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ヒューゴの世界 エクシリア編
近未来な世界
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転移したのは、屋外だった。だだっ広い場所で、地面は人工的な材質の白っぽい固いもので出来ていて、目の前にはドーム状の白い建造物がある。
その建造物の前には、地球の戦車に似た乗り物や、同じくらいの大きさの三角形の乗り物らしきものが並んでいた。
そして沢山の軍人らしい人間がいて、いきなり現れた俺達を緊張気味に取り巻いていた。
皆、ヒューゴの仲間と同じく、体にぴったりした黒いスーツを身につけ、腰に銀の銃を下げている。
空を見上げると、今は日中なのか太陽が出てはいたが、空全体がグレーに煤けた雲に覆われていて、薄暗く荒廃した雰囲気だった。
これが日常の気候だとしたらヒューゴの言う通り、エクシリアの自然環境はあまりいいとは言えないみたいだ。
「メイレン、説明を頼む」
ヒューゴが連れて帰った仲間の一人に話しかけ、メイレンと呼ばれた女兵士が頷いて進み出た。
ヒューゴと対照的に緑色の髪の毛に赤い目をした、キリッとした美人だ。
「ロンウェル司令官に伝えてくれ。ベルザード地下基地での奪還作戦は成功し、囚われていた仲間と作戦に参加した者全員、無事帰還したと。これ以上の情報は直接会って伝えたい」
「り、了解!」
メイレンの言葉に二人の兵士が駆け出し、他の兵士数人が何か銀色の棒のようなものを持って近付いてきたと思ったら、それを俺達に翳して何かを確かめるような仕草をした。
「……何してるんだ?」
隣のヒューゴに聞くと、ヒューゴは小声で答えた。
「俺達の中にラプターが混じってないか確かめてるんだ。あいつらは人間に擬態出来るからな。まあ、大丈夫だと思うが」
「そうだね、さっきのあの青い肌の者達は居ないよ。奴らの波長は独特だったしね」
ロシュが一緒に転移して来た人達を見回してそう言った。
皆、汚れて疲れた様子だったが、基地に来た事で安心したのかどこかホッとした顔になっている。あの男の子は大丈夫だろうかと少し気になった。
「ヒューゴ、あの人たちはどうなるんだ」
「ああ、ちゃんとここでケアして貰える。何も心配いらない」
「そうか」
それを聞いて安心した。
少しして、銀色の棒で擬態したラプターがいないか探っていた兵士達が頷いて下がり、手を上げると、他の兵士が囚われていた人達の所に集まって来た。
そして驚いた事に、目の前の建造物の前にあった三角形の乗り物がふいに浮かび上がり、地面から4,5m浮いた状態でこっちに進んで来た。
それは囚われていた人達の傍に音もなく着地すると、横の部分がスライドして穴が開き、そこに入るように兵士達に促されて人々が乗り込んでいた。他の飛行する三角形も次々やって来ては人を乗せてどこかに飛んでいく。
「ヒューゴ、あれは何?空を飛ぶ乗り物があるの?」
ずっと冷静だったロシュも、さすがに驚いたらしく目を丸くしてそれを見ている。無理もない。俺でさえ驚いてるんだ。エクシリアの文明が地球のより進んでることに。
「ああ、あれは基地内を移動するための小型クイールだ。医療センターに皆を連れて行ってる」
「全然音もしないよな。一体動力は何なんだ?燃料は?」
俺がちょっと興奮して聞いたら、ヒューゴはうーん、と困ったように頭を掻いた。
「えーと確か、反重力リアクターってのが動力だったと思う。燃料は大気中から得るから、特に何もする必要はねえ。何だよ、ユキトの世界にも同じようなのがあるんだろ?」
「俺の世界のは、これよりもっと前時代的だよ。こんな簡単に空は飛べないし、燃料も凄く使うし、無限じゃないし。凄いなエクシリアの技術って」
「ふーん、そうなのかあ」
「あの。話しているところ、悪いが」
今がどんな状況なのか忘れて、つい夢中で話していたら、さっきのメイレンという女兵士が困惑した顔で話しかけて来た。
