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6.吸血鬼になりました

学園での変化

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「あ、雪?」

 すっかり寒くなって冬の色も濃くなってきたある日。

 前の学校にいた頃はたまにしか見なかった雪も、山の上にあるこの城山学園ではよく見るものになっていた。


 この雪が降るのもすでに三回目。

 教室の窓から見える校庭にも白く積もってきていた。


「あ、本当だ。でもこの降り方ならあまり積もらないんじゃないかな?」

 私の呟きを聞いたクラスメイトが同じく窓の外を見ながらそう話しかけてくる。

 そういえばこのV生の子は出身が東北だって言ってたなぁ、なんて思い出しながらそのまま会話を続けた。



 学園での私の扱いもまた変わっている。

 まず今まで何もつけていなかったけれど、吸血鬼になってしまったからV生のあかしであるピンをつけるようになった。

 それと、居心地の悪かった学園生活もガラリと変わる。


 裏切り者のように扱われていた私だったけれど、吸血鬼になってしまった上に問題の永人と主従の契約をしたことで、主にV生からの見方が変わった。

 元々V生は“唯一”なら引き離さない方がいいんじゃない?っていう擁護派と。
 違反行為をして学園やハンター協会からも追われているような永人を選ぶなんて認めたくないっていう否定派があった。

 でも後者の否定派も、私と永人が血の契約である主従の誓いをしたことで認める方向に転換したみたい。

 その結果学園で敵のように見られることが無くなった。


 そうなると、H生の態度も変わってくる。

 V生が認める方向になったのに、自分達ばかりが反対してても仕方ない。
 何より守るべき“花嫁”が吸血鬼になってしまったなら、もう自分たちが守らなくてはいけない存在ではなくなったんじゃないか?って。


