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決着 side雄大
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2日後。
藤崎が来るのが待ち遠しいなんて思ったのは、初めてだ。
玄関のインターホンが鳴った瞬間ドアを開けたら、びっくりした顔で藤崎がこっちを見ていた。
「お・・・はようございます。今日もよろしくお願いします」
「あー。いいから早く入れよ。あんたに話がある。掃除とかいいからリビングに来て」
「え?はい・・・」
藤崎は何を言われるのか計りかねているようで、複雑な顔で付いて来る。
「座れば?」
そう言って促すと、不安そうな顔のまま、ソファに腰を下ろした。
訝しそうな視線がテーブルの上に置いてある、ノートパソコンのディスプレイに移動するのを見ながら、口を開く。
「あのさ。単刀直入に言うけど、あんた湊の事脅してたろ。あいつのパンツ、ズタボロにしたりさ。メンヘラっぽいとは思ってたけど、ガチでヤバいの自覚してる?」
「え?」
一瞬、顔は固まったけど、藤崎はすぐにいつもの営業スマイルを浮かべた。
「何でそんな事を・・・?私、そんな事してないです。する理由もありませんし」
ふーん。やっぱ素直に認めたりはしねぇか。
まあいい。
「理由はあんだろ。あんた、湊がうぜぇからあいつの可愛がってる妹、人質にして、俺と関係断つよう迫ったんだろ?湊本人からそう聞いてるけど?」
「そんな話、嘘です。私がそんな事する筈ありません」
予想通り、だけど、澄ました顔して頑として認めねぇのな、こいつ。
「どっちにしろ、あんたは解雇する。もうこれ以上、あんたの顔なんて見たくもねぇしな。・・・そもそも俺の物に手ぇ出した時点で終わりなんだよ」
いきなり湊からの連絡が途絶えた時の、言いようのない黒い重たい気持ちが蘇って来て、藤崎を見下ろす目に力が入る。
「・・・っ」
さすがに気圧されたみたいに一瞬ビクついたけど、それでも藤崎は食い下がって来た。
「そんな、私がやってもいない事で、解雇なんて出来る訳ないです!お忘れですか?私の父と雄大さんのお父様は懇意にしているって事―――そんな訳の分からない言いがかりで解雇したら、その関係に罅が入りますよ!」
「・・・はぁ、めんどくせー」
俺は心の底から溜め息を付くと、藤崎の前に置いてあるノートパソコンのエンターキーを叩いた。
「やっぱ、目の前に突きつけないとダメだよなぁ?ほら、しっかり見ろよ。自分の間抜けな姿をさ」
「は?何を・・・」
怪訝な顔で言いかけた藤崎だけど、一時停止していた動画が進みだすとブルブルと震え始めた。
「う、うそ、これ、なんでっ・・・!」
「どうだよ?細かいとこまでしっかり、くっきり映ってるだろ?この監視カメラ、かなり高性能だからさ、ちょっとくらい薄暗くても、こーんな解像度で映せちゃうんだよなあ。だからうちの一番人気なんだぜ?ズームも出来るし、ほら。こうすりゃよーく見えるよな。あんたが湊のパンツ破ってる所。あーあ、必死んなっちゃって怖ぇなぁー」
「い、いやぁっ、違う、違うんです!こ、これはそんなつもりじゃなくってっ・・・!」
そうそう。そんな風に狼狽えまくって、みっともねぇ顔、見たかったんだよなぁ。
あー、おかしくてたまんねー。
藤崎の醜態にかなりいい気分になったけど、ちゃんと徹底的に叩きのめしておかねぇと、後でまた復活されても困るし。
「他のもあるんだぜ。ほら、これもやべぇよな。自分の髪の毛料理に入れるとか、何考えてんの?あーやっぱ、あんたの飯なんか食わなくて良かったぜ。まぁ湊のやつは食ってたけど。あ、あと、この枕に顔擦り付けてんのも変態くせぇよな。それからこれと――――」
「ち、違う、ダメ、そんなの、そんなの私じゃない、違うの」
どんどん青くなって訳の分かんねぇ独り言を繰り返す藤崎に、
「これ、あんたの父親に送り付けたらどう思うだろうな?娘がこんな変態粘着ストーカーだったなんて知ったら、心臓止まっちまうんじゃねぇの」
トドメを刺してやったら、それまでブルブル震えてた藤崎が急に目を見開いて、俺に掴みかかって来やがった。
「―――ひどいっ!私はただ、雄大の事が好きだっただけなのにっ!あなたの趣味の悪い遊びだって、我慢してあげてたのにっ!誰がどう見たって、あんなビッチで頭空っぽそうな、しかも男なんかより、美人で、家柄も良くてっ、家事も完璧な私の方があなたにお似合いじゃないっ!なのになんで私よりもあんな男を選ぶのよっ!?」
「―――離せよ」
自分でも思った以上に冷たい声が出て、藤崎もビクッとして手を離した。
