっている。限りなく不可能に近いな」
「なるほど。『灰燼に帰す弓』」
ヴォルトは突然、虚空から灰燼に帰す弓を呼び出す。
「な、何をするつもりだ?!」
「≪魔法の矢≫!」
驚くイルマジェンダを無視し、ヴォルトは灰燼に帰す弓から魔法の矢を放つ。
部屋の中央にある転移装置、周りを囲う石柱は既に崩れていたが、その本体である台座部分へと放たれた魔法の矢が炸裂する。
ガゴオオン!という音と共に台座は崩れ始め、石でできていたそれは粉々になり、灰となった。
「ば……バカな!それを失ってしまったら、教国へはもどれないのだぞ!」
「貴様が帰らない事を疑って追手が来ては困るからな。これでお前たちの本拠地とここを繋ぐものはなくなった。安心してこの国のオーテウス教団を絶滅させることができる……」
「おお……おおおお……」
ショックで開いた口が塞がらずにいる教皇イルマジェンダ。
その地位も、これで完全に意味をなさないものとなった。
「きさま、こんなことをしてエィス様が黙っておらんぞ?」
「エィス?先ほどもその名前を言っていたな。貴様が教団のトップではないのか?」
「エィス様は、このヴァレンシュタイン王国を支配している神人だ。神人オーテウス十二柱はそれぞれ支配している国があり、百年に一度生き物の魂を喰らうために地上に顕現する。本来エィス様が地上に降りてくるのは本来まだ先であったはずだが、エィス様の使い魔である大量殺りく兵器ゴモラが死ぬという異常事態が起きたため、新たな使い魔を創造するためのエネルギーを得るために、この国の人間たちの魂を喰らいに来たのだ」
「何だと?ちょっと待て、そのエィスとやらが今この国にいるのか?」
「その通りだ。この大聖堂にいるはずだが、ザズーが外出しているのならついて行ったのかもしれん。神とはいえ肉体を得て神人となって地上に降りてくれば、その力は制限される。精神体のようにいつでもどこにでも現れることができるわけではないのだ」
「なるほど。それともう一つ、ゴモラと言ったな?それはオーウェンハイム国にいた古代巨獣ゴモラのことか?」
「う、うむ。確かそんな名の国だったはず。巨大な山のような生物だ」
「なるほど、神人は人の命を食らい、ゴモラはそんな命を奪うために人を殺す使い魔……。その神人エィスが現れたのはオレのせい……、いやゴモラをほっておいたら被害はさらに大きくなっていたはず……」
ヴォルトの独り言を聞いたイルマジェンダは、その言葉の奥の真実に気が付く。
「オレのせい?まさか……、貴様がゴモラを殺したのか?」
「ん?ああ、そうだな」
「バカな?!オーテウス神の使い魔だぞ?!地上最強の生物ドラゴンにも匹敵する生物を人間が倒せるはずがない!」
イルマジェンダのその顔は、疑いと同時にそれが真実だという事に気付いている。
「今は人間の肉体でいるが、オレは人間ではない。魔界の王、魔王だ」
「魔王?!魔族の王か?なぜだ?おまえたち魔族は、魔界から出てこないはず……」
「まあ色々あってな。それじゃ次はエィスの力について詳しく教えてもらおうか?」
ヴォルトに都合よく何でも話すイルマジェンダに、その後も知りうる情報全てを吐き出させた。
ヴォルトはその姿を呆れながら眺める。
「アークデーモンの生命力は恐ろしいものだな」
肉体は再生していっているが、横たわるイルマジェンダの首元には『殲滅し尽くす聖剣』の剣先が立てられており、ヴォルトの意思一つで簡単に首を落される状況にあった。
それに先程簡単に瀕死にさせられたヴォルトに対し、逆らう気はない。
イルマジェンダは降伏し、殺さないでくれるならばなんでも話すと言っていた。
「そろそろいいか?」
アークデーモンの融合を解いても死なない程度に回復するのを待っていたヴォルトだったが、傷が埋まったのを確認するとそう呟いた。
「≪魔力吸収≫!」
「あああああああ!!!」
ヴォルトはイルマジェンダの頭をその手で掴むと、その魔力を吸い取り始めた。
イルマジェンダが召喚魔法によって呼び出し融合したアークデーモンは、その名の通り悪魔である。
悪魔とは、地獄という世界に棲む、悪い魔力の塊の生命体である。
良かろうが悪かろうが魔力は魔力。
ヴォルトはイルマジェンダに乗り移ったアークデーモンの魔力を吸いつくした。
ヴォルトの腕を伝って光となって魔力が流れて行く。
アークデーモンの魔力を奪われたイルマジェンダは、元の非力な老人の姿へと変わってゆく。
