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◆2 おいおい、またもや〈時の狩人〉が新米を入れたぞ! しかも、今度は女の子だ!
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春の日差しが暖かくなったある日ーー。
ピンクの髪をした若い女の子が、酒場〈愚か者の罠〉に押し掛けてきた。
酒場|〈愚か者の罠〉は、僕が所属する、S級冒険者パーティー〈時の狩人〉が定宿にしている宿泊所でもある。
彼女ーーリイファは北方出身の、小さな女の子だ。
図体がデカい僕とは違って、僕の腰ほどの背の高さしかない。
年齢は十六歳と言う。
一応この国では十五歳以上は成人なので、村長の許可を得て村から出ることができ、ようやく王都に来られたのだという。
彼女、リイファは、三つ編みの頭をちょこんと下げて、リーダーのバトラーさんの前で、大声を張り上げた。
「何でもしますから、仲間に入れてください!」
自称勇者のバトラーさんは困惑気味に少女を見下ろしたまま、笑顔で固まっている。
彼の口からは、言下に拒否することは憚られたのだろう。
だけど、武道修道士ランガさんや、魔法使いハーベイといった男どもは、即座に冷たく断った。
「悪いが、ウチは嬢ちゃんのような女の子を可愛がるゆとりはねえんだ。
他所を当たりな」
「そうですよ。あなたのような子に、ウチは務まりませんよ」
だが、エルフの女性フレシアは違った。
彼女は少女リイファの視線に合わせるように屈んで、両手を広げる。
ピンクの髪の少女を、優しく迎え入れたのだ。
「あら、可愛い子じゃない?
素敵な八重歯をしてるわね。
私は歓迎するわ」
フレシアの言葉を耳にして、宿泊所の酒場に集っていた客たちは、驚きの声を上げた。
「おいおい、またもや〈時の狩人〉が新米を入れたぞ!」
「しかも、今度は女の子だ!」
体が大きいだけの田舎者である僕、ライオネスを荷物係に採用しただけでなく、今度は八重歯も矯正できない貧しい田舎の子娘を、S級冒険者パーティーが迎え入れようとしている。
普通なら、何が理由で採用したのかを、仲間に説明しなければならない。
だが、齢一千年を超す長寿エルフのフレシアに意見できるものなど、そうそういるわけもない。
実際、リーダーであるバトラーさんが諦めたように首を横に振ると、フレシアさんに抱かれた格好になってる少女に呼びかけた。
「よかったね、お嬢さん。
ウチの姐御のおメガネにかなったみたいだよ。
よろしくね」
自称勇者は大きな手を差し伸べる。
少女リイファが頬を赤らめて、おずおずと手を出し述べた段階で、パーティー入りは決定したようなものだった。
その様子を、僕は呆然と見続けていただけだった。
(こんな小さな女の子が〈時の狩人〉に!?)
相応しくない。
おかしいと思う。
僕ですら荷物係がやっとなのに、こんなか弱そうな女の子に何が出来るのだろうか。
魔物を狩ったり、罠を掻い潜ることができるとは、とても思えない……。
ーーそう思ったが、僕は瞬時に思考を切り替えた。
S級冒険者パーティー〈時の狩人〉に相応しくないと勝手に決めつけるのは、僕が入団した際に、嫌がらせをしてきた連中と同じ愚を犯すことになる。
それだけは嫌だった。
僕は男だし、先輩だ。
後輩が出来たのだと、素直に喜ぼう。
そして、彼女に少しでも良いところを見せようと、頑張ることにした。
それがひいては恩義があるフレシアさんたちに「一人前になった」と認められる近道だ、と思い直したのだ。
「よおし。リイファ、だっけか?
僕はライオネス。
今は雑用をこなしてるだけだけど、いずれは先輩方のように、一流冒険者になる男だ。
君を歓迎する」
僕は立ち上がって、パンパンと両手を叩いて合図した。
すると、ウェイターが料理人たちを呼び込み、食材を僕たちのいるテーブルに運んできた。
ドン!