「ざけんなよ。何で俺の事をお前が決めんだよ?俺が誰を選ぼうが、どう生きようがお前には一切関係ねーし、お前みたいなめんどくせー奴、一番嫌いなタイプだっつぅの。でもまぁ、あまりにも哀れだからさ。自分からハウスキーパー辞めるってオヤジに言えよ。そうすりゃ、この動画送り付けるのは止めといてやる。それでもう、二度と俺にも湊の家族にも関わんな。もし破れば動画はお前の家に送るから」
最後は何だかもうどうでも良くなってそう言ったら、藤崎は黙って頷いて、よろよろしながら出て行った。
玄関のドアがガチャッと閉まる音がして、俺はようやく息をついた。
「はー、あーもう、やっと終わった」
藤崎の居なくなったリビングでソファに体を沈め、カチッと煙草に火を点けて煙を吐き出す。
タイプでもない奴に好かれて粘着されるとか、今までもまあ、けっこうあった。
だけど、大体は無視してれば済んだし、あまりにも酷いのは実家絡みの伝手でどうにかして貰ってた。
今回の藤崎の事だって、本当ならもっと早くにいくらでもどうにでも出来たんだよ。
なのに面倒臭ぇって放っておいたせいで、湊が・・・
・・・こんな事考えるなんて、自分らしくねぇなって思う。
セフレくらい、いくらでも替えは利くし、湊の事だってそのままにしとくって選択もあった。
俺の連絡、未読スルーされた時には腹立ったしな。
そっちがそういう気なら、上等だ。
もう二度と呼んでやんねぇ、なんて思った。
だけど、その後一人でリビングで酒飲んでた時、もう二度とここで湊の姿を見る事はないのかって思ったら、自分でも意外なくらい胸が重苦しくて。
面白くなくて酒飲みまくってたら、段々ムカついて来た。
なんで俺がこんな気持ちになんなきゃいけねんだよ。
大体湊の奴が、俺の事好きだなんだって言ったくせに、連絡無視しやがるのが悪ぃんだ。
どういうつもりなのか、とっ捕まえて問い質してやる―――
そう思って、湊の家に行ったんだよな。
返答次第じゃ、前にやったお仕置きくらいじゃ済まねぇって思ってたけど、俺を見た瞬間の湊を思い出すと、何だか全身が痺れるみたいな妙な気持ちになる。
「・・・俺も、その辺の奴らと変わりねぇって事かよ」
可笑しくなるけど、気持ちはすっきりしてた。
俺は煙草をもみ消すと、シャワーを浴びようとバスルームに向かった。
藤崎がハウスキーパーを辞めるから、新しい奴を寄越す、と実家から連絡があったのは、その翌日の事だった。
********
次のストックがないです(´-ω-`)更新まで数日かかるかもです(´ ω` )ここまでお読み頂き、ありがとうございます♡
藤崎が来るのが待ち遠しいなんて思ったのは、初めてだ。
玄関のインターホンが鳴った瞬間ドアを開けたら、びっくりした顔で藤崎がこっちを見ていた。
「お・・・はようございます。今日もよろしくお願いします」
「あー。いいから早く入れよ。あんたに話がある。掃除とかいいからリビングに来て」
「え?はい・・・」
藤崎は何を言われるのか計りかねているようで、複雑な顔で付いて来る。
「座れば?」
そう言って促すと、不安そうな顔のまま、ソファに腰を下ろした。
訝しそうな視線がテーブルの上に置いてある、ノートパソコンのディスプレイに移動するのを見ながら、口を開く。
「あのさ。単刀直入に言うけど、あんた湊の事脅してたろ。あいつのパンツ、ズタボロにしたりさ。メンヘラっぽいとは思ってたけど、ガチでヤバいの自覚してる?」
「え?」
一瞬、顔は固まったけど、藤崎はすぐにいつもの営業スマイルを浮かべた。
「何でそんな事を・・・?私、そんな事してないです。する理由もありませんし」
ふーん。やっぱ素直に認めたりはしねぇか。
まあいい。
「理由はあんだろ。あんた、湊がうぜぇからあいつの可愛がってる妹、人質にして、俺と関係断つよう迫ったんだろ?湊本人からそう聞いてるけど?」
「そんな話、嘘です。私がそんな事する筈ありません」
予想通り、だけど、澄ました顔して頑として認めねぇのな、こいつ。
「どっちにしろ、あんたは解雇する。もうこれ以上、あんたの顔なんて見たくもねぇしな。・・・そもそも俺の物に手ぇ出した時点で終わりなんだよ」
いきなり湊からの連絡が途絶えた時の、言いようのない黒い重たい気持ちが蘇って来て、藤崎を見下ろす目に力が入る。
「・・・っ」
さすがに気圧されたみたいに一瞬ビクついたけど、それでも藤崎は食い下がって来た。
「そんな、私がやってもいない事で、解雇なんて出来る訳ないです!お忘れですか?私の父と雄大さんのお父様は懇意にしているって事―――そんな訳の分からない言いがかりで解雇したら、その関係に罅が入りますよ!」
「・・・はぁ、めんどくせー」
俺は心の底から溜め息を付くと、藤崎の前に置いてあるノートパソコンのエンターキーを叩いた。
