115 / 282
第二章 白鳥雛派遣:魔法使い編
◆51 うるさい、黙れ! アレが、そんな女なはずがあるかッ!
しおりを挟む
ターニャ王女殿下が、紫に光る指輪を掲げた。
すると、〈魔法使いヒナ〉が、防御魔法とナノマシンの通信機能を封じ込めた指輪が発動し、空中に様々な映像が映し出された。
すべてはヒナの周囲で展開したことに限定されているが、東京にいる面々がモニターで観察するのと、ほぼ同じ映像が空中に映し出されたのである。
ヒナが騎士たちを自室に連れ込んで酒を酌み交わす様子や、居酒屋を「ナイトクラブ」と称する装飾に魔法で作り替えるさまや、侍女たちとグラスを重ねて飲んだくれたり、宝石商ロバートなる男にヒナが抱きつく様などが、次々と空中に浮かび上がる。
鮮明な画像が、全てを物語っていた。
ナノマシンが撮った映像を録画・再生したり、あまつさえ現地で映写することは、いまだ歴代の派遣バイトの、誰もがやったことのないことであった。
それほど、ターニャ姫がナノマシン機能を使いこなしていたのである。(むろん、ヒナの魅了魔法が掛かったナノマシンだったからだが)
アレックのみならず、レオナルドも口をあんぐりと開けて、映像を見上げるしかなかった。聞いたこともない、珍しい映像魔法に言葉も出ない。
ターニャ姫は、改めてアレックに向き直る。
「私は侍女長のクレアたちとともに、機会がある度に、ヒナ様の目と耳をお借りして、貴方の振る舞いを見続けていたのです。
ヒナさんの一見すると愚かしい振る舞いも、貴方の傲慢な態度も、数々の言葉とともにーーすべてをしっかりと見て、聞いてきたのです。
居酒屋でのグラスを重ねたタワーも、私の侍女たちがお酒を嗜むさまもーーそして、今夜、貴方がここに忍び込んでほくそ笑むさまも、みんな見ていたんだから!」
ターニャ王女殿下は、アレックを見下ろす。
「そう。ヒナさんは自ら囮になって、貴方の企みを炙り出してくださったのだわ!」
いきなり、ドアが開いた。
隣室から、侍女長クレアをはじめとしたサマンサ、スプリング、ローブ、イース、ナーラといった侍女集団が姿を現す。
その後ろには、大勢の騎士たちが剣を抜いて控えていた。
ナイトクラブをヒナと共にした、青髪の青年騎士が、低い声で言い渡す。
「アレック様。
貴方と王妃様からお金を貰って不正を働いていた騎士や騎士見習いを、すでに捕縛してあります。いずれ処罰されることでしょう」
侍女たちは口々に言い立てる。
「観念することね」
「貴方の恥ずかしい詐欺行為は、すでに露見しております」
「ヒナ様は自らのプライバシーを投げ打って、自らの目と耳をお貸しくださった。
のみならず、心にもない阿諛とお追従のセリフを貴方に投げかけ、見事に騙されている演技をなさってくださったのです」
暴露(?)を受けて、アレックのみならず、姫のために立ち上がったレオナルドまでもが、驚いて目を見開いた。
「大魔法使いヒナ・シラトリーーさすがは異世界の名だたる魔法使いなだけあって、用意周到な方ですね。感服いたしました」
レオナルドは笑顔をみせる。
ターニャ姫も朗《ほが》らかに声を弾ませた。
「そうなの。
こんな形の護衛方法もあるんだと、目から鱗が落ちる思いでしたわ。
ヒナ様は面白くて思慮深く、そして、とても強い女性ーー」
「うるさい、黙れ!
アレが、そんな女なはずがあるかッ!」
アレックが剣を構えたまま、絶叫する。
そして、憎悪の眼で、侍女や騎士たちがいる周囲を睨み回す。
次いで、改めてターニャ姫とレオナルド公爵子息の二人を見据えた。
「ふん、笑っていられるのも今のうちだ。
特にレオナルド、おまえは今日死ぬんだ!」
レオナルドが静かに言った。
「それはどうかな?