「申し遅れたが、私はこのチームの隊長でメイレン=ファニスという。状況が状況だっただけに、私達もまだヒューゴから詳しく説明されていないんだが、あなたともう一人の人は、ヒューゴの仲間と聞いた。しかしあなた方はどう見てもこの世界の人間じゃないようだ。黒い髪も、その銀色に青が混じったような髪色も、この世界にはないからな。そしてさっきからの会話を聞いていても、やはりあなた方は別の世界から来たのだと思わせる。それにヒューゴが突然超能力を発現させたのも驚いたが、あなた方も同じ事が出来ると聞いた。司令官に報告する前に少し話を聞かせてくれないか」
真剣な顔のメイレンに、俺は頷いた。
「分かりました。俺は桜庭幸人と言います。仰るようにエクシリアとは別の、地球という世界から来ました。こっちはロシュ」
俺が顔を向けると、ロシュが自分で名乗った。
「僕はロシュヴァルド=フォン=アーデルハイド。ユキトとは違う、レスディアルという世界から来た。よろしく頼む」
「やはり別世界からの来訪者なのか」
メイレンは納得したとばかりに頷き、話の先を促した。
「それで、どのような経緯でヒューゴに協力する事になったんだ?あなた方がいつこの世界に来て、どこでヒューゴと出会ったのか聞かせて欲しい」
「信じられないかもしれませんが―――」
と言い置いて、俺はメイレンにこれまでの事を説明した。
ヒューゴが本当はさっきの基地で一度死の間際まで行き、そこで別世界の管理神エオルに連れ去られたこと。そしてエオルの世界に巣食った『魔王』を倒すまでその世界に拘束され、戦うための『スキル』を与えられたこと。
同じように連れて来られた俺達は、協力して『魔王』を倒し自由を得て、スキルを使って自分の世界を救いたいというヒューゴに協力するために、さっきここに来たこと。
自分の世界に戻る時は連れ去られたその瞬間に戻る為、ヒューゴは死んでもいないし、どこにも行っていない状態になっていることなどだ。
「ふーむ、そうか……なかなか信じがたい話だが、現に私達はこうしてヒューゴの超能力で、ベルザードの地下基地からトラインに一瞬で戻って来ている訳だしな。ラプター共も別世界から来ているし、どんな事でも起こり得るだろう。―――分かった。ありがとう」
冷静に話を聞いていたメイレンは、周りを取り巻いている兵士達の中からこちらに駆けて来る一人の兵士を見ると、俺達に礼を言ってそっちに向き直った。
「ロンウェル司令官がセクターAの司令室へ来るようにとの事だ」
近付いて来た男の兵士が言うと、メイレンは頷いて答えた。
「分かった。私とヒューゴ=ヴェルスターの二名で向かうと伝えてくれ」
「了解」
兵士が素早く走り去るとメイレンは俺とロシュを振り返った。
「済まないがあなた方には別室で待機していて貰いたい。いきなり司令官に会わせる訳にはいかないのでな。部屋はそうだな、キール。お前が案内してくれ」
「了解だ」
メイレンが、ベルザードの地下基地から一緒に転移して来た仲間たちの一人に声を掛けると、その男は頷いてこっちにやって来た。
190センチはありそうだ。でかくて、がっしりした体型、青い髪、薄紫の目をした男だった。
「キール=ベイカーだ。民間人を泊める施設があるので、そこに案内する。移動はあのフラップ(小型クイール)を使う。付いてきてくれ」
「悪い、二人とも。キールと一緒に行って、部屋で待っててくれ。少し説明して来るから。終わったら俺もそっちに行くよ」
ヒューゴにそう言われて、俺は頷いた。
「分かった。それじゃキールさん、行きましょう」
「こっちだ」
キールに先導されて、俺とロシュはヒューゴと一旦別れ、さっき囚われていた人達が乗っていた、三角形の乗り物に近付いた。
どういう仕組みなのか、中に操縦者が乗っているわけでもなさそうなのに、近付くとスッと横の部分がスライドして入口が現れる。
見たところ継ぎ目もなく、表面がすごく滑らかだ。
「入ってくれ」
キールに促されて、少し躊躇いながらも足を踏み入れた。その瞬間、ふわっと中が明るくなって来て驚く。あの、ラプターの基地内部みたいに、それ自体が発光する材質で造られているようだった。
