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6.一緒に旅をしよう
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(きっとなんとかなるわ。何があっても、乗り越えてきたじゃない。)
古いベットの上に座り、私は金色の宝石を両手に挟んで祈った。
(この宝石が私を守ってくれますように。)
これまでの人生は、皆が想像するよりずっと過酷なものだった。
◇◇◇
"二度も婚約破棄された役立たずで不気味な令嬢"
それが私、オリビア・ジェームズ。
由緒正しきオリビア家の次女で、周りからは何不自由ない生活を送っていると羨ましがられていた。だけど、現実は違う。
母であるランナは私が幼い間に死んでしまって記憶にすらない。父は、誰よりも私に冷たかった。
『姉のビアンカを見習え!!』
父の口癖だった。何度言われたかもう数えきれない。
美しく、賢く、優しい。
三拍子揃った姉は、皆の人気者。
一方の私は、
不気味で、頭が悪く、要領が悪かった。
社交界ではまともに友人を作ることができずに、パーティではドジばかり。
「私に恥をかかせないでちょうだい。」
ある日のパーティで、思い切りお皿をひっくり返した私を、ビアンカは冷たい目で睨みつけた。
(ごめんなさい、お姉様。)
おまけに私は五感が鋭すぎる。
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
これらの感覚が鋭いことは、貴族の令嬢には何の役も立たなかった。
「お父様、、このお家の匂いがどうしても気持ち悪い。お外に出てもいい?」
父の友人の家に招かれたとき、どうしても耐えきれなくて父に頼んだことがある。
「我慢しろ!!」
父に怒鳴りつけられた一時間後には、私は貧血になって卒倒していた。次の日は一日押し入れの中に閉じ込められ、何も食べ物を与えて貰えなかったのだ。
(できるだけ人と関わらないように、一人でいよう。そうしたら、誰にも迷惑をかけずに済む。)
次第に私は、家に引きこもって本ばかり読むようになる。だが、どれだけ気をつけてもドジはするし、苦手な音や匂いには耐えきれなかった。
「お前の場所は押入れだ!!」
何かヘマをすると、すぐに父は私を押し入れの中に閉じ込めた。空腹は苦しかったが、次第に押し入れの中は、私の唯一の居場所になっていった。
(綺麗。)
寂しくなると私はいつも、レオナからもらった金色の宝石を見つめた。
『お月様みたいで、綺麗なオリィの目と同じ色だよ。』
いつかまたレオナに会いたい。それが唯一の心の支えだった。
◇◇◇
13歳になったある日、耐えきれなくなった私は家出を決行した。これまで溜め込んだお小遣いと僅かな食料を手に、裏山からこっそりと家を抜け出したのだ。
(隣国に行こう。もしかしたらそこにレオナもいるかもしれない。)
決意を胸に家を飛び出したが、13歳の少女が一人で隣国に行けるはずは無かった。
「もう、無理、、、。」
私は、道の途中の森の中で迷子になってしまう。空腹は限界に達していたし、足ももう動かない。ついに力なく倒れ込んだとき。
「どうした、お嬢ちゃん。だいじょうぶか?」
偶然森を通りかかり、私を見つけてくれたのは大陸移動医療団の人々だった。
「ここにいさせて、、、。家には帰りたくないの、、、!」
それから1年間、私は医療団のメンバー達と一緒に生活することになった。医療団は各国から集まった有志の医者たちによって結成されている。医療環境が整っていない村を周り、無償で診察をしているのだという。
「いいよ。一緒に旅をしよう。オリビア。」
彼らは私のことを、自分たちの子供のように可愛がってくれた。
「オリィは耳が良いから助かるよ!おかげで危険な動物からすぐ逃げられる。」
「オリィは果物を見つけるのが上手ね!鼻が効いて羨ましいわ!」
ジェームズ家では、誰も褒めてくれなかった私の敏感さを、医療団のメンバーは素敵な特徴として、褒め称えてくれた。
(私もいつか、医師になりたい。)
医療団の皆は、それまで押し入れにしか行く宛が無かった私に、居場所をくれた。一生、彼らと共に暮らそうと思っていたのだが、、、。
