【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう

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30. 王女がいない未来 Side マティア

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【Side マティア】

 マティアとテオは部屋に戻り、テーブルの上に便箋を広げる。

「さぁ、手紙を書きましょう。」

 (リックストン皇太子の妻としてなら、自由に手紙を書けるはずよ。)

 ドントール国にいる時、マティアの行動は全て制限されていた。他国への手紙は特に父親によって厳しく検閲され、ドントール国王が望む行動しかとれなかった。

 (今私は、お父様の支配下にいないんだから。できることは……全部やらなくや……。)

 マティアはペンを強く握り締める。ドントール国王の悪行を止めるためには、多くの人の協力が必要になる。この手紙はきっと重要なものになるはず。

「俺、字下手なんだが、許してくれるか?」

 ペンをくるくると回しながら、テオはマティアに尋ねる。テオが落としかけたペンを右手でキャッチして、笑いながらマティアは答える。

「だいじょうぶ、もちろん私が書くわ。テオには一緒に……暗号の内容を考えてほしいの。」

「任せとけ‼それは大得意分野だ。」

 表向きは結婚式への参加に対するお礼の手紙として伝えるつもりだが、実際には秘密の暗号を込めたメッセージを送る。

 「誰に送るんだ?」

 「隣国のお友達と……それから私に協力してくれそうな、ドントール国の貴族に手紙を送るわ。」
 
 ドントール国王を陥れるためには、ドントール国内からの協力が必要不可欠だ。ドントール国王に反感を持ち、リックストンと戦いたくないと思っているドントールの貴族に心当たりがある。

 「なーるほど。てことは、ドントールの貴族から、ドントール国王に手紙を見られる可能性があるってことか。」

「ええ。十分に。」

「そりゃあ怖いなぁ。」

 飄々とした口調で、テオが答える。

 (本当に怖いと思っているのかしら?)

 マティアが手紙の中に込めたいメッセージは2つ。

 1つは”ドントール国がリックストン国を裏切り侵略しようとしている”と言うこと。

 もう1つは”マティアがドントール国王を倒すつもりだ”ということだ。

 マティアがドントール国王を陥れることに成功したとき、国内に味方が必要になる。

 「できるならば、妹のリリーにも……この手紙を届けたいの。」

 「リリーに……流石に、危険すぎないか……?」

 テオの言葉はもっともだ。リリーは王宮で暮らしている。彼女の目に触れる手紙は全て、厳しい検閲がかかる。

 「そう……よね。だけど、なんとかしてリリーにも、私がしようとしてることを伝えなくちゃ……。」

 引っ込み思案で、優しいリリー。
 
(私がいなくなった後、ドントール国をまとめられるのはリリーしかいないわ。)
 
 マティアにはリリーの他に弟のデイルがいる。だが、デイルはまだ10歳で、国を背負うには早すぎる。

 (父上を倒すのは、私の役目。でもその先に、私はいない気がするから。)

 マティアをじっと見つめるテオ。

 (いけない。テオにまた心を読み取られちゃうわ。)

 ドントール国王を倒した後の自分の未来、マティア自身が想像していないと言ったら、きっとテオは怒るだろう。

 「その……ほら、妹の力を借りられたら、心強いでしょう?」

 しどろもどろになりながら、マティアは場を取り繕った。自分がいなくなった後のドントール国を妹に託そうとしているなんて、悟られないように。

 「そう、だな。」

 テオは頬杖をついて、そっぽを向く。

 「テオ?」

 心配になってマティアがテオの顔を覗き込むが、テオはどこか遠くを見つめたままマティアと目を合わせようとしない。

 「テオ……どうしたの?」

 もう一度声をかけると、テオははっとした顔をして笑顔を作った。

 「何でもない……その、暗号の中身を考えていたのさ。ちゃんと、受け取った奴に伝わる暗号。だけど、ドントール国王やポールにばれない暗号だろ?」

 「ええ。一緒に考えましょ。」

 全員に伝わらなくてもいい。少しでも味方を増やせれば、前に進める。

 「私とテオなら、きっとできるわ。」

 昔から、手紙の中に秘密の暗号を込める遊びをしていた。マティアとテオ、それからポールとサラも一緒に送り合った。手紙の中身は暗号だらけだった。

 「ポールが一番得意だったよな。」

 頭の上で腕を組んで、テオがぽつりとつぶやく。

 「そうね。」

 「ポールには相談しないのか?きっと、力になってくれると思うぞ?」
 
 穏やかな笑みを浮かべたまま、テオがマティアに尋ねた。

 「ポールが知ったら……止められちゃうに決まってるでしょ?」

 「そう……だよなぁ。」

 頬杖をついたテオは、なにやら考え込んでいるようだった。
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