 そういうわけで、学園内での私への態度が軟化してきた。

 一時期広まっていた私の悪い噂も無くなって来たし、色々あったからか私自身のH生男子への恐怖もいつの間にか無くなっていた。

 だからクラスでもこんな風に気軽に話しかけられるようになってきたんだ。


 今では一部の先生や大人の人が少々反発しているくらいで、生徒たちから否定的な視線や言葉を向けられることはなくなっていた。

 反発している先生たちも、そこは大人。
 表立って何かをしてくる様子はない。


 結果、私の学園生活は平穏を取り戻している――はずだった。


 クラスメイトと話をしていると、放課後で騒がしかった廊下の方が静かになる気配がする。

 最近毎日起こる現象に、私はなんとも言えない気分でその原因が来るのを待った。


「聖良、迎えに来たぜ?」

 ドアのところから顔を出したのは、言葉の通り私を迎えにきた永人だ。


 私の学園生活は比較的平穏ではあるものの、永人はそうもいかなかった。

 永人は現在学園を退学させられている状態。

 だから本当ならこんなふうに学園内に入ってくる事は出来ないんだけれど、私の従者という扱いを利用して毎日こうやって迎えに来ている。


 私はクラスメイトにさよならの挨拶をすると永人のもとへ行った。

「永人、教室まで来なくていいっていつも言ってるでしょう?」

「知るかよ。授業中は離れるの我慢してやってんだ。終わったら近くに来たっていいじゃねぇか」

「いや、でもみんな反応に困っちゃうから……」

 そう言いながら周囲の様子を伺い見る。


 ほとんどの人が口を閉ざして永人に注目していた。

 その様子は腫れ物でも扱うかのよう。

 みんなどう反応していいのか困っている感じだ。


 でもそんな周囲のことなんて永人は気にしない。

「それこそ知るかよ。大体俺はお前の従者だぜ? 本当なら常に近くにいてもいいはずだ」

 それどころかそう言って授業中ですらそばにいようとする。

 周りを気にしなさすぎるのもどうかと思う。


「授業中は絶対にダメ! 集中できなくなりそうだから」

 女子寮に戻ったときと学園の中にいるとき以外はもうずっと一緒にいる状態なのに、これ以上常にそばにいるなんて色んな意味で身が持ちそうにない。

 とにかくダメだってことを伝えたかったのに、永人は何故か意味深な笑みを浮かべる。

「ふぅん……集中できなくなるねぇ……。俺がそばにいたらどうして集中できねぇんだ?」

「へ?」

 どうしてそんな妖しい笑みを浮かべるのか分からなくて戸惑う。


「え? だって、気になるし……」

「それだけかぁ?」

 そう続けて聞いて来る永人は、私の髪をひと房すくってその指に絡ませる。

 笑みだけでなく、その仕草にも妖しさと甘さが出てきて不覚にもドキドキしてしまった。


 いやいや、でもここは人目が……。


「もうその話はいいから! ほら、とにかく帰ろう」

 そう促すのに永人は動いてくれなかった。

「俺の質問に答えてからにしろよ……。なぁ、ホントにそれだけなのか?」

 意地悪な顔で迫ってくる永人にいっそ命令してやろうかと思ったけれど……。


 パコン、と小気味の良い音が彼の頭の辺りから聞こえてきた。

 何かと思ったら、永人の陰から呆れ顔の嘉輪がひょっこり顔を出す。


「みんなが反応に困るから校内でのイチャイチャは止めてくださーい」

 そう言って永人の頭を叩いたらしい紙の筒を自分の肩に当てた。

「チッ……邪魔すんなよ」

 舌打ちと悪態をつく永人。

 でも嘉輪はそれを無視して私をジトリと見た。


「聖良も聖良よ? さっさと“命令”してしまえばいいのに」

「い、今しようとしてたの!」

 言い訳みたいに聞こえると思ったけれど、流されていたわけじゃないと主張する。

 けれど私の言葉にも「はいはい」とテキトーに返事をする嘉輪。


「まあでも丁度良かったわ。話もあるから、一緒に帰りましょう」

 そうして私の主張を聞き流した彼女は、自分のカバンを取ってくるとついてきなさいとばかりに歩き出した。


***

 前を歩いていた嘉輪は校門を出て少ししてから歩調を緩めて私の横に並ぶ。

「……聖良、ごめんね」
「へ? 何、突然」

 いつもより幾分硬い雰囲気だった嘉輪に突然謝られて目をパチパチさせてしまう。


 今日は朝からいつもよりちょっとだけ暗い様子に見えてはいたけれど……。

 まさか謝られるなんて思ってもみなかった。


「いや、仕方なかったとはいえ私の――純血種の血を聖良に入れちゃったでしょう? そのせいで岸と血の契約までしたのに認めない大人たちが出てきてるから……なんか申し訳ないなってのは最近ずっと思ってたんだ……」

 まさかそんな風に考えていたとは思わなくて私は逆に慌ててしまう。

「そんな、気にしないで? あのとき嘉輪がいなかったら私か永人のどちらかが死んでしまってたかもしれないんでしょう?」


 あのとき……シェリーに血を大量に吸われた私は確実に死に向かっていた。

 吸血鬼の血を入れて私自身が吸血鬼になる以外に、その死を回避する方法はなかったんだ。

 そして本当なら、私を“唯一”としている永人が血を入れるのが一番問題がなかった。

 でも、直前に深手を負って血を流した彼が私に血を入れると、今度は永人の方が血が足りなくて死んでしまうというような状況。


 一刻どころか数分が命取りになるような状況だったんだから、あのときは嘉輪以外に私を助けられる人はいなかった。


 どう考えても謝られることじゃない。

「私は本当に感謝してるんだよ? 吸血鬼になって血を飲まなきゃならなくなったし、何だかすごく強くなっちゃったけど……でもそれ以外は普通に人間として生活出来るし」

 そこで私はちょっとだけ永人の方を見て「それに」と続ける。


「永人にあんな顔、させたくなかったし……」

 嫌だ、行くなと悲痛な表情の永人。
 あんな顔をしてほしくなかった。

 私が彼を選んだことを純粋に喜んで、笑ってほしかった。


 それが叶った今はたまにイラっとするニヤニヤ笑いもされるけれど、それでもやっぱりあのときの表情をされるより何倍もマシだ。


 だから、本当に感謝している。
 謝ることなんてない。

 そう伝えた。


「……俺も、そこは感謝してるんだぜ?」

 珍しく永人も嘉輪に感謝の意を示す。

「俺が死んでも聖良を失うよりマシだって思ってたから、聖良に血を入れるのは俺でも良かったと思ってたがよぉ……」

 そこで少し気まずげに視線を逸らす永人。

 もしかして感謝の言葉を口にするのを恥ずかしがっているんだろうか?
 珍しいものを見た。


「でも、聖良が生きて俺が死んだら……こいつの隣には他の男がいたかもしれねぇって思うだけで腹が立つ。だからその……感謝してんだよ」

「岸……」

 永人の珍しい言葉に、嘉輪も目を丸くして驚く。


「……そっか。それなら良かった」

 そう言ってわずかに笑みを浮かべてくれた嘉輪。

 でも、まだ表情が晴れる様子はない。

 どうしたのかと流石に心配になってくる。


「嘉輪?」

 控えめに声を掛けると、困り笑顔が返ってきた。

「それでも、“花嫁”に純血種の血を入れるのはあまり良くない事だったみたいなの」

「え?」

「事情を知ったお父さんから昨日連絡があってね、それは《禁忌》だって言われた」

「禁忌……?」

 禁忌って、まわしくて禁じられていること……だよね?