死ぬのは貴様の方かもしれないぞ。
表へ出ろ!」
姫の寝室の窓から、庭に出る。
レオナルドは、騎士たちに言い放つ。
「手出し無用だ。僕自身が剣で決着をつける。
君たちは証人となってくれ」
そして、レオナルドはアレックに向き直る。
「君も王国貴族に連なる紳士ならば、剣で語り合おうじゃないか」
「ふん、望むところだ」
向かい合う二人は互いに剣を抜く。
月明かりの下、貴族子息二人による決闘が始まった。
すると、〈魔法使いヒナ〉が、防御魔法とナノマシンの通信機能を封じ込めた指輪が発動し、空中に様々な映像が映し出された。
すべてはヒナの周囲で展開したことに限定されているが、東京にいる面々がモニターで観察するのと、ほぼ同じ映像が空中に映し出されたのである。
ヒナが騎士たちを自室に連れ込んで酒を酌み交わす様子や、居酒屋を「ナイトクラブ」と称する装飾に魔法で作り替えるさまや、侍女たちとグラスを重ねて飲んだくれたり、宝石商ロバートなる男にヒナが抱きつく様などが、次々と空中に浮かび上がる。
鮮明な画像が、全てを物語っていた。
ナノマシンが撮った映像を録画・再生したり、あまつさえ現地で映写することは、いまだ歴代の派遣バイトの、誰もがやったことのないことであった。
それほど、ターニャ姫がナノマシン機能を使いこなしていたのである。(むろん、ヒナの魅了魔法が掛かったナノマシンだったからだが)
アレックのみならず、レオナルドも口をあんぐりと開けて、映像を見上げるしかなかった。聞いたこともない、珍しい映像魔法に言葉も出ない。
ターニャ姫は、改めてアレックに向き直る。
「私は侍女長のクレアたちとともに、機会がある度に、ヒナ様の目と耳をお借りして、貴方の振る舞いを見続けていたのです。
ヒナさんの一見すると愚かしい振る舞いも、貴方の傲慢な態度も、数々の言葉とともにーーすべてをしっかりと見て、聞いてきたのです。
居酒屋でのグラスを重ねたタワーも、私の侍女たちがお酒を嗜むさまもーーそして、今夜、貴方がここに忍び込んでほくそ笑むさまも、みんな見ていたんだから!」
ターニャ王女殿下は、アレックを見下ろす。
「そう。ヒナさんは自ら囮になって、貴方の企みを炙り出してくださったのだわ!」
いきなり、ドアが開いた。
隣室から、侍女長クレアをはじめとしたサマンサ、スプリング、ローブ、イース、ナーラといった侍女集団が姿を現す。
その後ろには、大勢の騎士たちが剣を抜いて控えていた。
ナイトクラブをヒナと共にした、青髪の青年騎士が、低い声で言い渡す。
「アレック様。
貴方と王妃様からお金を貰って不正を働いていた騎士や騎士見習いを、すでに捕縛してあります。いずれ処罰されることでしょう」
侍女たちは口々に言い立てる。
「観念することね」
「貴方の恥ずかしい詐欺行為は、すでに露見しております」
「ヒナ様は自らのプライバシーを投げ打って、自らの目と耳をお貸しくださった。
のみならず、心にもない阿諛とお追従のセリフを貴方に投げかけ、見事に騙されている演技をなさってくださったのです」
暴露(?)を受けて、アレックのみならず、姫のために立ち上がったレオナルドまでもが、驚いて目を見開いた。
「大魔法使いヒナ・シラトリーーさすがは異世界の名だたる魔法使いなだけあって、用意周到な方ですね。感服いたしました」
レオナルドは笑顔をみせる。
ターニャ姫も朗《ほが》らかに声を弾ませた。
「そうなの。
こんな形の護衛方法もあるんだと、目から鱗が落ちる思いでしたわ。
ヒナ様は面白くて思慮深く、そして、とても強い女性ーー」
「うるさい、黙れ!
アレが、そんな女なはずがあるかッ!」
アレックが剣を構えたまま、絶叫する。
そして、憎悪の眼で、侍女や騎士たちがいる周囲を睨み回す。
次いで、改めてターニャ姫とレオナルド公爵子息の二人を見据えた。
「ふん、笑っていられるのも今のうちだ。
特にレオナルド、おまえは今日死ぬんだ!」
レオナルドが静かに言った。
「それはどうかな?
死ぬのは貴様の方かもしれないぞ。
表へ出ろ!」
姫の寝室の窓から、庭に出る。
レオナルドは、騎士たちに言い放つ。
「手出し無用だ。僕自身が剣で決着をつける。
君たちは証人となってくれ」
そして、レオナルドはアレックに向き直る。
「君も王国貴族に連なる紳士ならば、剣で語り合おうじゃないか」
「ふん、望むところだ」
向かい合う二人は互いに剣を抜く。
月明かりの下、貴族子息二人による決闘が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
SE転職。~妹よ。兄さん、しばらく、出張先(異世界)から帰れそうにない~
しばたろう
ファンタジー
ブラック企業で倒れたSEが、
目を覚ますと――そこは異世界だった。
賑やかなギルド、個性豊かな仲間たち、
そして「魔法」という名のシステム。
元エンジニアの知識と根性で、男は再び“仕事”を始める。
一方、現実世界では、
兄の意識が戻らぬまま、妹が孤独と絶望の中で抗っていた。
それでも彼女は、心ある人々に支えられながら、
科学と祈りを武器に、兄を救う道を探し続ける。
二つの世界を隔てる“システム”の謎が、やがて兄妹を結びつける。
異世界と現実が交錯するとき、物語は再起動する――。
《「小説家になろう」にも投稿しています》
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる