【完結】塩対応の隠れイケメン魔導士が残念聖女(笑)を溺愛するまで

にあ

文字の大きさ
16 / 16

聖女フェルマ、これからも脳筋残念聖女で頑張ります(終)

しおりを挟む


目が覚めると、まだ早朝のようだった。私の隣でシオンはまだ目を閉じて眠っている。

二人とも裸のままだ。


何回見ても綺麗だなあ。

彫刻みたいな、綺麗な横顔を眺めていると、

ふっと目を醒ましたシオンがこっちを向いた。紅がかった黒い瞳が私を映す。


「おはよう」

そう言うと、


体を私の方に向けてぎゅっと抱き締めて来る。


「……体、大丈夫?」

「ん。大丈夫だよ」

「そっか。ならいい。初めてだったのに、何回も続けてしちまったからな……」


言われて、ぼっと赤くなる。

そうだよ、私初めてだったのに、あんなに……自分でも、むちゃくちゃあられもない姿を晒してしまった気がする。


「すごく可愛かった」

ふふ、と笑われてますます恥ずかしくなる。


「ーーもう!シオンのえっち!エロ魔人!」

「えー、俺だけか?」

「知らないよっ」

「ごめんごめん。俺はあんなふうにフェルマが俺に全部見せてくれたことも、俺で感じてくれたのも、すごく嬉しかったよ」


ちゅっとキスされてそう言われると、私もじんわりした。

「私も、シオンの全部見れて嬉しかった」

「……可愛いなフェルマは。あー好き」

「私も……」


ちゅ、ちゅっとキスが続き、だんだんそれが深いものになってくると、向かい合って抱き合っているお腹に触れていた、シオンのものがぐっと熱を持って固さを増して来た。


「あー……またしたくなる」

「も、もうっ」

「まだ朝、早いし……一回だけ、いい?」

「……うん」


なんだかんだ言っておきながら、私もシオンが欲しくなってしまった。

結局私たちが起きだしたのは、いつも起きる時間を大分過ぎた頃だった。


あーーー……イグニス様たちに顔、合わせづらいなー……


何しろ、イグニス様たちの陸奥みあう声を聴いてしまった上に、そのあとは私もシオンとあんなことやこんなことをしてしまったのだ。


なんか、気付かれたらどうしよう~。

ああ、恥ずかしいよ~~。


とりあえず、私はシオンの部屋を出て(誰もいないか確認して)、自分の部屋でシャワーを浴びて服を着替えた。


そして、宿の1階にある食堂に行く。

もうイグニス様とリアナ、シオンがテーブルについていて、運ばれて来た朝ご飯のセットに手を付けようとしていたところだった。


うーー……平常心平常心。


「おはようございます」

にこっと挨拶すると、


「おはようフェルマ」

「おはよう」

リアナとイグニス様も笑顔で挨拶を返してくれた。


ふー。とりあえず、大丈夫……かな?

私も座って、まずは紅茶のカップを手にした。


すると、シオンが

「あ、フェルマ。もうイグニス達には言っといたから」

「え?……なにを?」

嫌な予感がしながら言うと、


「俺らが付き合い始めたこと」

「ッげほごほぶほ!」

ぶしゃーー!

盛大にムセて紅茶撒き散らしたわ。


「ちょ、ちょっとフェルマ大丈夫?」

リアナが慌ててナプキンで私の口周りやテーブルを拭いてくれる。


「ちょっちょっ、ちょっーーー!?」

「落ち着けよ」

いや、落ち着けるか。

なに言ってくれちゃってんの!?

馬鹿なの?


「こういうのは変に黙っとくより、言っといた方がいいんだよ。色々」

「ーーーーーー」

いやもう、ちょっと落ち着こう。すーはーしていると、リアナが苦笑いで言った。


「ごめんねえ。私たちのこと、言ってなくて。だって、あなた初めて会った頃、イグニスのこと好きみたいだったから、言いにくくて」

「俺の方からも謝らせてよ。ごめんね。フェルマにだけ隠してるみたいで嫌だったんだけど、リアナもシオンも変に拗らせたくなかったら、黙っておけって言うからさ……」


え、どういうこと?

「シオンはもう、イグニス様とリアナが付き合ってたのは知ってたってこと?」

「ああ、まあな。俺とイグニス達はずっと前から仲間だし」


「ちょ、ちょっと待って、私がいない間に何をどこまで話したの?」

聞くのが怖いが、どこまで情報開示されたのかは確かめねば。


「昨日恋人同士になって、一緒に夜を過ごしたってこと言っておいた」

「いやあああああ!!??」


私が昨日の夜、あれやこれやしたこと、すでにみんなが知ってるってことっ!?


