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4.いつもと同じ王子様
しおりを挟むミラント城一階の隅にある、階段下の小さな部屋。そこが、13歳からココが一人で暮らす場所だった。
10歳の時ウォーセル公爵家を追い出され、使用人の一人に預けられたココだったが・・・ココの養母となった女性は、決してココを可愛がってくれなかった。おそらく、お金をもらうためだけに、ココをの養母となることに了承したんだろう。
”バイバイ。ココちゃん。”
3年も経つと養母の女性はどこかに姿を消してしまった。
”今日からこの部屋が君の暮らす部屋だ”
そう言って割り当てられたのが、この階段下の部屋だった。考えられないほどの冷遇。きっとそれは、国王夫妻からの、自分から城を出ていけという隠されたメッセージ。
それに気が付かないふりをして、ココはミラント城にとどまり続けた。
”もっといい部屋で暮らせるように、父上に頼んでくるよ!”
ステフはそう言ってくれたけれど、
”だいじょうぶよ。私、この部屋が好き”
ココは笑顔でステフの提案を拒否した。
自分を認めてくれない国王夫妻へのせめてもの抵抗だったのだ。
”わかったその代わり・・・”
ココが階段下の部屋で暮らすことを了承する代わりにステフがくれたのは、銀色の鍵。
”これは?”
”秘密の部屋の鍵だよ。寂しくなったらいつでもおいで”
◇◇◇
中庭から続く階段から、地下に降りると人影は少ない。地下の部屋には武器や非常食の倉庫となっていて、普段人が立ち入ることはなかった。ココは地下道を進み、部屋の鍵を開ける。
「おかえりココ。早かったね。」
そこには最愛の婚約者であるステフが笑顔で待っていた。使用人に過ぎないココとステフが人目にさらされずにあえる唯一の部屋。ココにおかえりと言ってくれるのは、ステフだけだった。
「ただいま。」
いつもと変わらないステフの穏やかな笑顔に、少し安心する。やっぱり好きな人ができた、なんて嘘だったんじゃないか、そんな期待が胸をよぎる。
「ココが好きなお菓子を取り寄せたんだ。一緒に食べよう?」
ステフがそわそわと立ち上がり、ココから目をそらした。
「うん。」
やっぱり・・・婚約破棄の時が来たのかな。ステフの後ろ姿を見つめていると、ココの胸がひどく痛んだ。
◇◇◇
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