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監禁は冗談だろ?

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「も、もう、いいから」

ぐす、って涙声になってたら、一人遊びに夢中だった花音が急に振り向いた。

「にぃに、ないたの?だれがわるいことしたの?ゆーだい?」
「ち、違うよ~、嬉しくて泣いたんだよ。雄大は俺に悪いことなんかしないよ」

えっちでSなことはたまに、いやけっこうして来るけどね。

「そうだぜ、俺は『にぃに』の事好きだからさ、悪い事なんかしないよ」
「えっ、雄大?」

子供相手に言ってることだって思っても、好きなんて言われたら嬉しいよぉ。

「ふーん」

じーっと雄大を見てた花音は、分かったような分かんないような返事をして、また遊びに戻った。

「なぁ、やっぱりお前、俺のことすごーく好きだよね?」

こっそり聞いてみる。
雄大は意地悪そうな顔で笑った。

「そりゃな。俺の大事な愛犬だからなお前は」
「うう、このクソS男!そう言うと思ったよ!けどお前のこと、好きだよ、愛してる!」

やけくそ気味に言って、ちゃぶ台乗り越えて抱き着いたら、ぎゅっと抱き締めてくれる。

「泣くなって」

まだ笑ってるけど、雄大が俺の背中を撫でる手は、優しかった。

「もぉ!クソッ!絶対俺のこと、ちゃんと愛してるって言わせてやるんだから!」
「んだよ、そんなの言って欲しいわけ?」
「そりゃそうだよ!俺ばっかりお前のこと好きみたいじゃん。今回のことだって、俺、もう二度とお前に会えないと思って、マジで、マジで落ち込んで、死んだと思ったしさ、この一週間誰とも遊ばないで直帰してたんだからね!」
「そうか、湊」

喚いてたら、雄大が俺の頬っぺたに手を当てて、目を合わせて来た。
あれ、なんか甘い雰囲気。これ、ひょっとして告白、からの両想いキス、来る?

「ゆ、雄大ぃ」
「にぃに、ちゅくえのうえにのったらだめでしょ。おりなさい」
「はっ、あ~、そ、そうだね」

花音に服の裾引っ張られて、ここ家だったって思い出したよ。あぶなっ、穢れなき天使の前で、穢れまくった濃厚なちゅーするとこだったじゃん。

焦ってたら雄大が吹き出した。

「ふはっ、お前こんな小さい子供に怒られてんじゃん。笑える」
「だってこんな可愛いんだよ~?逆らえないって。ねー?花音」
「いまあそんでるから。にぃにじゃま」
「あ~~ん、もう塩なんだからぁ~」
「ぷっ、ははははっ!!」

花音の柔らかいほっぺにちゅーしようとして、押しやられてしまった俺を見て、雄大が爆笑する。

「も~、そんなに笑うなよ」

ひとしきり笑った雄大は俺の頬っぺたにチュッとキスして、また笑った。

「続き、今度な」
「え、ええ~・・・そんなぁ」

あーあ、俺も好きとか言ってくれそうだったのになぁ。
まあ、しょうがないか。実家だし。

「つか、俺とメッセージでやり取りしたって、あの女には分かりようがねぇじゃん。さっさとブロック解除すりゃ良かったのに」
「あ・・・」

呆れた口調で言われて、気付く。

そうだよね、藤崎のいないとこで俺と雄大がやり取りしてても、分かりっこなかったのにさ。なんで俺、律儀にあいつの言ったこと守ってたんだよ。

「だ、だって、あの時はパニクっちゃっててさぁ。とにかく約束破ったら、花音に何かされるんじゃないかって、怖かったんだよ。しょうがないじゃん」
「まあ、そうか。そりゃ、そうだよな。ん?なに?」
「あのね、これかってもらったの。ゆずちゃんとねえ、みゆちゃん」
「へぇ、良かったな」

急に話し掛けて来た花音に、意外に優しく返事してやってる雄大を見てたら、じわじわ嬉しさがこみあげて来る。

あ~~~~、良かった。
あれで終わりだと思ってた。

1ヵ月くらい音信不通だったら、ちょっとは気にしてくれるかなって思ってたけど、思ったより早く気にしてくれて、俺のこと好きだって言ってくれて、もう今、すごい幸せなんだけど。

・・・ん?でもひとつ疑問。

「なあなあ、雄大。そういえば何でここ分かったの?」
「あ?あー・・・ま、それはいいじゃん。とにかく、後始末して来るから今日は帰るわ。アプリのブロックは解除しとけよ」

雄大のやつ、また話逸らしてる。

「じゃあなチビ子」

雄大が花音の頭をぽんぽんすると、花音はイヤイヤした。

「かのん、ちびこじゃないもん。かのんだもん」
「はは、そうか。じゃあまたなカノン。あんま『にーに』困らせんなよ」
「あ、待ってよ雄大」

玄関に歩いて行く後ろ姿を慌てて追いかける。玄関で靴を履いてる雄大に背中から抱き着いて、首筋に顔を埋める。

だって、足んないもん。
絶望の淵から這い上がって来たばっかなんだぜ。

「雄大、俺マジで嬉しかった。もう会えないって思ってたから、来てくれてホントありがと」
「湊」

振り向いた雄大が俺にキスする。

「ん」

たった一週間ぶり、だけどもう二度と触れられないと思ってた唇の感触、あったかくて柔らかくて、ちょっと煙草の匂いがする。雄大の匂い。

うっとり味わってたら唇が離れて、雄大が俺の耳のイヤーカフを撫でながら笑う。

「お前が俺から逃げたんだったら、今頃ガチで監禁してるとこだったぜ」
「え?ちょっと、目がマジなんだけど、冗談だよね?」
「さあな」

雄大はとぼけたけど、いやいや、ガチじゃんそれ。お前ってそんな執着束縛系じゃないはずだろ?

「じゃあな。片付いたらメッセージするから」

うろたえてる俺の頭をぽんぽん、として雄大は出てった。
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