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二章 スキル進化の悪趣味な条件と異世界転移者ロシュヴァルド=フォン=アーデルハイド

やってやるよ!

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俺達はヒューゴを探知で探した。あまりにも色々あり過ぎたし、ザビの事もヒューゴに聞かせた方がいいだろうと思ったからだ。

すぐに探知で居所は分かり傍に『転移』すると、ヒューゴはケレスの神殿の周りに広がっている草原に寝転がっていた。

「あれ?ユキト達、もう帰って来たのか?」

驚いて振り返るヒューゴに、俺は何となくホッとした。

「ああ、それが物凄く色んな事があってさ……」


♢♢♢


「まさか俺が呑気に街でぶらぶらしてる間に、ユキト達がそんな大変な目に遭ってたなんてなあ……」

草原に胡坐をかいて座り込み、ヒューゴが唸る。

俺はヒューゴに、今日あった事を大雑把に説明した。
ケレスの山に行った時に、ザビと名乗る神に襲われた事、魂と引き換えにロシュが剣の力を開放したけど倒す事が出来ず、死を覚悟した瞬間に俺らをこの世界に連れて来た管理神『エオル』がザビを撃退した事。

エオルが呼んだ、ロシュの世界の管理神アルファスメイラと、剣を造った神トール・シフォスの世界からロシュの魂を連れ帰った事。そしてついさっき、アインの店で食事をしている時にトールが現れて、契約を交わした事、などだ。

「そのザビって奴が気掛かりだけど、一応あいつエオルが追っ払ったんだよな?」
「ああ。エオルの方が力があるみたいで、もう俺らにちょっかい出すな、今度は容赦しないって言われて、ザビは悔しそうにしながら消えてったから、当面大丈夫だと思う」
「ふぅん、あいつがなー。まあ神のランクとか、あいつらの間の事は知らねえけど、危なかったんだな。あいつの事はいけ好かないけど、ユキト達を助けてくれた事には感謝するよ。本当に無事で良かった」

ヒューゴがそう言って俺を抱き締める。
そうだよな、俺もあの時は死を覚悟して、最後にヒューゴの顔が見たかった、なんて思ってしまった。
ヒューゴの温もりを感じながら、改めて生きていて良かったと思った。

「で、ロシュが持ってる剣って、その何とかいう神の分身だったってわけか?そいつと契約したから、魔王の奴を倒せるかもしれない、って事なんだよな?」
「ああ……正直、トール・シフォスの云う事全てを信じてはいないけど、魔王を倒せる可能性は高くなったとは言えるよ」

ヒューゴの問いにロシュは頷く。

「じゃあ試してみるか?」

ヒューゴがそう言ったけど、俺は止めた。

「俺がロシュからコピーした『フリーズサーペント』を成長させてからの方がいいと思う。闇雲に魔王に挑むより、万全に準備を整えた方がいいんじゃないか?」
「僕もそう思う。それから、トール・シフォスに関して、ヒューゴに伝えておかないといけない事がある」

ロシュがそんな事を言い出したのでドキリとする。何を言うつもりなんだろう。ヒューゴも少し緊張気味に続きを促した。

「ああ、何だ?」

ロシュはヒューゴの目を真っ直ぐ見ながら言葉を続ける。

「僕がトール・シフォスの力を全開放して、魂をトールの世界に囚われた時、ユキトが助けに来てくれたんだ。でもその時、ユキトは僕の魂を解放させる為にトール・シフォスに一晩抱かれた」
「え……」

衝撃だったのか、ヒューゴの目が見開かれ、揺れる瞳が俺を見た。ああ、もう、ロシュの奴。そんな事言わなくて良かったのに。

ロシュは更に言葉を繋いだ。

「ユキトは気にするなと言ってくれたけど、トールはその事でユキトに酷く執着するようになったらしい。実際、さっき会ったトールは執拗にユキトに絡んでいて、引き剥がすのに凄く苦労した……契約もトールがユキトにこれ以上付き纏わないようにする為のもので、剣の力を引き出せるようになったのは単なる副産物だ。そんな事になってしまったのは、僕のせいだ。君にも申し訳ない事をしたと思う。だからその事を謝罪したい。気が済むまで僕を殴ってくれてもいい」

