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魔女は空中にハートを書いて、人差し指でツンと押した。
「恋の呪い。」
ランは顔をしかめた。
「何ですか?それは。」
「いつか、あなたが恋をして、誰かを好きになったとしても、決して好意を伝える言葉を発することはできないわ。もしも呪いに逆らって、愛の言葉を誰かに伝えようとしたとき、あなたは消えてしまうでしょう。」
(魔女らしい呪いだ。)
魔女は人一倍、愛に飢えている。手に入らないものを手に入れるために、今の体も手に入れたのだ。それでも、魔女の欲しいものは手に入らない。
だからこそ、魔女はランに嫌がらせをするのだ。
「恋の呪い…ははっ。ずいぶんメルヘンだ。もう500年は生きているはずですよね?」
「何よっ。今はそうやって言ってるけど、この呪いは強力よ?ランだって、いつかわかるわぁ。」
「ま、いいです。その呪いを受け入れたら、マレー君の呪いを解いてくれるんですよね?」
「ええ、もちろんよぉ。」
魔女は酷く楽しそうにしている。
(愛の言葉…ね…。そんなもの、本当に私に必要なんだろうか?)
「貴女は嘘つきですから、呪いの交換は同時にお願いします。」
「まぁ、あたしとランの仲だってのに、疑うのぉ?」
「…勘弁してください。」
ランは両手を合わせて、魔法陣を作り出す。
「それじゃあ、行くわよ。」
「はい、どーぞ。」
(恋の、呪いねぇ。)
魔女は呪文を唱えると、マレーから緑の刻印が浮かび上がる。
「交換よ♪」
魔女の放った緑の刻印が、ランに向かってくる。その緑の光を全身で受け止めながら、ランはニヤリと笑った。
(ま、呪いなんて受けるつもりないですけどね?)
「さよなら、魔女さん。」
そうランがつぶやくと、ランの左の肺が金色に光って、緑の光が魔女に向かって襲いかかった。
「きゃぁぁぁ~~!!なんでぇぇぇ~~~!!」
自らが放った緑の光に襲われて、魔女は姿を消した。
「逃げちゃいましたか…。」
(ま、しばらくは姿を現さないでしょう。)
右腕はまだ緑色の光を放っている。袖をめくって右腕を見てみると、そこには小さな緑のハートが残っていた。どうやら恋の呪いを避けそこなったらしい。
(大した呪いでもないし、まあいいか。)
「ししょう…。」
先に目を覚ましたのは、セヨンテだった。出会った時と同じく、セヨンテの体はほとんど透けている。
「おはよう、セヨンテ。気分はどうですか?」
「最悪です。だって…僕は…魔女に生み出されたマレーの分裂体だったんですもん。」
セヨンテは口を尖らせ、目からポロポロと涙を流した。
「マレーの呪いが解けた。僕は、マレーに戻る。師匠とも、お別れです。」
「そう、かもしれないです。ある意味では。」
「ある意味では?」
ランはセヨンテの額にそっとキスした。
「確かにセヨンテは、最初はマレーの感情の一部から生み出されたものだったかもしれない。だけど、この半年間、私の弟子だったセヨンテは、セヨンテだけのものですよ。」
ランはにっこりと笑った。
「一度マレーと一つになった後、戻っておいでセヨンテ。そのための力は、貸してあげますから。」
「師匠…!約束ですよ?また、会えますよね?」
「うん、約束です。」
その言葉と共に、セヨンテはキラキラの光になって、マレーの中に吸い込まれていった。
「恋の呪い。」
ランは顔をしかめた。
「何ですか?それは。」
「いつか、あなたが恋をして、誰かを好きになったとしても、決して好意を伝える言葉を発することはできないわ。もしも呪いに逆らって、愛の言葉を誰かに伝えようとしたとき、あなたは消えてしまうでしょう。」
(魔女らしい呪いだ。)
魔女は人一倍、愛に飢えている。手に入らないものを手に入れるために、今の体も手に入れたのだ。それでも、魔女の欲しいものは手に入らない。
だからこそ、魔女はランに嫌がらせをするのだ。
「恋の呪い…ははっ。ずいぶんメルヘンだ。もう500年は生きているはずですよね?」
「何よっ。今はそうやって言ってるけど、この呪いは強力よ?ランだって、いつかわかるわぁ。」
「ま、いいです。その呪いを受け入れたら、マレー君の呪いを解いてくれるんですよね?」
「ええ、もちろんよぉ。」
魔女は酷く楽しそうにしている。
(愛の言葉…ね…。そんなもの、本当に私に必要なんだろうか?)
「貴女は嘘つきですから、呪いの交換は同時にお願いします。」
「まぁ、あたしとランの仲だってのに、疑うのぉ?」
「…勘弁してください。」
ランは両手を合わせて、魔法陣を作り出す。
「それじゃあ、行くわよ。」
「はい、どーぞ。」
(恋の、呪いねぇ。)
魔女は呪文を唱えると、マレーから緑の刻印が浮かび上がる。
「交換よ♪」
魔女の放った緑の刻印が、ランに向かってくる。その緑の光を全身で受け止めながら、ランはニヤリと笑った。
(ま、呪いなんて受けるつもりないですけどね?)
「さよなら、魔女さん。」
そうランがつぶやくと、ランの左の肺が金色に光って、緑の光が魔女に向かって襲いかかった。
「きゃぁぁぁ~~!!なんでぇぇぇ~~~!!」
自らが放った緑の光に襲われて、魔女は姿を消した。
「逃げちゃいましたか…。」
(ま、しばらくは姿を現さないでしょう。)
右腕はまだ緑色の光を放っている。袖をめくって右腕を見てみると、そこには小さな緑のハートが残っていた。どうやら恋の呪いを避けそこなったらしい。
(大した呪いでもないし、まあいいか。)
「ししょう…。」
先に目を覚ましたのは、セヨンテだった。出会った時と同じく、セヨンテの体はほとんど透けている。
「おはよう、セヨンテ。気分はどうですか?」
「最悪です。だって…僕は…魔女に生み出されたマレーの分裂体だったんですもん。」
セヨンテは口を尖らせ、目からポロポロと涙を流した。
「マレーの呪いが解けた。僕は、マレーに戻る。師匠とも、お別れです。」
「そう、かもしれないです。ある意味では。」
「ある意味では?」
ランはセヨンテの額にそっとキスした。
「確かにセヨンテは、最初はマレーの感情の一部から生み出されたものだったかもしれない。だけど、この半年間、私の弟子だったセヨンテは、セヨンテだけのものですよ。」
ランはにっこりと笑った。
「一度マレーと一つになった後、戻っておいでセヨンテ。そのための力は、貸してあげますから。」
「師匠…!約束ですよ?また、会えますよね?」
「うん、約束です。」
その言葉と共に、セヨンテはキラキラの光になって、マレーの中に吸い込まれていった。
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