1年後、居場所を突き止めた父が、私を連れ戻しに来た。
「アレキサンドル家のガリクと結婚しろ!!これは命令だ!!」
◇◇◇
古いベットの上に座り、私は金色の宝石を両手に挟んで祈った。
(この宝石が私を守ってくれますように。)
これまでの人生は、皆が想像するよりずっと過酷なものだった。
◇◇◇
"二度も婚約破棄された役立たずで不気味な令嬢"
それが私、オリビア・ジェームズ。
由緒正しきオリビア家の次女で、周りからは何不自由ない生活を送っていると羨ましがられていた。だけど、現実は違う。
母であるランナは私が幼い間に死んでしまって記憶にすらない。父は、誰よりも私に冷たかった。
『姉のビアンカを見習え!!』
父の口癖だった。何度言われたかもう数えきれない。
美しく、賢く、優しい。
三拍子揃った姉は、皆の人気者。
一方の私は、
不気味で、頭が悪く、要領が悪かった。
社交界ではまともに友人を作ることができずに、パーティではドジばかり。
「私に恥をかかせないでちょうだい。」
ある日のパーティで、思い切りお皿をひっくり返した私を、ビアンカは冷たい目で睨みつけた。
(ごめんなさい、お姉様。)
おまけに私は五感が鋭すぎる。
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
これらの感覚が鋭いことは、貴族の令嬢には何の役も立たなかった。
「お父様、、このお家の匂いがどうしても気持ち悪い。お外に出てもいい?」
父の友人の家に招かれたとき、どうしても耐えきれなくて父に頼んだことがある。
「我慢しろ!!」
父に怒鳴りつけられた一時間後には、私は貧血になって卒倒していた。次の日は一日押し入れの中に閉じ込められ、何も食べ物を与えて貰えなかったのだ。
(できるだけ人と関わらないように、一人でいよう。そうしたら、誰にも迷惑をかけずに済む。)
次第に私は、家に引きこもって本ばかり読むようになる。だが、どれだけ気をつけてもドジはするし、苦手な音や匂いには耐えきれなかった。
「お前の場所は押入れだ!!」
何かヘマをすると、すぐに父は私を押し入れの中に閉じ込めた。空腹は苦しかったが、次第に押し入れの中は、私の唯一の居場所になっていった。
(綺麗。)
寂しくなると私はいつも、レオナからもらった金色の宝石を見つめた。
『お月様みたいで、綺麗なオリィの目と同じ色だよ。』
いつかまたレオナに会いたい。それが唯一の心の支えだった。
◇◇◇
13歳になったある日、耐えきれなくなった私は家出を決行した。これまで溜め込んだお小遣いと僅かな食料を手に、裏山からこっそりと家を抜け出したのだ。
(隣国に行こう。もしかしたらそこにレオナもいるかもしれない。)
決意を胸に家を飛び出したが、13歳の少女が一人で隣国に行けるはずは無かった。
「もう、無理、、、。」
私は、道の途中の森の中で迷子になってしまう。空腹は限界に達していたし、足ももう動かない。ついに力なく倒れ込んだとき。
「どうした、お嬢ちゃん。だいじょうぶか?」
偶然森を通りかかり、私を見つけてくれたのは大陸移動医療団の人々だった。
「ここにいさせて、、、。家には帰りたくないの、、、!」
それから1年間、私は医療団のメンバー達と一緒に生活することになった。医療団は各国から集まった有志の医者たちによって結成されている。医療環境が整っていない村を周り、無償で診察をしているのだという。
「いいよ。一緒に旅をしよう。オリビア。」
彼らは私のことを、自分たちの子供のように可愛がってくれた。
「オリィは耳が良いから助かるよ!おかげで危険な動物からすぐ逃げられる。」
「オリィは果物を見つけるのが上手ね!鼻が効いて羨ましいわ!」
ジェームズ家では、誰も褒めてくれなかった私の敏感さを、医療団のメンバーは素敵な特徴として、褒め称えてくれた。
(私もいつか、医師になりたい。)
医療団の皆は、それまで押し入れにしか行く宛が無かった私に、居場所をくれた。一生、彼らと共に暮らそうと思っていたのだが、、、。
1年後、居場所を突き止めた父が、私を連れ戻しに来た。
「アレキサンドル家のガリクと結婚しろ!!これは命令だ!!」
◇◇◇
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