【完結】婚約破棄を望む王子様にお飾りの正妃にして欲しいと頼んだはずですが、なぜか溺愛されています!

五月ふう

文字の大きさ
15 / 34

15.どこに連れて行くんですか?

しおりを挟む

窓からの月明かりで、レオ様の銀色の髪が照らされた。

「レオ様!」

「声を出すな。」

レオは私をにらみつけるとゆっくりとベットに覆いかぶさった。

「悪く思うなよ。」

そう言うとレオは私の両腕を掴み縄で縛りつけた。

「え?!」

両手を拘束された私は、訳が分からなくてまばたきを繰り返した。

「痛いか?」

私を睨みつけたまま、レオは尋ねる。
縛られた縄は力を入れたら解けるのでは無いかと思うほど緩い。

「いいえ。今にも取れそうです。」

「そうか。足も縛られたくなかったら暴れるなよ。」

何が起こっているのだろう。レオの行動はいつも訳がわからない。表情とは裏腹に、その行動はいつも優しい。

(きっと何か理由があるんだ。)

「分かりました。」

大人しく頷くと、レオは私のことをゆっくりと抱き上げた。

(うわっ。)

レオの綺麗な顔が近づいて、どきまぎしてしまう。

「殺されたくなかったら、声を出すなよ。」

低い声でレオが言う。

(貴方は私を絶対に殺さないでしょう?)

「はい。」

そしてレオは私を持ち上げて、馬小屋を出た。深夜とはいえ、場内には兵たちが各所に待機している。

ー皇太子と、婚約者?

ー皇太子は何をするつもりなんだ?

手を縛られレオに連れて行かれる私を兵たちがちらちらと見る。

それらの視線を意に介すことなく、レオは城の中に入っていった。

(どこに連れて行かれるんだろう?)

腕は縛られているが、レオが慎重に運んでくれているためか、妙に居心地が良い。

「おい、オリビア。」

「は、はい!」

私ははっとして目を覚ました。レオに運ばれている間にうっかり眠ってしまったらしい。

(ここは?)

私は小さな部屋に運び込まれていた。部屋の中央には、高級なベットが一つぽつんと置かれている。

レオはベットの上に私をそっとおろした。

(ふっかふかだ。)

やはり、ベットは非常に柔らかく最高級のものだと分かる。

「余計な真似をしたら、どうなるかわかってるな。大声を出したり、暴れたりしたら、お前の命は保証しない。」

レオは私を見下ろし鋭い声で言った。脅しているつもりなのだろう。

(こんなふかふかのベットの上で言われても、怖くないですよ。)

「分かりました。」

レオは私を睨みつけたまま言葉を続ける。

「ずいぶん落ち着いているが、命の保証は無いと言っている。俺になにをされるか、分からないのだぞ?」

「そう、ですね。」

つまりレオは何が言いたいのだろうか。レオは私に背を向けた。

「本当は腕の縄は取るつもりだったが気が変わった。そのまま、一晩恐怖に打ち震えていろ。」

そう言うとレオは部屋を出ると、外から鍵をかけた。

ガチャン

どうやら私はレオに閉じ込められてしまったようだ。ベットの上で体を起こすと簡単に縄が外れた。

(別に自分で縄を外そうとしたわけじゃないから、良いよね。)

私は大きく伸びをした。なんだかよくわからないが、とにかくベットのグレードはあがった。

(よく眠れそう。)


  ◇◇◇

次の日、城の中は大騒ぎになっていた。

『皇太子レオが婚約者オリビアを殺した』

そんな噂がお城の中を駆け巡っていたのだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

ありがとうございました。さようなら
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。 ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。 彼女は別れろ。と、一方的に迫り。 最後には暴言を吐いた。 「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」  洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。 「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」 彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。 ちゃんと、別れ話をしようと。 ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

別れたいようなので、別れることにします

天宮有
恋愛
伯爵令嬢のアリザは、両親が優秀な魔法使いという理由でルグド王子の婚約者になる。 魔法学園の入学前、ルグド王子は自分より優秀なアリザが嫌で「力を抑えろ」と命令していた。 命令のせいでアリザの成績は悪く、ルグドはクラスメイトに「アリザと別れたい」と何度も話している。 王子が婚約者でも別れてしまった方がいいと、アリザは考えるようになっていた。

婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。 だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。 もしかして、婚約破棄⁉

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

処理中です...