「あのな、ヒューゴ。ロシュにも言ったけど、あの時の俺の体はアルファスメイラが造ったもので、俺の本当の体じゃなかったんだ。だから俺は気にしてないし、お前らも気にする事ないからな。というか、もうホントに気にすんな!そんなに罪悪感もたれる方が嫌だし、辛いよ」

本心からそう言った。
ヒューゴは俺の目をじっと見ていたけど頷いて、

「分かった。ユキトがそう言うなら、俺も気にしねえ。だからロシュ、お前を殴る理由もねえ」
「……そうか。分かった。でもまだ伝える事がある」

ロシュの言葉に、ヒューゴはぎょっとする。

「まだ、なんかあんのかよ!?」
「ああ、こっちの方が大事だ」

ロシュはそう前置きすると、一息に言った。

「僕はユキトを愛している。そしてユキトも僕に応えてくれて、僕達は結ばれた。もちろんユキトが君の事を大事に思っている事も分かっているし、二人の仲を邪魔したり僕の方をより愛して貰おうと張り合うつもりはない。ただ、僕もユキトを愛する者の一人で、ユキトもそれを許してくれたという事だけ、君に伝えておきたかったんだ」
「あ……そ、うか……」

ヒューゴはそれだけ言うと一瞬目を閉じて、それから何かを吹っ切ったように強い目でロシュを見た。

「分かった。お前がユキトの事を大事にしてくれんなら、俺に異存はねえ。俺はユキトが幸せならそれでいい」
「勿論、僕はユキトを大切にする。分かってくれてありがとう」

ロシュが差し出した手をヒューゴが握り、俺はそれを黙って見つめていた。複雑な気分だ。
ロシュが誠実に全てをヒューゴに告げてくれた事、ヒューゴがそれを広い心で受け入れてくれた事は嬉しいと感じていた。

だけどまだ少し、二人に対して申し訳ないという想いもある。
二人はそれぞれ、真っ直ぐ俺だけに愛情を向けてくれるのに、俺はどちらか一人だけに愛を向ける事が出来ず、あっちにもこっちにも、なんて中途半端な事になってしまっている。

勿論、ヒューゴといる時はヒューゴの事だけ、ロシュといる時はロシュの事だけに集中したいし、俺の精一杯の愛情を伝えたいとは思うけど……そんなのでいいんだろうか、と葛藤もまだ少しある。
時が経てば、この想いもうまく昇華する事が出来るんだろうか。

とか考えている間に、何かずっと話していた二人がぱっとこっちを向いた。

「ユキト、僕からコピーしたスキルを限界突破させる為のスケジュールを組んでみたんだ」

にっこりと笑って言うロシュに、ヒューゴも頷く。

「結構回数こなさないといけないからなー。でもロシュが自分だけがユキトを独り占めするのは良くないから、って、夜は俺に譲ってくれたんだ」
「1日3回は出来るかな、って。そしたら10日で限界突破するよね。ということで明日からまた昼は僕と過ごして、夜はヒューゴと、って事でいいかな?ユキト」
「俺はもうスキルの為にする必要はねえし、ただ単純にお前と居たいだけなんだけど、いいよ……な?」

にこにこ顔のロシュと、照れながら上目遣いに俺を見るヒューゴ。
という事は、俺は毎日ロシュとヒューゴ二人と、最低6回はやるって事かよ。いや、場合によっちゃ、それ以上になるかもしれない。

……前までなら、無理だ!って叫んでただろうな。
だけど、トールとのとんでもない行為を思うと、一日6回なんて軽くこなせるな、なんて考える俺がいた。

……うん。分かったよ。もうこうなったら、やれるだけやってやる!
そしてとっとと二人をエオルのシナリオから卒業させてやるよ。

俺はそう思って、二人に言った。

「分かったよ、これからまたよろしくな、二人とも」

そうして、何もかも吹っ切って笑ったのだった。




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二章これで終わりです!ここまで読んで下さった方々、ブクマして下さった方々もありがとうございますm(*_ _)m
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