中はシンプルで、一部に操縦席のようなものがあるだけで、あとは何もない。
「凄いな……」
後ろから入って来たロシュも、目を瞠っている。
「それじゃここに座っていてくれ」
自らも乗り込んで来たキールが何もない壁面を手で触ると、まるで壁が粘土で出来ているみたいに、急にそこが盛り上がって椅子のような形になった。
「どうなってるんだ……」
思わずそう呟いて、椅子みたいに出っ張った部分を触ってみた。
低反発クッションのように少し弾力がありつつも、しっかり体を支えるくらいには固くて、とても手で捏ねて形を変えられるようには思えない。
ロシュも同じように出っ張り部分を触って確かめている。
俺達の様子を面白そうに見ていたキールが「あなた方の世界にはこういう物はないのか」と聞いて来た。
「似たようなものはありましたけど、ここまで進化していませんでした」
「僕の世界には似たものもなかったよ。僕にとっては全てが不思議で驚くような世界だ」
俺とロシュが答えるとキールは厳つい顔をふっと緩ませた。
「あなた方の世界の話も聞いてみたいものだ。そういう機会が設けられればいいんだが。では出発するので、座ってくれ」
そう言ってキールは操縦席らしき、教卓のような物体に手を触れた。するとまた床が動いて椅子のような形が盛り上がって造られる。
そこに腰を下ろしたキールが『セクターCの宿泊棟に向かえ』と指示すると、この乗り物の壁全面が透明になった。周りの景色が全て見える。
驚いて思わず壁を手で触ってみたが、ちゃんとそこに壁はあった。ただ、透けて周りが見えるようになっただけのようだ。
そのまま地面から少し離れて、キールがフラップと呼んだ、この近未来的な小型飛行機は進み始めた。
俺とロシュはただ面食らって、周りの景色が凄いスピードで後ろに流れて行くのを見ていた。
*****
補足:ヒューゴの世界では上下関係が地球ほど厳しくありません。役割の違いがあるだけで皆、ラプターと戦う同志という意識のため、仲間内で敬語を使うことはほとんどないです。
近未来、楽しい(*‘ω‘ *)
その建造物の前には、地球の戦車に似た乗り物や、同じくらいの大きさの三角形の乗り物らしきものが並んでいた。
そして沢山の軍人らしい人間がいて、いきなり現れた俺達を緊張気味に取り巻いていた。
皆、ヒューゴの仲間と同じく、体にぴったりした黒いスーツを身につけ、腰に銀の銃を下げている。
空を見上げると、今は日中なのか太陽が出てはいたが、空全体がグレーに煤けた雲に覆われていて、薄暗く荒廃した雰囲気だった。
これが日常の気候だとしたらヒューゴの言う通り、エクシリアの自然環境はあまりいいとは言えないみたいだ。
「メイレン、説明を頼む」
ヒューゴが連れて帰った仲間の一人に話しかけ、メイレンと呼ばれた女兵士が頷いて進み出た。
ヒューゴと対照的に緑色の髪の毛に赤い目をした、キリッとした美人だ。
「ロンウェル司令官に伝えてくれ。ベルザード地下基地での奪還作戦は成功し、囚われていた仲間と作戦に参加した者全員、無事帰還したと。これ以上の情報は直接会って伝えたい」
「り、了解!」
メイレンの言葉に二人の兵士が駆け出し、他の兵士数人が何か銀色の棒のようなものを持って近付いてきたと思ったら、それを俺達に翳して何かを確かめるような仕草をした。
「……何してるんだ?」
隣のヒューゴに聞くと、ヒューゴは小声で答えた。
「俺達の中にラプターが混じってないか確かめてるんだ。あいつらは人間に擬態出来るからな。まあ、大丈夫だと思うが」
「そうだね、さっきのあの青い肌の者達は居ないよ。奴らの波長は独特だったしね」
ロシュが一緒に転移して来た人達を見回してそう言った。
皆、汚れて疲れた様子だったが、基地に来た事で安心したのかどこかホッとした顔になっている。あの男の子は大丈夫だろうかと少し気になった。
「ヒューゴ、あの人たちはどうなるんだ」
「ああ、ちゃんとここでケアして貰える。何も心配いらない」