少女の目の前には、自分の背丈よりも大きい、でっかい生肉が、板ごと運ばれてきた。
「おおっ!」
「こいつは豪勢だ!」
「さすがはS級!」
近くのテーブルについていた他のパーティーの冒険者たちも、感嘆の声を上げ、拍手する。
「なんですか、これは?」
と少女が問いかけるのを、僕は得意げに鼻を鳴らした。
「これはね、昨日討伐したばかりの大鬼の肉さ。
ここが〈時の狩人〉の常宿になってるのには、理由があってね。
こうして討伐した魔物や迷宮で出た珍しい食物などを、すぐに調理してくれる場所だからなんだ。
珍しい料理を食べるなら、〈愚か者の罠〉が一番ってことさ」
周りの冒険者が、はやしたてる。
「ほんと、羨ましいこった」
「そうだ、そうだ。
俺たちも通いじゃなく、ここに泊まりてぇよ。
だが、宿代が高くてなぁ」
「ボヤくな。オメェもS級になれば、ここに住めるってことよ」
ゲラゲラと笑う。
僕はまだ新人冒険者ながらも、まるでベテランメンバーのように胸を張って宣言した。
「リイファちゃん。
君もこの肉を食べて、強くなるんだ。
たっぷりと、これぐらいの肉を食べれるくらいにならないと、〈時の狩人〉のメンバーになれないよ」
「えーっ!?」
と声をあげ、リイファは泣きそうな顔で言った。
「私、料理は得意ですけど、これほど食べるとなると……」
フレシアさんは少女の頭を撫でながら言った。
「もう、ほんとに。
ライオネスちゃんたら、ちょっと前に来たばかりなのに、すっかり先輩風吹かせちゃって。
あんまり妹をいじめないことね。
私はこの子入れるの、もう決めてるんだから」
僕は頬を膨らませながらも、「わかってますよ」とだけ答えた。
それを受けて、〈時の狩人〉のメンバーのみならず、周囲で食事をしていた他のパーティーの冒険者たちもゲラゲラと笑った。
こうして僕の下に、一人の女の子が、新たなメンバーとして加入してきたのだった。
ピンクの髪をした若い女の子が、酒場〈愚か者の罠〉に押し掛けてきた。
酒場|〈愚か者の罠〉は、僕が所属する、S級冒険者パーティー〈時の狩人〉が定宿にしている宿泊所でもある。
彼女ーーリイファは北方出身の、小さな女の子だ。
図体がデカい僕とは違って、僕の腰ほどの背の高さしかない。
年齢は十六歳と言う。
一応この国では十五歳以上は成人なので、村長の許可を得て村から出ることができ、ようやく王都に来られたのだという。
彼女、リイファは、三つ編みの頭をちょこんと下げて、リーダーのバトラーさんの前で、大声を張り上げた。
「何でもしますから、仲間に入れてください!」
自称勇者のバトラーさんは困惑気味に少女を見下ろしたまま、笑顔で固まっている。
彼の口からは、言下に拒否することは憚られたのだろう。
だけど、武道修道士ランガさんや、魔法使いハーベイといった男どもは、即座に冷たく断った。
「悪いが、ウチは嬢ちゃんのような女の子を可愛がるゆとりはねえんだ。
他所を当たりな」
「そうですよ。あなたのような子に、ウチは務まりませんよ」
だが、エルフの女性フレシアは違った。
彼女は少女リイファの視線に合わせるように屈んで、両手を広げる。
ピンクの髪の少女を、優しく迎え入れたのだ。
「あら、可愛い子じゃない?
