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1.10年間の裏切りと婚約破棄
しおりを挟む「ジェレイン様!!」
桜が綺麗に咲いた春の日です。私は最愛の婚約者であるジェレイン様の名前を呼びました。
「エル、、、!」
小高い丘の上に立っていたジェレイン様はゆっくりと私を振り返りました。深い海のような青い瞳に柔らかい黒い髪。夢にまで見たジェレイン様です。長い入院生活の中で、ジェレイン様に会うことを心の支えにしていました。
「ジェレイン様、今行きます!!」
本当は、走ってジェレイン様の元に駆け寄りたかったのですが、松葉杖ではそうもいきません。
ジェレイン様はただ、丘の上から私を呆然と見下ろしていました。
(丘から降りて、私の側に駆け寄ってはくれませんか?)
正直な話、足だけでなく全身に大怪我を負った私が、丘の上までいくのは難しいことです。久しぶりに婚約者である私に会ったのですから、駆け寄ってきて抱きしめてほしいのですが、、、。
「ジェレイン様!」
私はもう一度、ジェレイン様の名前を呼びました。いつものような優しい笑顔で、私の頭を撫でてくれたら、どんなに嬉しいでしょう。
しかし、ジェレイン様は私の元に来てはくれませんでした。
「もう、二度と俺に話しかけないでくれ。」
そう言ったジェレイン様の顔にはなんの表情も浮かんではいませんでした。
「絶対に嫌です!!」
ジェレイン様ほど、格好良くて優しい婚約者はいません。どんなことがあったって、ジェレイン様の側にいたいのです。
ジェレイン様は私に背を向け、反対方向にゆっくりと歩き出しました。
「待ってください!!」
私は必死で松葉杖をうごかし、ジェレイン様を追いかけました。しかし、ここは屋外。松葉杖が草に引っかかり、私は盛大にすっ転びました。
「みっともないわね。」
「ケンナ、、、!」
転んだ私に手を差し伸べるどころか馬鹿にしたのは、ジェレイン様の妹君であるケンナでした。金髪に緑の目を持つ彼女は国一番の美女と名高いです。そして、、、性格はすこぶる悪いと私は思います。
「ねえ、手を貸してよ。立ち上がれないの。」
ケンナは口元を押さて、ふふふ、と笑うと私の松葉杖を蹴っ飛ばしました。
(最低、、、!)
とんでもない女です。綺麗だからって、なんでも許されると思ったら大間違いなのですよ?
「調子に乗って、ジェレインに近づいたから罰が当たったのよ。」
ケンナは、ジェレイン様の婚約者である私が大嫌いなのですが、上等です。私もケンナのことが大嫌いですから。
「な!!私はジェレイン様の婚約者です!!ケインこそ、妹のくせに兄にベタベタし過ぎです!」
正直なところ、ケインのジェレイン好きは異常です。兄の婚約者に嫌がらせをする妹なんて、嫌われてしまえばいいのです。
「ふふ。残念ね。もう、貴方のものじゃないわよ。」
いつもなら、顔を真っ赤にして怒るケインが今日は勝ち誇った顔をしています。
「どういうことですか?」
私が顔を上げると、ジェレイン様が側に近寄って来てくれていました。
「ジェレイン様?」
いつも優しい瞳で私を見つめてくれるジェレイン様は今は私ではなく、ケインを見ています。
ケインは嬉しそうにジェレイン様に近づき、ジェレイン様に腕を絡めました。
「え?!」
目を疑う私の前で、ジェレイン様はケインの腕を振り払おうとはしません。
「どういうことですか?!ジェレイン様!!?」
ジェレイン様は私のことをちらりと見て言いました。
「エル、君とは婚約破棄するよ。」
冗談ではありません。ジェレイン様と婚約してから10年間、一心にジェレイン様をお慕い続けていました。
「ま、待ってください。冗談ですよね、、、?」
ジェレイン様は何も言いません。ケインに腕を組まれて、私から離れていきます。
「待ってください!!ジェレイン様!!私を愛していると言ってくれたではありませんか?!」
ケインだけが、私を振り返って言いました。
「残念だけど、ジェレインが愛してるのはあたしなのよ。お生憎様。」
私は呆然とその場に座り込みました。ジェレインとケインに確かに血の繋がりはありません。でもだからって、まさかケインにジェレイン様を奪われるとは思いませんでした。
「嘘でしょ?!ねぇ!ジェレイン様!!」
どんなに呼びかけても、ジェレイン様が私を振り返ることはありませんでした。
ジェレイン様の強い要望によって、私とジェレイン様の婚約破棄は成立しました。入院生活中、一度もお見舞いに来なかったばかりか、退院した途端に婚約破棄するなんて信じられません。
「この、顔の傷のせい、、、?」
3ヶ月前、私は事故にあい全身に大怪我を負いました。幸い命に別状はなく、松葉杖があれば歩くこともできます。ですが、私のおでこには大きな傷ができました。お医者さんの話では、完全に傷跡がなくなることは無いそうです。
「まさかこの歳で婚約破棄されるとはな、、、。」
お父様とお母様が私の婚約破棄について深刻そうに話しているのが聞こえました。私はもう17歳。友達の中にはすでに結婚している子もいます。
めぼしい貴族の青年は皆、婚約者がいるのです。大きな傷を負った私が新しい婚約者を見つけることは難しいのです。
「なぜなの、ジェレイン様、、、?」
10年間、私を愛しているふりをして、本当に愛していたのは継妹だったのですか、、、?
「許しませんよ?」
私はかつてジェレイン様からもらった指輪をぎゅっと握りしめました。10年間の想いを踏みにじったあなたには痛い目をみせてあげますからね!
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