【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう

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26. 結婚した二人 Side マティア

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【Side マティア】

(ポールは……サラの元の帰るのね。)

 その場を後にするポールをぼんやりと見つめる。

 「ポール。」

マティアは夫の名前を呼んだ。

 (なんで、名前を呼んでしまったんだろう。)

 名前を呼んでしまってから、マティアははっとする。

 「なんだ?」

 相変わらずの不愛想で、ポールが振り返った。目の下にはうっすらとくまが浮かんでいる。

 (昨日の夜はサラと……。)

 赤い瞳はサラを見つめ、抱きしめたんだろうか

 「昨日は……よく眠れた?」
 
 マティアの言葉に、ポールは少し目を見開く。

 「君には関係ない。」

 「……そうかしら?」

 関係がないはずはない。昨晩、マティアとポールは結婚したのだから。

 結婚パーティの余韻は城には残っていない。各国の王族はその日のうちに皆、リックストン国を去っていった。それはきっとリックストンに長くとどまる危険性を強く感じていたから。

 (結婚なんて、名ばかりね。)

 「皆、君の裏切りを知っている。」

 ポールは、まっすぐにマティアを見つめる。

 「ええ。貴方の裏切りは、皆知らないみたいだけれど。」

 今の城にはマティアの噂ばかり。サラとポールの噂は今のところ流れていなかった。

 「すぐに皆知るだろう。僕たちのことも。」

”僕たち”

 ポールはそう言ったけれど、そこにマティアは含まれていない。

 「だから……」
 
 「早くドントールに帰れ?」

 マティアは微笑みを浮かべて、ポールの言葉を遮った。

 「ポール。貴方私に、それしか言っていないわね。」

 ポールは何度も繰り返し、マティアにドントール国へ帰れと言う。いくらマティアが鈍感でも、ポールの気持ちに少しは気が付いてた。
 
 「心配……してくれているのよね?」

 そう信じたい。

 「君が……憎いだけだ。」

 マティアは唇をかむ。ポールの言葉はいつも鋭利で、まっすぐにマティアを傷つける。だが、その言葉を言うポールの表情は、いつも少し悲しそうに見えるのだ。

 「邪魔して……ごめんね。」
 
 マティアは小さい声で呟く。

 「邪魔だと思うなら、僕の傍からいなくなってくれよ、マティア。これ以上僕は君を……。」

 ポールは、それ以上何も言わなかった。

 「テオ、君もわかっているよな。」

 「ん?俺?」

 「”あの噂”が広まった以上、何があってもおかしくない。マティア、君は敵国に一人でとどまる王女様だ……命の保証すら、ないのだ。それをよく覚えておけ。」

 「わかっているわ。私は……死んだっていいのよ。」

 リックストンに一人で嫁いできた時点で、無事に母国に帰れる保証がないことはわかっている。どんなにポールに帰れと脅されても、譲れない。

 「もう少しだけ……戦わせて。私はドントール国王の娘なんだから。」

 「できやしない。」

 「もしも戦いを止められたら……昔みたいな、ポールの笑顔が見たいわ。」

 もう、ポールと愛しあうことを望むことはないけれど。”愛するふり”だってできないけれど。それでも、ポールの笑顔だけはいつか見たかった。


  ◇◇◇
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