「やっぱ、目の前に突きつけないとダメだよなぁ?ほら、しっかり見ろよ。自分の間抜けな姿をさ」
「は?何を・・・」
怪訝な顔で言いかけた藤崎だけど、一時停止していた動画が進みだすとブルブルと震え始めた。
「う、うそ、これ、なんでっ・・・!」
「どうだよ?細かいとこまでしっかり、くっきり映ってるだろ?この監視カメラ、かなり高性能だからさ、ちょっとくらい薄暗くても、こーんな解像度で映せちゃうんだよなあ。だからうちの一番人気なんだぜ?ズームも出来るし、ほら。こうすりゃよーく見えるよな。あんたが湊のパンツ破ってる所。あーあ、必死んなっちゃって怖ぇなぁー」
「い、いやぁっ、違う、違うんです!こ、これはそんなつもりじゃなくってっ・・・!」
そうそう。そんな風に狼狽えまくって、みっともねぇ顔、見たかったんだよなぁ。
あー、おかしくてたまんねー。
藤崎の醜態にかなりいい気分になったけど、ちゃんと徹底的に叩きのめしておかねぇと、後でまた復活されても困るし。
「他のもあるんだぜ。ほら、これもやべぇよな。自分の髪の毛料理に入れるとか、何考えてんの?あーやっぱ、あんたの飯なんか食わなくて良かったぜ。まぁ湊のやつは食ってたけど。あ、あと、この枕に顔擦り付けてんのも変態くせぇよな。それからこれと――――」
「ち、違う、ダメ、そんなの、そんなの私じゃない、違うの」
どんどん青くなって訳の分かんねぇ独り言を繰り返す藤崎に、
「これ、あんたの父親に送り付けたらどう思うだろうな?娘がこんな変態粘着ストーカーだったなんて知ったら、心臓止まっちまうんじゃねぇの」
トドメを刺してやったら、それまでブルブル震えてた藤崎が急に目を見開いて、俺に掴みかかって来やがった。
「―――ひどいっ!私はただ、雄大の事が好きだっただけなのにっ!あなたの趣味の悪い遊びだって、我慢してあげてたのにっ!誰がどう見たって、あんなビッチで頭空っぽそうな、しかも男なんかより、美人で、家柄も良くてっ、家事も完璧な私の方があなたにお似合いじゃないっ!なのになんで私よりもあんな男を選ぶのよっ!?」
「―――離せよ」
自分でも思った以上に冷たい声が出て、藤崎もビクッとして手を離した。
「ざけんなよ。何で俺の事をお前が決めんだよ?俺が誰を選ぼうが、どう生きようがお前には一切関係ねーし、お前みたいなめんどくせー奴、一番嫌いなタイプだっつぅの。でもまぁ、あまりにも哀れだからさ。自分からハウスキーパー辞めるってオヤジに言えよ。そうすりゃ、この動画送り付けるのは止めといてやる。それでもう、二度と俺にも湊の家族にも関わんな。もし破れば動画はお前の家に送るから」
最後は何だかもうどうでも良くなってそう言ったら、藤崎は黙って頷いて、よろよろしながら出て行った。
玄関のドアがガチャッと閉まる音がして、俺はようやく息をついた。
「はー、あーもう、やっと終わった」
藤崎の居なくなったリビングでソファに体を沈め、カチッと煙草に火を点けて煙を吐き出す。
タイプでもない奴に好かれて粘着されるとか、今までもまあ、けっこうあった。
だけど、大体は無視してれば済んだし、あまりにも酷いのは実家絡みの伝手でどうにかして貰ってた。
今回の藤崎の事だって、本当ならもっと早くにいくらでもどうにでも出来たんだよ。
なのに面倒臭ぇって放っておいたせいで、湊が・・・
・・・こんな事考えるなんて、自分らしくねぇなって思う。
セフレくらい、いくらでも替えは利くし、湊の事だってそのままにしとくって選択もあった。
俺の連絡、未読スルーされた時には腹立ったしな。
そっちがそういう気なら、上等だ。
もう二度と呼んでやんねぇ、なんて思った。
だけど、その後一人でリビングで酒飲んでた時、もう二度とここで湊の姿を見る事はないのかって思ったら、自分でも意外なくらい胸が重苦しくて。
面白くなくて酒飲みまくってたら、段々ムカついて来た。
なんで俺がこんな気持ちになんなきゃいけねんだよ。
大体湊の奴が、俺の事好きだなんだって言ったくせに、連絡無視しやがるのが悪ぃんだ。
どういうつもりなのか、とっ捕まえて問い質してやる―――
そう思って、湊の家に行ったんだよな。
返答次第じゃ、前にやったお仕置きくらいじゃ済まねぇって思ってたけど、俺を見た瞬間の湊を思い出すと、何だか全身が痺れるみたいな妙な気持ちになる。
「・・・俺も、その辺の奴らと変わりねぇって事かよ」
可笑しくなるけど、気持ちはすっきりしてた。
俺は煙草をもみ消すと、シャワーを浴びようとバスルームに向かった。
藤崎がハウスキーパーを辞めるから、新しい奴を寄越す、と実家から連絡があったのは、その翌日の事だった。
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