「そうか」
それを聞いて安心した。
少しして、銀色の棒で擬態したラプターがいないか探っていた兵士達が頷いて下がり、手を上げると、他の兵士が囚われていた人達の所に集まって来た。
そして驚いた事に、目の前の建造物の前にあった三角形の乗り物がふいに浮かび上がり、地面から4,5m浮いた状態でこっちに進んで来た。
それは囚われていた人達の傍に音もなく着地すると、横の部分がスライドして穴が開き、そこに入るように兵士達に促されて人々が乗り込んでいた。他の飛行する三角形も次々やって来ては人を乗せてどこかに飛んでいく。
「ヒューゴ、あれは何?空を飛ぶ乗り物があるの?」
ずっと冷静だったロシュも、さすがに驚いたらしく目を丸くしてそれを見ている。無理もない。俺でさえ驚いてるんだ。エクシリアの文明が地球のより進んでることに。
「ああ、あれは基地内を移動するための小型クイールだ。医療センターに皆を連れて行ってる」
「全然音もしないよな。一体動力は何なんだ?燃料は?」
俺がちょっと興奮して聞いたら、ヒューゴはうーん、と困ったように頭を掻いた。
「えーと確か、反重力リアクターってのが動力だったと思う。燃料は大気中から得るから、特に何もする必要はねえ。何だよ、ユキトの世界にも同じようなのがあるんだろ?」
「俺の世界のは、これよりもっと前時代的だよ。こんな簡単に空は飛べないし、燃料も凄く使うし、無限じゃないし。凄いなエクシリアの技術って」
「ふーん、そうなのかあ」
「あの。話しているところ、悪いが」
今がどんな状況なのか忘れて、つい夢中で話していたら、さっきのメイレンという女兵士が困惑した顔で話しかけて来た。
「申し遅れたが、私はこのチームの隊長でメイレン=ファニスという。状況が状況だっただけに、私達もまだヒューゴから詳しく説明されていないんだが、あなたともう一人の人は、ヒューゴの仲間と聞いた。しかしあなた方はどう見てもこの世界の人間じゃないようだ。黒い髪も、その銀色に青が混じったような髪色も、この世界にはないからな。そしてさっきからの会話を聞いていても、やはりあなた方は別の世界から来たのだと思わせる。それにヒューゴが突然超能力を発現させたのも驚いたが、あなた方も同じ事が出来ると聞いた。司令官に報告する前に少し話を聞かせてくれないか」
真剣な顔のメイレンに、俺は頷いた。
「分かりました。俺は桜庭幸人と言います。仰るようにエクシリアとは別の、地球という世界から来ました。こっちはロシュ」
俺が顔を向けると、ロシュが自分で名乗った。
「僕はロシュヴァルド=フォン=アーデルハイド。ユキトとは違う、レスディアルという世界から来た。よろしく頼む」
「やはり別世界からの来訪者なのか」
メイレンは納得したとばかりに頷き、話の先を促した。
「それで、どのような経緯でヒューゴに協力する事になったんだ?あなた方がいつこの世界に来て、どこでヒューゴと出会ったのか聞かせて欲しい」
「信じられないかもしれませんが―――」
と言い置いて、俺はメイレンにこれまでの事を説明した。
ヒューゴが本当はさっきの基地で一度死の間際まで行き、そこで別世界の管理神エオルに連れ去られたこと。そしてエオルの世界に巣食った『魔王』を倒すまでその世界に拘束され、戦うための『スキル』を与えられたこと。
同じように連れて来られた俺達は、協力して『魔王』を倒し自由を得て、スキルを使って自分の世界を救いたいというヒューゴに協力するために、さっきここに来たこと。
自分の世界に戻る時は連れ去られたその瞬間に戻る為、ヒューゴは死んでもいないし、どこにも行っていない状態になっていることなどだ。
「ふーむ、そうか……なかなか信じがたい話だが、現に私達はこうしてヒューゴの超能力で、ベルザードの地下基地からトラインに一瞬で戻って来ている訳だしな。ラプター共も別世界から来ているし、どんな事でも起こり得るだろう。―――分かった。ありがとう」
