【完結】婚約破棄を望む王子様にお飾りの正妃にして欲しいと頼んだはずですが、なぜか溺愛されています!

五月ふう

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4.今すぐここから出ていけ!

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(俺に婚約者など持てるはずもないのに、よくも次々と女を送り込んでくるものだ。)

皇太子レオは赤い絨毯の先に続く玉座に座り、新しく城に来るという婚約者を待っていた。目を閉じると過去の記憶が、何度も蘇ってくる。

3年前。継母のフローレンスは叫んだ。

「レオ!なぜメイドを殺したのですか?!」

「俺はこのメイドを殺していない!それにこのメイドが俺を殺そうと襲ってきたのだ!!」

皇太子レオがどんなに訴えても、城の人間は信じようとはしなかった。それがフローレンスの策略であることを知っているのは極僅かな人間だけである。

"メイド殺しの皇太子"
誰もがそれを事実と考え、残虐な皇太子としてレオを見る。

レオは自分を殺そうとする継母フローレンスから、必死で身を守っているだけだというのに。

「俺は、誰も殺していない!!」

レオの言葉は、フローレンスによってもみ消されてしまう。寝たきりの父に代わり、ハリバート国で最も権力を握っているのはフローレンスだった。

(どうせ、誰も俺の言葉を信じない。)

レオは全てを諦めていた。フローレンスはレオを殺し、実の息子であるアイビルを皇太子にしようと目論んでいるのだ。

(いつかあいつに殺されてしまうのだろう。)

そんなことを考えている間に、ゆっくりと扉が開き、一人の女性が部屋に入ってきた。

「わ、わたくし、皇太子様の婚約者となりましたオリビア・ジェームズと申します、。」

部屋に入ってきたオリビアを見て、レオは目を疑った。綺麗な長い黒髪に、月のように輝く金色の瞳。

もう二度と会わないと誓ったはずの親友の姿がそこにはあった。

(なぜ、、オリィがここに、、、。)

オリィとは、オリビアの愛称である。レオの姿はオリビアが知るかつての姿とは大きく異っている。

(オリィを危険に晒すわけにはいかない。)

レオとオリビアが会っていたのは10年前。しかもレオはドレスで妹のふりをし、女の子としてオリビアに接していた。オリビアはレオの正体に気がついていないが、それは当然である。

「出ていけ。」

レオはオリビアに向かって言い放った。

「聞こえなかったのか?オリビア・ジェームズ。お前とは婚約破棄する。荷物をまとめて今すぐにこの城から出ていけ。」

オリビアはゆっくりとレオを見上げた。その手は微かにふるえているが、レオから目をそらさなかった。

「嫌です。」

レオは激しく動揺して、懐に差した剣に手をかけた。

(なぜだ?!オリィは俺の噂を知らないのか?!)

「許さぬ!」

レオは懐から剣を抜き、オリビアに向けた。行動とは裏腹に、レオの心の中はオリビアへの親愛の気持ちでいっぱいだった。

(俺から逃げてくれ。オリィ。)

剣に驚いたのか、オリビアは尻もちをついてレオを見上げた。

そして、言った。

「婚約破棄する前に、、、私をお飾りの婚約者にしてください、、、!」

(は、、、?)

レオは動揺を悟られないようオリビアを睨みつけた。オリビアは帰る場所がないのだと涙ながらに語り、レオに嘆願した。

(どういうことだ、、、?オリビアは名家の令嬢のはずだが?)

「わっ、私には、レオ様がそんなに恐ろしい人には見えませんっ!なんでもしますから、私にご飯と寝床をください!!」

(オリィの身に何があったのだ、、、?)

本当ならば、お飾りの妻などではなく友達として、楽しく語らいたかった。

「愛してほしい、なんて、絶対に言いませんから!!」

オリビアの言葉に、胸が締め付けられる。

(オリビアにそんな言葉を言わせたのは誰だ?何があったのだ?)

ーカラン

レオは右手に持っていた剣を手放した。

「そこまで言うなら、"お飾り婚約者"とやらにしてやる。」

「ほ、ほんとですか?!」

「ただし、お前が住むのは城の宮殿ではなく馬小屋だ。日中も馬術師として馬の世話をしてもらう、それでもいいならこの城においてもいいぞ?」

(ここまで言えば逃げ出すだろう。)

だが、オリビアは表情を緩ませ、少し笑った。

「良いんですか?!」

まさか、オリビアが了承するなんておもってもいなかったのだ。レオは激しく動揺し、頭を押さえた。

(どうすればいい?!)

だが、動揺している間にオリビアは話を進め、結局オリビアを馬小屋で住まわせることになってしまった。


  ◇◇◇
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