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聖女ムーブは終わりです
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やばやばやばい。
絡んできたゴロツキを身体強化で伸してるところを、シオンにばっちり見られてたよ~。
私は宿のベッドでゴロゴロ頭を抱えた。
しばらくゴロゴロして止まる。
……まあイグニス様に見られたわけじゃないし、いざとなれば、シオンに黙っておいてもらえばいいし……
そう思うと少し落ち着いた。
さっきのは気のせいということにしておいて貰おう。
よし、解決。
私は気が楽になり、すやすやと眠るのだった。
翌日、パーティメンバーと宿の食堂で顔を合わせた時は少し緊張したけど、シオンも特に何も言ってこなかったから良かったあ。
今日は、魔物が発生しているというダンジョンに潜る予定だ。
そのダンジョンは古代遺跡の一つで、中は色んなギミックがあるらしく、引っかからないよう気を付けないといけない。
私も自分の荷物を背負うと、皆でそこへ向かった。
♢♢♢
古代遺跡のダンジョンは中が不思議な光で光っていて、明るかった。
天井も高くて、何だか荘厳な雰囲気がする。
こんなところに魔物がいるなんて、不思議な気がするな。
と、最初はのんきに思っていたけど……
「くっ、イグニス!打ち漏らした!」
「カバーする!」
リアナはもう魔力が尽きて、剣でしか戦っていない。
イグニス様もかなり魔力を使っているから、いつもは見たことがないほど、動きに精彩がない。
シオンもかなり疲れてきているのが分かった。
やばい。
ここのダンジョンに湧く魔物はすごく数が多くて、私たちは今一番奥の部屋で、その大量の魔物と戦っていた。
まだ半数くらい残ってる……
うん。
私はもういいや、と心を決めた。
聖女ムーブとか、人の命を無視してまでやるようなものじゃない。
私の魔力はまだほとんど減ってない。私がやらなきゃ誰がやるんだ!
「皆さん!少し後ろに下がっていて下さい!私が前に出ます!」
「フェルマッ!?」
「何をする気なのっ!?」
「……っ」
驚く顔のイグニス様たちをよそに、私は魔力を全身にみなぎらせて跳躍した。
そして、
殴る!蹴る!吹っ飛ばす!叩き潰す!
ドカッガスッドバン!べちいっ
ーーーーーんぎもぢいいいいっーーーーー!!
やっば。なにこれ。脳内麻薬出てるわ。
私がはっと我に返ったときには、魔物は1匹も残ってなかった。
振り返ると、唖然とした顔のイグニス様と、リアナと棒立ちするシオン。
「えーーーと……。残念聖女でごめんなさい……」
しーん。としたあと。
…………
「あーーーあははははは!!な、何言ってるんだよフェルマ!」
イグニス様がお腹を抱えて笑い出した。
リアナも笑ってる。シオンはーーーよく分からないけど、肩が揺れてるから笑ってるのかな?
「え……だって、聖女なのにこんな脳筋ちっくで、がっかりさせたんじゃないですか?」
戸惑いながら言うと、
「あははっはは!何が?全然がっかりなんてしないよ!むしろ凄すぎてびっくりしちゃったくらいだよ!」
「ほんとよ、フェルマ。あなたそんなに凄い力持ってるんだったら、早く言ってくれたら良かったのに。でも本当にあなたのおかげで助かったわ。ありがとう!」
「ーーーまあ知ってたけど、ここまでとは思わなかった。何を気にしてたんだか知らないが、お前のそれは誇れることなんじゃないか?」
珍しくシオンまで長文でそんなことを言ってくれて、私はプルプル震えた。
「うーーっ、み、みなさーーん!ありがとうございますーーー」
あれ?私なんで聖女ムーブなんてしてたんだっけ?
