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42.じゃあな Side テオ
しおりを挟む【Side テオ】
(俺の役目は……そろそろ終わりかな。)
嬉しそうに朝ごはんを食べるマティアと、マティアをじっと見つめるポール。テオは交互に二人を眺めた。
(二人が仲直りできてよかったよ。)
ようやくマティアの覚悟がポールに伝わったようである。頑固な王女はどんなに遠ざけようと自分を守ろうとするのだと、ポールは気づいたのだ。
”大人ぶってほしいものに手を伸ばさないのって気持ち悪いよ!”
ふと、サラに言われた言葉が頭をよぎり、テオは曖昧に笑う。
テオは自分の気持ちを素直に伝えることができない。ある意味でテオはサラの欲望に忠実な姿勢を羨ましく思う。もちろん、サラのやり方に問題はあるが。
(俺は最後まできっと、マティアに想いを伝えない。)
いつかそのことを後悔する日が来るのかもしれない。それでも遠くから二人が幸せそうに笑う姿を見れば、きっと幸せになれるのだろう。
「本当にそれでいいのか?テオ?」
ポールがテオに問いかけた。
(ずるい奴め。)
テオは内心でつぶやく。
「なんの話をしているんだ。俺は幸せだぜ?」
テオは笑いながら答えた。
テオは自分がマティアのヒーローではないことを理解していた。幼いころからずっと、マティアが見つめていたのはポールであり、それが変わることはない。
マティアはきょとんとした顔で、テオとポールを見上げていた。
「じゃ、俺はそろそろ行くよ。」
「え、テオ……?」
マティが驚きの声を漏らす。
テオはドントール国に行くことを決意していた。船で数日かかる旅だが、彼はマティアの状況をドントール国に伝え、そして結婚式の準備を始めるつもりだ。
[なあ、リリー。俺と結婚しないか?]
手紙で、テオはリリーに提案した。
テオを提案する結婚する相手は、マティアの妹リリー。彼は昨晩リリーに手紙を書いていた。
”テオ君。君とリリーが結婚すれば、バード国とドントール国の結びつきはより強くなるだろう”
実はこの提案は、前々からドントール国王に持ちかけられていたものだった。テオの父であるバード国王もこの結婚の意向を理解し認めている。テオは大国バード国の第三王子であり、リリーとの結婚は両国の結びつきを強める意味がある。
”いやっ。俺はまだ結婚する気ないんで……”
テオは、そう言って断っていた。だが、今、テオは自分の秘めた恋心を捨てるべきだと気が付いたのだ。大好きな人を救うために。
結婚式は急ぎ行われることになるだろう。手紙がドントール国に届くと、すぐに結婚式の準備が始まるはずだ。
ドントール国王はきっとリックストン国を攻め入る前に、リリーとテオの結婚式を挙げることを望んでいるのだろう。
「一週間後、俺が舞台を整える。だからポール、マティア。絶対に戦いを止めてくれ。」
各国から大勢の人を集めるのに、これ以上の機会はない。
「ええ。」
強くて綺麗な瞳。大好きな幼馴染。テオはマティアの幸せを心の底から祈っている。
「じゃあな。」
テオはひらひらと手を振り、すぐにリックストン国を旅立っていった
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