冷静に話を聞いていたメイレンは、周りを取り巻いている兵士達の中からこちらに駆けて来る一人の兵士を見ると、俺達に礼を言ってそっちに向き直った。
「ロンウェル司令官がセクターAの司令室へ来るようにとの事だ」
近付いて来た男の兵士が言うと、メイレンは頷いて答えた。
「分かった。私とヒューゴ=ヴェルスターの二名で向かうと伝えてくれ」
「了解」
兵士が素早く走り去るとメイレンは俺とロシュを振り返った。
「済まないがあなた方には別室で待機していて貰いたい。いきなり司令官に会わせる訳にはいかないのでな。部屋はそうだな、キール。お前が案内してくれ」
「了解だ」
メイレンが、ベルザードの地下基地から一緒に転移して来た仲間たちの一人に声を掛けると、その男は頷いてこっちにやって来た。
190センチはありそうだ。でかくて、がっしりした体型、青い髪、薄紫の目をした男だった。
「キール=ベイカーだ。民間人を泊める施設があるので、そこに案内する。移動はあのフラップ(小型クイール)を使う。付いてきてくれ」
「悪い、二人とも。キールと一緒に行って、部屋で待っててくれ。少し説明して来るから。終わったら俺もそっちに行くよ」
ヒューゴにそう言われて、俺は頷いた。
「分かった。それじゃキールさん、行きましょう」
「こっちだ」
キールに先導されて、俺とロシュはヒューゴと一旦別れ、さっき囚われていた人達が乗っていた、三角形の乗り物に近付いた。
どういう仕組みなのか、中に操縦者が乗っているわけでもなさそうなのに、近付くとスッと横の部分がスライドして入口が現れる。
見たところ継ぎ目もなく、表面がすごく滑らかだ。
「入ってくれ」
キールに促されて、少し躊躇いながらも足を踏み入れた。その瞬間、ふわっと中が明るくなって来て驚く。あの、ラプターの基地内部みたいに、それ自体が発光する材質で造られているようだった。
中はシンプルで、一部に操縦席のようなものがあるだけで、あとは何もない。
「凄いな……」
後ろから入って来たロシュも、目を瞠っている。
「それじゃここに座っていてくれ」
自らも乗り込んで来たキールが何もない壁面を手で触ると、まるで壁が粘土で出来ているみたいに、急にそこが盛り上がって椅子のような形になった。
「どうなってるんだ……」
思わずそう呟いて、椅子みたいに出っ張った部分を触ってみた。
低反発クッションのように少し弾力がありつつも、しっかり体を支えるくらいには固くて、とても手で捏ねて形を変えられるようには思えない。
ロシュも同じように出っ張り部分を触って確かめている。
俺達の様子を面白そうに見ていたキールが「あなた方の世界にはこういう物はないのか」と聞いて来た。
「似たようなものはありましたけど、ここまで進化していませんでした」
「僕の世界には似たものもなかったよ。僕にとっては全てが不思議で驚くような世界だ」
俺とロシュが答えるとキールは厳つい顔をふっと緩ませた。
「あなた方の世界の話も聞いてみたいものだ。そういう機会が設けられればいいんだが。では出発するので、座ってくれ」
そう言ってキールは操縦席らしき、教卓のような物体に手を触れた。するとまた床が動いて椅子のような形が盛り上がって造られる。
そこに腰を下ろしたキールが『セクターCの宿泊棟に向かえ』と指示すると、この乗り物の壁全面が透明になった。周りの景色が全て見える。
驚いて思わず壁を手で触ってみたが、ちゃんとそこに壁はあった。ただ、透けて周りが見えるようになっただけのようだ。
そのまま地面から少し離れて、キールがフラップと呼んだ、この近未来的な小型飛行機は進み始めた。
俺とロシュはただ面食らって、周りの景色が凄いスピードで後ろに流れて行くのを見ていた。
*****
補足:ヒューゴの世界では上下関係が地球ほど厳しくありません。役割の違いがあるだけで皆、ラプターと戦う同志という意識のため、仲間内で敬語を使うことはほとんどないです。
近未来、楽しい(*‘ω‘ *)
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