【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。

五月ふう

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2.一度目の婚約破棄は前世でした

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私がシアラに転生する直前の記憶。
それは散々なものだった。

日本、東京都某高級レストラン。

私、渋川かなえは婚約者である鮎川とディナーを楽しんでいた。その日は私の33歳の誕生日だった。

デザートを食べ終えフォークを皿に置いた鮎川は、にっこり笑って言った。

「今日で会うのは最後にしよう。」

鮎川の言葉で、一瞬頭が真っ白になる。

「なんで、、、?
 私達、婚約してるのに、、、?」
 
鮎川と付き合って1年、婚約して1ヶ月が経つ。そろそろ式場の手配をしようと動き始めていたときだった。

「だってお前、めんどくさいんだもん。」

悪びれもなく鮎川が言い放つ。

「最低!」

めんどくさい女。それは私の人生にずっとつきまとってきた言葉だ。

「いいだろ。かなえは金もあるんだし。将来安泰。羨ましいぜ。」

鮎川の言葉は私を容赦なく傷つける。

最高学歴に大手企業就職。理論武装のめんどくさい女。それが周囲の人が思う私の人物像だった。

「ふざけないでよ!そんな理由で婚約破棄なんて、あんまりにも酷すぎるわ!」

「婚約なんて、かなえが勝手に進めたんじゃないか。」

平然と鮎川が答える。

確かに私が焦って進めた部分はある。だけど、33歳の私と一年も付き合ったのだから、婚約は当然の流れだと思っていた。

「待ってよ!貴方のこと訴えるわよ!!」

可愛げが無いセリフだと分かっている。それでも、これまで鮎川の為に費やしてきた時間とお金はそう簡単に諦められるものでは無いのだ。

「出来るもんならな。お会計はいつもの通り頼んだよ。」

鮎川とのデートでお会計をするのはいつも私だった。より稼ぎが多いほうが払うことが平等。その鮎川の主張のせいだ。

「ちょっと待ってよ!!」

立ち上がった私を振り向きもせずに、鮎川はひらひらと手を振った。

鮎川の腕には私がプレゼントした高級時計が巻かれている。

「嘘でしょ、、、?」

一人高級レストランに取り残された私は、頭を抱えた。


  ◇◇◇


次の日、私は鮎川ともう一度話し合おうと何度も連絡をしたが、電話は繋がらなかった。

「冗談じゃないわよ、、、。」

鮎川に教えてもらった彼の職場まで行ってみたが、受付の女性は無表情で言った。

「鮎川という名前の人間は、弊社には在籍しておりません。」

鮎川が住むアパートは解約されており、完全に足取りを見失ってしまったのだった。

(貸したお金はどうなるの・・・?)

私は新事業を立ち上げたばかりでお金が無いという鮎川に200万円を貸している。

「騙された、、、の?」

一日中鮎川を探し続けて、気がつけば22時を過ぎている。まだ今日は何も食事を取っていないが、全くお腹は空かない。

(嘘だ、、、。)

自分のプライドが邪魔して、現実を受け止め切れなかった。

よろよろと自宅に帰る私の前を小学生の少女が歩いている。少女は体より大きく重たそうなランドセルを背負って、目を擦っていた。

(塾帰りかな。)

真面目そうなおさげ頭の少女の姿は、かつての自分を思わせた。友達と遊ぶことなく、ひたすら勉強に忙殺された幼少期。両親は仕事人間で、塾の迎えに来てくれたことは一度も無かった。

(だいじょうぶかな?)

階段を降りる少女はぐらぐらと左右に揺れている。相当眠いのだろう。

「あぶない!!」

少女は足元の石につまづいて、大きくよろけた。

考えている暇は無かった。荷物を放り出して、私は少女の手を掴む。

(お願い!!助かって!!)

少女をぎゅっと抱きしめたまま、階段を転がり落ちた。

ゴロゴロゴロゴロ

一番下まで落ちた。ゆっくりと目を開けると、女の子が必死の形相で私を呼びかけている。

「お姉さん!!お姉さん!!」

体中が痛かった。頭から血が流れているのが分かる。

(私、もう駄目なのかも、、、。)

少女は大粒の涙を流して泣いている。

(せっかく助けられたんだもの。この子には笑顔で生きてほしい。)

私は最後の力を振り絞って、にっこりと笑った。

「しあわせに、なってね。だいじょうぶ、だから、、きにしないで、、、。」

薄れゆく意識の中で私は考えていた。

(次の人生は、どこかの国のお姫様になって、ひたすらにちやほやされたいな、、、。お願いします、神様、、、!)

  ◇◇◇

しかし、目を覚ますとすぐに二度目の婚約破棄をされてしまったのだった。
 
(私、転生しても幸せになれないの?)

こんなはずではなかった。
だって、人生の最後にあんな善行を積んだのだ。

次の人生はイージーハッピーなものになると、思い込んでいた。


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