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15.どこに連れて行くんですか?
しおりを挟む窓からの月明かりで、レオ様の銀色の髪が照らされた。
「レオ様!」
「声を出すな。」
レオは私をにらみつけるとゆっくりとベットに覆いかぶさった。
「悪く思うなよ。」
そう言うとレオは私の両腕を掴み縄で縛りつけた。
「え?!」
両手を拘束された私は、訳が分からなくてまばたきを繰り返した。
「痛いか?」
私を睨みつけたまま、レオは尋ねる。
縛られた縄は力を入れたら解けるのでは無いかと思うほど緩い。
「いいえ。今にも取れそうです。」
「そうか。足も縛られたくなかったら暴れるなよ。」
何が起こっているのだろう。レオの行動はいつも訳がわからない。表情とは裏腹に、その行動はいつも優しい。
(きっと何か理由があるんだ。)
「分かりました。」
大人しく頷くと、レオは私のことをゆっくりと抱き上げた。
(うわっ。)
レオの綺麗な顔が近づいて、どきまぎしてしまう。
「殺されたくなかったら、声を出すなよ。」
低い声でレオが言う。
(貴方は私を絶対に殺さないでしょう?)
「はい。」
そしてレオは私を持ち上げて、馬小屋を出た。深夜とはいえ、場内には兵たちが各所に待機している。
ー皇太子と、婚約者?
ー皇太子は何をするつもりなんだ?
手を縛られレオに連れて行かれる私を兵たちがちらちらと見る。
それらの視線を意に介すことなく、レオは城の中に入っていった。
(どこに連れて行かれるんだろう?)
腕は縛られているが、レオが慎重に運んでくれているためか、妙に居心地が良い。
「おい、オリビア。」
「は、はい!」
私ははっとして目を覚ました。レオに運ばれている間にうっかり眠ってしまったらしい。
(ここは?)
私は小さな部屋に運び込まれていた。部屋の中央には、高級なベットが一つぽつんと置かれている。
レオはベットの上に私をそっとおろした。
(ふっかふかだ。)
やはり、ベットは非常に柔らかく最高級のものだと分かる。
「余計な真似をしたら、どうなるかわかってるな。大声を出したり、暴れたりしたら、お前の命は保証しない。」
レオは私を見下ろし鋭い声で言った。脅しているつもりなのだろう。
(こんなふかふかのベットの上で言われても、怖くないですよ。)
「分かりました。」
レオは私を睨みつけたまま言葉を続ける。
「ずいぶん落ち着いているが、命の保証は無いと言っている。俺になにをされるか、分からないのだぞ?」
「そう、ですね。」
つまりレオは何が言いたいのだろうか。レオは私に背を向けた。
「本当は腕の縄は取るつもりだったが気が変わった。そのまま、一晩恐怖に打ち震えていろ。」
そう言うとレオは部屋を出ると、外から鍵をかけた。
ガチャン
どうやら私はレオに閉じ込められてしまったようだ。ベットの上で体を起こすと簡単に縄が外れた。
(別に自分で縄を外そうとしたわけじゃないから、良いよね。)
私は大きく伸びをした。なんだかよくわからないが、とにかくベットのグレードはあがった。
(よく眠れそう。)
◇◇◇
次の日、城の中は大騒ぎになっていた。
『皇太子レオが婚約者オリビアを殺した』
そんな噂がお城の中を駆け巡っていたのだ。
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