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5.婚約者の寝床?!
しおりを挟むオリビアが皇太子レオの部屋に入ってから1時間後、オリビアは一人部屋から出てきた。
長い黒髪はオリビアの表情を隠していて、彼女がどんな表情をしているのか、城の人々には分からなかった。
ーともかく、生きて部屋をでられてよかったね。
ーもう今日のうちに逃げ出すんじゃないか?
城の人間は好き勝手にオリビアについて囁きあった。耳の良いオリビアにはこれらの会話が全て届いているとも知らずに。
「行くぞ。」
オリビアが部屋から出てから数分後、皇太子レオも姿を現したので、人々は大変驚いていた。
普段、王の部屋から滅多に出てこないレオが不気味な婚約者のために、わざわざ時間を使うことに驚きを隠せなかったのだ。
「レオ様!」
オリビアは小さく皇太子の名前を呼び、その後をついていく。それだけで、城の中に大きなざわめきが走った。
ーなんて命知らずな令嬢なの?
ーなぜ、皇太子は部屋から出てきたの?
城の人間はこっそりと、オリビアとレオのあとを追った。
皇太子レオが婚約者オリビアを連れて行った先は、城の外れにある馬小屋であった。そこでは一人の老人とその娘がひっそりと馬を世話して暮らしている。
「今日からここが、お前の寝床だ。」
皇太子レオの言葉を聞いて、あるものは慄き、あるものは嘲笑した。裕福な家で育ったオリビアにとって、到底受け入れられるものでは無いはずだ。
「かしこまりました。」
オリビアは従順に頷いた。
ーいくら無気味な婚約者であっても馬小屋で生活させるなんて、皇太子は酷いことをなさる。
オリビアはすぐにでも、城を逃げ出すだろうと皆が思っていた。その日のうちにオリビアは、綺麗なドレスから、小汚い作業着に着替えさせられたのである。
ー可哀そうで、無気味なオリビア
城の人間の考えに反して、オリビアの表情は明るかった。もっとも、その表情は黒い髪に隠れて見ることはできないのだが。
◇◇◇
(これで、無事、毎日のご飯にありつけるわ!!)
オリビアは案内された部屋で、両手をあげて喜んでいた。一時間の話し合いの間に、レオは労働の対価として、食事を提供することを約束してくれたのであった。
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