【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう

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56.  心の底から Side ポール

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【Side ポール】

 リックストン城正門前。水色のドレスをきた美しい妻は、まっすぐに背筋をのばしてそこに立っている。今からポールとマティアは、リックストン城に帰るのだ。マティア自身が、ポールの妻として、リックストン国に帰ることを望んでいた。

 「さぁ、行こうか。マティア。」

 「ええ!」

 ポールが差し出した手をマティアはしっかりと握った。

(奇跡みたいだ。)

 城の前には大勢の人々が駆けつけ、二人の帰還を歓迎している。

 (リックストン国とドントール国の戦いは防がれたのだ。)

 いまやリックストン国とドントール国は敵国同士ではない。諸悪の権現であったドントール国王は捕らえられ、両国に平穏が戻った。

「おかえりなさいませ!ポール様!マティア様!」

 リックストン皇太子であるポールは、妻のマティアと共に、城に帰るのだ。マティアの疑いは晴れ、リックストンの人々は彼女を歓迎している。リックストン国とドントール国の戦いを防いだ英雄として。

 「ねえ、ポール。夢みたいね!」

 心から幸せそうに、マティアが笑う。自分を敵国の王女として冷たく扱ったリックストンの人々は、手のひら返しでマティアを歓迎しているが、彼女は気にしてないらしい。

 「腹が立たないのか?」

 ポールがマティアに尋ねると、

 「え?なぜ?」

 マティアがきょとんとした顔をした。

 マティアがリックストン国に来た時、”一生愛するつもりはない”とポールは言った。大切だからこそ、マティアを遠ざけたくて、ポールは自分の気持ちを偽っていた。今、こうしてマティアと手を繋いで歩いている今が、酷く特別なものに思える。

 「マティア様!」

 「ポール様!おかえりなさい!」

 リックストン城の中を歩く、ポールとマティアにむかって、人々は笑顔で声をかける。嬉しそうに人々に手を振るマティア。ポールはマティアの存在がとても愛しいし、ずっと守っていってあげたいと思う。

 (これからのマティアの人生が幸せで満たしてあげたい。)

 「ただいま。」
 
 マティアはそう言って、皇太子夫婦の部屋を見渡す。
 
 「ね、ポール。もう”愛するふり”はしなくていいんでしょう?」

 ポールの目を覗き込んで、マティアが尋ねた。

(もう二度と、あんな悲しい嘘をつかないと誓うよ。)

「もちろん。心の底から、君を愛しているよ。マティア。」

 そう言ってポールは強くマティアを抱きしめたのだった。
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