ヴォルトはそこで魔力吸収を止めない。
イルマジェンダ自身の魔力も吸い取る。
アークデーモンを取り込むほどの魔力である。ヴォルトが失った魔力を補って有り余るほどの魔力を手に入れる事が出来た。
「これでもう悪さはできんだろう」
そう言ってヴォルトは手を離す。
魔力を完全に吸い尽くされたイルマジェンダは、力なく横たわっていた。
その姿は先ほどのように背筋が引き締まったたくましい姿ではなく、年齢通りの年老いた非力な老人であった。
「さあ、お前が知っている事を全て話してもらおう。まずはお前があらわれたこの部屋は、転移装置だな?」
「そうだ……。ここから遠く離れた大陸にある、オーテウス教団の本拠地であるオーテウス教国と繋がっておる。この転移門を使用がゆるされているのは、大司祭以上の高位の者だけ。今では再現できない、古代文明の遺産だ……」
「そのオーテウス教国へは、この転移門以外に行く方法はあるのか?」
「海を越え長い年月をかければ辿り着くことができるが、海には大海獣がいるし、途中人の住めない砂漠などが広がっている。限りなく不可能に近いな」
「なるほど。『灰燼に帰す弓』」
ヴォルトは突然、虚空から灰燼に帰す弓を呼び出す。
「な、何をするつもりだ?!」
「≪魔法の矢≫!」
驚くイルマジェンダを無視し、ヴォルトは灰燼に帰す弓から魔法の矢を放つ。
部屋の中央にある転移装置、周りを囲う石柱は既に崩れていたが、その本体である台座部分へと放たれた魔法の矢が炸裂する。
ガゴオオン!という音と共に台座は崩れ始め、石でできていたそれは粉々になり、灰となった。
「ば……バカな!それを失ってしまったら、教国へはもどれないのだぞ!」
「貴様が帰らない事を疑って追手が来ては困るからな。これでお前たちの本拠地とここを繋ぐものはなくなった。安心してこの国のオーテウス教団を絶滅させることができる……」
「おお……おおおお……」
ショックで開いた口が塞がらずにいる教皇イルマジェンダ。
その地位も、これで完全に意味をなさないものとなった。
「きさま、こんなことをしてエィス様が黙っておらんぞ?」
「エィス?先ほどもその名前を言っていたな。貴様が教団のトップではないのか?」
「エィス様は、このヴァレンシュタイン王国を支配している神人だ。神人オーテウス十二柱はそれぞれ支配している国があり、百年に一度生き物の魂を喰らうために地上に顕現する。本来エィス様が地上に降りてくるのは本来まだ先であったはずだが、エィス様の使い魔である大量殺りく兵器ゴモラが死ぬという異常事態が起きたため、新たな使い魔を創造するためのエネルギーを得るために、この国の人間たちの魂を喰らいに来たのだ」
「何だと?ちょっと待て、そのエィスとやらが今この国にいるのか?」
「その通りだ。この大聖堂にいるはずだが、ザズーが外出しているのならついて行ったのかもしれん。神とはいえ肉体を得て神人となって地上に降りてくれば、その力は制限される。精神体のようにいつでもどこにでも現れることができるわけではないのだ」
「なるほど。それともう一つ、ゴモラと言ったな?それはオーウェンハイム国にいた古代巨獣ゴモラのことか?」
「う、うむ。確かそんな名の国だったはず。巨大な山のような生物だ」
「なるほど、神人は人の命を食らい、ゴモラはそんな命を奪うために人を殺す使い魔……。その神人エィスが現れたのはオレのせい……、いやゴモラをほっておいたら被害はさらに大きくなっていたはず……」
ヴォルトの独り言を聞いたイルマジェンダは、その言葉の奥の真実に気が付く。
「オレのせい?まさか……、貴様がゴモラを殺したのか?」
「ん?ああ、そうだな」
「バカな?!オーテウス神の使い魔だぞ?!地上最強の生物ドラゴンにも匹敵する生物を人間が倒せるはずがない!」
イルマジェンダのその顔は、疑いと同時にそれが真実だという事に気付いている。
「今は人間の肉体でいるが、オレは人間ではない。魔界の王、魔王だ」
「魔王?!魔族の王か?なぜだ?おまえたち魔族は、魔界から出てこないはず……」
「まあ色々あってな。それじゃ次はエィスの力について詳しく教えてもらおうか?」
ヴォルトに都合よく何でも話すイルマジェンダに、その後も知りうる情報全てを吐き出させた。
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