何!?何なのこいつ。羞恥心ないの!?心臓に毛生えてる?動じない心、山のごとしなの!?


私が真っ赤になったり真っ青になったり死にそうになっているのを、シオンたちは不思議そうに見てくる。

いや、その反応何?こんなこと普通に話す方がおかしくない!?


「そういえばお前、神殿育ちだったなー」


あ、そうか、みたいにシオンが言ってくるけど、それがなに?


「神殿みたいな特殊なとこは違うだろうけど、この国、そういうの緩いぞ。好きなやつがいればすぐ寝るし、それを周りに隠したりもしないし、特に俺らみたいに魔物と戦ったりするような仕事してるやつは、いつどうなるか分からないから、体を合わせることを躊躇したりしない」

「う、うそ、そうなの!?」


私がややショックから立ち直って聞くと、イグニス様も頷く。

「王族でもそんなに厳しくないしね」

「うん。当たり前かなー」

リアナも頷く。


なんと。私が神殿で世俗と離れた生活をしている間、世の中の皆さんはそんな自由に色恋を愉しんでいらっしゃったなんて。


うわーー……カルチャーショックぅ……。


性知識のネタが神官のおじいちゃんが隠し持ってる、ふっるーーい、えっち本だったから、そんなの全然知らなかった……


しかもあの本、今考えたらそんなにえっちくなかったわ。大したこと書いてなかったし。


『そういうこと』をみんながそれほど恥ずかしいと思ってないと聞いて、私もちょっと落ち着いてきたけど、


「だから、今度から俺とお前、二人部屋な。イグニスたちも二人で部屋取るようにするから」


シオンに平然と言われ、

口から魂を飛ばしたまま、かくんと首を頷かせた……仲間公認えっち……ハードルが高すぎる……。



*******



私たちは準備を整えて、最初の目的だったダンジョンの探索を終え、潜んでいた魔物のボスを倒した。


そして今日は、他の地方へ向かうために、また旅を始めようとしている。

街の門を出て、少し歩いたところ。

ここからは整備された道はない。


「それじゃ行こうか」

イグニス様が輝く金髪を煌めかせて、相変わらず素敵な笑顔で私を振り返る。


「はーい!」

私も元気に応えるけど、もう今はイグニス様は大事な仲間だ。


「これから行くところってどんな魔物がいるのかしらね」

艶やかな赤毛を風に靡かせ、リアナがイグニス様の横に並んで立つ。


「ん、まあ、どんなのでも何とかなるだろ」

シオンが、いつものように認識阻害のローブ姿で何でもないように言う。


私たちも大分力を付けて来た。きっと、これからまた経験を積んで、それから、きっと魔王も倒せるだろう。てか、ぜったい倒せる!


イグニス様とリアナが先に歩き出し、シオンが私の方にやって来た。


「フェルマ」

「ん?なに?」


シオンが自分のフードをさっと下げて顔を露にした。

そして大きな手で私の後ろ頭を掴んで、ぐいっと自分に寄せると、私の唇に深いキスをする。


シオンの紅が滲む黒い瞳が、私を真っ直ぐに捉えていた。


「愛してるよ。何があっても俺が守ってやる」


私はきゅううう、っと胸が切なくなってしまい、感極まってシオンにぎゅうっと抱き着いた。そして、

「私も愛してるっ!シオンのこと、絶対守るっ!」

と叫んだ。


シオンは目を丸くしていたけど、くくっと笑って言った。

「ーーああ。頼りにしてるよ。何しろ物理も行ける、脳筋残念聖女だもんな」


私はおかしくなって笑った。

イグニス様とリアナもこっちを振り返って笑ってた。


ーーーー私、脳筋聖女で良かった。だって、守られるだけじゃなくて、大好きな人を守れるんだもん。

シオンの手をぎゅっと握ると、シオンも私を見て笑って、手を握り返してくれた。

うん、私これからも脳筋聖女で頑張る!


(終)


********


ここで一旦終わりですが、ひょっとしたら短編など上げるかもしれません。

ブクマして応援して下さった方々、ほんっとーーーーーに!ありがとうございました!めちゃくちゃ嬉しかったですーー!
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

おこ
2021.09.15 おこ

面白かったです。

続きが読みたい✨

2021.09.15 にあ

わわー!!感想ありがとうございます!!続き考えてますので、更新しましたらよろしくお願いします♡♡

解除

あなたにおすすめの小説

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました

まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」 あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。 ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。 それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。 するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。 好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。 二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。