あ、そういえばイグニス様に相応しいように、って思ったからだっけ。
でも、イグニス様はそんなの関係ないって言ってくれた。
いつの間にか私は、いつもの聖女ムーブな喋り方もしていなかったけど、そんなのも全然どうだっていい、って言ってくれた。
なーんだ。良かった。私、もう自分を飾らなくていいんだ。
このままでいいんだ。
嬉しい。
私は泣き笑いの顔で、みんなの元へ歩いて行った。
ーーーーと、ふと足元に何かの印を見つけたと思うと、それが急に光り出して、
「フェルマ!」
一番近いところにいたシオンが、私を突き飛ばしたけど、私の視界は真っ白になった。
絡んできたゴロツキを身体強化で伸してるところを、シオンにばっちり見られてたよ~。
私は宿のベッドでゴロゴロ頭を抱えた。
しばらくゴロゴロして止まる。
……まあイグニス様に見られたわけじゃないし、いざとなれば、シオンに黙っておいてもらえばいいし……
そう思うと少し落ち着いた。
さっきのは気のせいということにしておいて貰おう。
よし、解決。
私は気が楽になり、すやすやと眠るのだった。
翌日、パーティメンバーと宿の食堂で顔を合わせた時は少し緊張したけど、シオンも特に何も言ってこなかったから良かったあ。
今日は、魔物が発生しているというダンジョンに潜る予定だ。
そのダンジョンは古代遺跡の一つで、中は色んなギミックがあるらしく、引っかからないよう気を付けないといけない。
私も自分の荷物を背負うと、皆でそこへ向かった。
♢♢♢
古代遺跡のダンジョンは中が不思議な光で光っていて、明るかった。
天井も高くて、何だか荘厳な雰囲気がする。
こんなところに魔物がいるなんて、不思議な気がするな。
と、最初はのんきに思っていたけど……
「くっ、イグニス!打ち漏らした!」
「カバーする!」
リアナはもう魔力が尽きて、剣でしか戦っていない。
イグニス様もかなり魔力を使っているから、いつもは見たことがないほど、動きに精彩がない。
シオンもかなり疲れてきているのが分かった。
やばい。
ここのダンジョンに湧く魔物はすごく数が多くて、私たちは今一番奥の部屋で、その大量の魔物と戦っていた。
まだ半数くらい残ってる……
うん。
私はもういいや、と心を決めた。
聖女ムーブとか、人の命を無視してまでやるようなものじゃない。
私の魔力はまだほとんど減ってない。私がやらなきゃ誰がやるんだ!
「皆さん!少し後ろに下がっていて下さい!私が前に出ます!」
「フェルマッ!?」
「何をする気なのっ!?」
「……っ」
驚く顔のイグニス様たちをよそに、私は魔力を全身にみなぎらせて跳躍した。
そして、
殴る!蹴る!吹っ飛ばす!叩き潰す!
ドカッガスッドバン!べちいっ
ーーーーーんぎもぢいいいいっーーーーー!!
やっば。なにこれ。脳内麻薬出てるわ。
私がはっと我に返ったときには、魔物は1匹も残ってなかった。
振り返ると、唖然とした顔のイグニス様と、リアナと棒立ちするシオン。
「えーーーと……。残念聖女でごめんなさい……」
しーん。としたあと。
…………
「あーーーあははははは!!な、何言ってるんだよフェルマ!」
イグニス様がお腹を抱えて笑い出した。
リアナも笑ってる。シオンはーーーよく分からないけど、肩が揺れてるから笑ってるのかな?
「え……だって、聖女なのにこんな脳筋ちっくで、がっかりさせたんじゃないですか?」
戸惑いながら言うと、
「あははっはは!何が?全然がっかりなんてしないよ!むしろ凄すぎてびっくりしちゃったくらいだよ!」
「ほんとよ、フェルマ。あなたそんなに凄い力持ってるんだったら、早く言ってくれたら良かったのに。でも本当にあなたのおかげで助かったわ。ありがとう!」
「ーーーまあ知ってたけど、ここまでとは思わなかった。何を気にしてたんだか知らないが、お前のそれは誇れることなんじゃないか?」
珍しくシオンまで長文でそんなことを言ってくれて、私はプルプル震えた。
「うーーっ、み、みなさーーん!ありがとうございますーーー」
あれ?私なんで聖女ムーブなんてしてたんだっけ?
あ、そういえばイグニス様に相応しいように、って思ったからだっけ。
でも、イグニス様はそんなの関係ないって言ってくれた。
いつの間にか私は、いつもの聖女ムーブな喋り方もしていなかったけど、そんなのも全然どうだっていい、って言ってくれた。
なーんだ。良かった。私、もう自分を飾らなくていいんだ。
このままでいいんだ。
嬉しい。
私は泣き笑いの顔で、みんなの元へ歩いて行った。
ーーーーと、ふと足元に何かの印を見つけたと思うと、それが急に光り出して、
「フェルマ!」
一番近いところにいたシオンが、私を突き飛ばしたけど、私の視界は真っ白になった。
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