素敵な八重歯をしてるわね。
私は歓迎するわ」
フレシアの言葉を耳にして、宿泊所の酒場に集っていた客たちは、驚きの声を上げた。
「おいおい、またもや〈時の狩人〉が新米を入れたぞ!」
「しかも、今度は女の子だ!」
体が大きいだけの田舎者である僕、ライオネスを荷物係に採用しただけでなく、今度は八重歯も矯正できない貧しい田舎の子娘を、S級冒険者パーティーが迎え入れようとしている。
普通なら、何が理由で採用したのかを、仲間に説明しなければならない。
だが、齢一千年を超す長寿エルフのフレシアに意見できるものなど、そうそういるわけもない。
実際、リーダーであるバトラーさんが諦めたように首を横に振ると、フレシアさんに抱かれた格好になってる少女に呼びかけた。
「よかったね、お嬢さん。
ウチの姐御のおメガネにかなったみたいだよ。
よろしくね」
自称勇者は大きな手を差し伸べる。
少女リイファが頬を赤らめて、おずおずと手を出し述べた段階で、パーティー入りは決定したようなものだった。
その様子を、僕は呆然と見続けていただけだった。
(こんな小さな女の子が〈時の狩人〉に!?)
相応しくない。
おかしいと思う。
僕ですら荷物係がやっとなのに、こんなか弱そうな女の子に何が出来るのだろうか。
魔物を狩ったり、罠を掻い潜ることができるとは、とても思えない……。
ーーそう思ったが、僕は瞬時に思考を切り替えた。
S級冒険者パーティー〈時の狩人〉に相応しくないと勝手に決めつけるのは、僕が入団した際に、嫌がらせをしてきた連中と同じ愚を犯すことになる。
それだけは嫌だった。
僕は男だし、先輩だ。
後輩が出来たのだと、素直に喜ぼう。
そして、彼女に少しでも良いところを見せようと、頑張ることにした。
それがひいては恩義があるフレシアさんたちに「一人前になった」と認められる近道だ、と思い直したのだ。
「よおし。リイファ、だっけか?
僕はライオネス。
今は雑用をこなしてるだけだけど、いずれは先輩方のように、一流冒険者になる男だ。
君を歓迎する」
僕は立ち上がって、パンパンと両手を叩いて合図した。
すると、ウェイターが料理人たちを呼び込み、食材を僕たちのいるテーブルに運んできた。
ドン!
少女の目の前には、自分の背丈よりも大きい、でっかい生肉が、板ごと運ばれてきた。
「おおっ!」
「こいつは豪勢だ!」
「さすがはS級!」
近くのテーブルについていた他のパーティーの冒険者たちも、感嘆の声を上げ、拍手する。
「なんですか、これは?」
と少女が問いかけるのを、僕は得意げに鼻を鳴らした。
「これはね、昨日討伐したばかりの大鬼の肉さ。
ここが〈時の狩人〉の常宿になってるのには、理由があってね。
こうして討伐した魔物や迷宮で出た珍しい食物などを、すぐに調理してくれる場所だからなんだ。
珍しい料理を食べるなら、〈愚か者の罠〉が一番ってことさ」
周りの冒険者が、はやしたてる。
「ほんと、羨ましいこった」
「そうだ、そうだ。
俺たちも通いじゃなく、ここに泊まりてぇよ。
だが、宿代が高くてなぁ」
「ボヤくな。オメェもS級になれば、ここに住めるってことよ」
ゲラゲラと笑う。
僕はまだ新人冒険者ながらも、まるでベテランメンバーのように胸を張って宣言した。
「リイファちゃん。
君もこの肉を食べて、強くなるんだ。
たっぷりと、これぐらいの肉を食べれるくらいにならないと、〈時の狩人〉のメンバーになれないよ」
「えーっ!?」
と声をあげ、リイファは泣きそうな顔で言った。
「私、料理は得意ですけど、これほど食べるとなると……」
フレシアさんは少女の頭を撫でながら言った。
「もう、ほんとに。
ライオネスちゃんたら、ちょっと前に来たばかりなのに、すっかり先輩風吹かせちゃって。
あんまり妹をいじめないことね。
私はこの子入れるの、もう決めてるんだから」
僕は頬を膨らませながらも、「わかってますよ」とだけ答えた。
それを受けて、〈時の狩人〉のメンバーのみならず、周囲で食事をしていた他のパーティーの冒険者たちもゲラゲラと笑った。
こうして僕の下に、一人の女の子が、新たなメンバーとして加入してきたのだった。
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