【完結】好きな人ができたら婚約破棄しよう。それは王子様と公爵令嬢が結んだ約束でした。一人ぼっちの公爵令嬢は今日も王子様を待っています

五月ふう

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12.あんな男、諦めなよ

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ステフからココを引き離したルカは焦っていた。

ココはぼんやりとどこかを見つめている。ルカが止めなくては、ココはステフに告白していたかもしれない。それにステフも・・・きっとまだココをあきらめていない。

―――二人は気持ちを伝えあってしまうんじゃないか・・・

「ココ。」

自分を見てほしくて、ルカはココの名前を呼ぶ。

「なぁに?」

ルカを振り向いたココの顔は、さっきステフに向けていた弱弱しい顔ではない。

「俺を、好きになってよ。ココ。」

いつの間にか、ルカは本気でココのことを好きになっていた。ココの傍にいると、ルカは失ったものを感じずにいられる。ココは道を踏み外していなかった自分自身だから。

ココは戸惑いの表情を浮かべ、ルカを見つめた。

「そう言ってくれて嬉しいわ・・・ルカ。でも・・・。」

ココの気持ちを乱すのは、ルカではなくいつだってステフ。

「あんな男、諦めなよ。」

「そう・・・よね・・・。」

ココがルカを本気で好きになってくれれば・・・アリアはココを売り飛ばそうとはしないかもしれない。
そんな気持ちを抱え、家に帰るとアリアから呼び出しがかかっていた。



    ◇◇◇


ボストール家の屋敷。

「ココを隣国に売り飛ばす準備は整ったわ!!」

屋敷につくと、アリアは狂気じみた笑みを浮かべていた。

「準備・・・俺は何をしたらいいんですか?」

「セブンリ国の商人と話はついたの。ちょうど20歳くらいの女を探していたんですって。ふふふ。高く売れそうで嬉しいわ!!ルカはあの女を指定された馬車に乗せたらいいだけ。そうしたらすべてうまくいくわ!」

隣国で研究が続けられるかもしれない。その話にココは興味を持っていた。話を聞きに行く。そんな風に言えば、彼女を馬車に乗せることはできるだろう。

「ココはどうなるんですか・・・?」

アリアが答えないだろうとわかっている。それでも、聞かずにはいられなかった。

「売られた女がどうなるかなんて、知らないわよ!!」

癇癪をおこして、アリアが暴れる。
ココには家族がいない。ココがいなくなっても、彼女を心配してさがす人間はいない・・・だろう。

「そこまでしなくちゃいけないんですか?あんたはステフを手に入れたいだけなんでしょう?」

ステフとココはもうすでに婚約破棄している。それなのにこれほどまでにココを排除したがるのは、アリアも心のどこかでわかっているからだろう。

ステフの心はココに囚われたままだと。そしてそれはココも・・・。

「あの女が気に食わないのよ!
寄生虫みたいにステフにまとわりつくあの女がね!」

―――どうしたらいい?

ルカはココを売り払いたくなかった。だが・・・ルカに唯一残された家族の命を握っているのは、ボストール家だった。ルカひとりでは、妹の医療費を払うことができない。

「俺が・・・ココを隣国に連れてきます。だから、売り払うのはやめませんか。」

拳を握り締めて、アリアに懇願する。

「ばーか!!!!詐欺師のくせに!!!あんな女にたぶらかされやがって!!!」

アリアは半狂乱になって叫び、髪の毛を引きちぎった。

「今すぐにでもあんたの妹の命を止めたっていいのよ?!いい?!あんたが自分の妹を殺すんだからね!!!」

「・・・わかりました。貴方の命令に従います。」

きっとルカが命令に背けば、アリアは容赦なく妹の命を奪うだろうと、ルカはわかっていた。



    ◇◇◇
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