「うん……それで、実際に聖良に会って状態を把握したいって。今週の土曜日にはこっちに来るらしいから、予定空けといてくれる?」

「う、うん。それは良いんだけど……」


 《禁忌》なんて不安な言葉を口にされて平然としてはいられない。

 もっと詳しく聞きたいけれど、嘉輪もそれ以上は聞いていないらしい。


 嘉輪、だからこんなふうに気落ちしてたんだ。

 それを理解すると自分だけが不安がってちゃダメだと思った。


 不安だし気になるけれど、少なくとも自分の身に何か悪いことが起こっている様子は特にない。
 それに、土曜日にはちゃんと話を聞けるんだ。

 私は待っていればいい。


 でも嘉輪は、その待っている間罪の意識みたいなものを感じてしまっているのかもしれない。


「大丈夫だよ嘉輪。少なくとも私に悪い事が起こっている様子はないし、《禁忌》なんて言っても大した事無いかも知れないでしょ?」

 嘉輪の行動が間違っていたなんて思って欲しく無い。

 少なくとも私と永人は本当に感謝している。


「うん、そうだね……。ありがとう、ちょっと元気出た」

 そう言って笑う表情はまだ心からの笑顔ってわけじゃなさそうだったけれど、さっきよりは明るさを取り戻していた。


「……そういえば岸は毎日迎えに来てるみたいだけれど、気まずいとか思ったりしないの?」

 話もひと段落ついたからか、前から気になっていたらしいことを口にする嘉輪。

 あえて私も聞いたりしていなかったけど……というか、なんとなく予想出来るから聞かなかったのだけど……。


「気まずい? 思わねぇなぁ。周りの目なんか知るかよ、俺は聖良に早く会いてぇだけだ」

 予想通りの言葉に、喜べば良いのか呆れれば良いのか分からなくなる。

 正直呆れるけれど、私も会いたいって気持ちはあるから結局嬉しいって思いが強くなって困るんだ。


 私も結構永人に溺れちゃってる気がする。
 理性では抑えなきゃって思うのに、場所が悪いとか人目があるとか、そういう理由が無くなると一気に心が永人しか求めなくなる。

 そのうち人目があっても気にしなくなりそうでちょっと怖い。


 やっぱり、人目があるときくらいはしっかり引き締めなきゃ!

 と自分を律している隣で嘉輪が生温かい眼差しをこちらに向けていることに気づいた。


 あ、聞かなきゃよかったかも。なんて心の声が聞こえてきた気がする。


「あー……元婚約者候補の人たちとはどうなの? 石井君はクラスメイトだからあまり態度も変わってないのを見てるし、田神先生は……まあ、アレなのは分かってるんだけど」

「アレって……」

 濁した言葉に突っ込みつつ、確かに何て言っていいのかは分からないよね、と納得もする。


「他の人達は最近会ってるの? 忍野君とは一緒に血液パック飲んだって話は聞いたけど……」

 この間の忍野君の話は嘉輪にも世間話程度にしていた。

 最後に『“唯一”に出会いたいなぁ』とか言っていた話もしたら、嘉輪がものすごく哀れんでいたのを覚えている。


「他の人達は……まあ、津島先輩は石井君と同じく私のことを本気で好きとかってわけじゃなかったから、今でも普通に話したりしてるよ。護衛とか必要なくなったから会うことも少なくなっちゃったけど」

 永人に対しては微妙だけれど、特に嫌ったりとかはしていない感じ。

「じゃあ、俊君と浪岡君は?」

「うん……あの二人は……」

 話しながら、どうしても困った笑みになってしまう。


 私に対しては結構普通に接してくれている。

 ただ、永人に対しては……。

「血の契約をしてるから、永人が近くにいること自体を認めないって感じではないんだけど……」

 少なくとも田神先生のようにあからさまな敵意は向けていないと思う。


「でも、永人がそばにいたのに私が死にかけてしまったことが不満みたいで……。ちょっと棘がある感じかな?」

 それに関しては永人自身も思うところがあるのかちょっと気まずそう……というか、苦々しい表情をする。

 チラッと永人の様子を見ると、今も少しにがみを帯びたような表情をしていた。


 死にかけてしまったのは私の判断が甘かったせいなのに……。

 あまりそのことで思い詰めてほしくないな。


 そう思うから、私は最近俊君と浪岡君とは極力会わないようにしていた。

 会うとしても、出来る限り永人と顔を合わせないように。


 まあ、学年も違うし浪岡君は校舎すら違うからどちらにしろ滅多に会わないんだけどね。


「そっか、じゃあやっぱりネックは田神先生か……。気持ち的に認めたくないって思うのは仕方ないにしても、納得してくれるといいんだけどね……」

「うん……」

 田神先生のことを思い出すと心にズシリと重い石が乗せられたような気持ちになる。

 一度は田神先生の思いを受け止めようとしたこともあって、どうしても後ろめたい気持ちが抜けきれない。

 田神先生が私を見る目もどこか非難しているようで……なおさら申し訳ない気分になる。


 永人を選んだときからこうなるかもしれないことは分かっていた。

 だから、ちゃんと向き合わなきゃ。

 そう思うけれど、今はまだどうしたらいいのかも分からない。

 保留にするしかない問題だった。


「……元婚約者候補だか何だか知らねぇがよぉ。もう関係ねぇんだ、さっさと忘れちまえ」

 私が気落ちしたことに気づいてか、永人はそんなことを言う。

「岸、あんたねぇ……。婚約者候補とかじゃなくてもあの人達は聖良の護衛だったし、友達くらいの関係ではあったのよ? そう簡単に割り切れるわけないじゃない」

 嘉輪は呆れ気味に非難するけれど、永人の言葉は私を思ってのことだ。

 分かりづらい優しさだけれど、胸が温かくなるのを感じた。


「いいの、大丈夫だよ嘉輪。……永人も、ありがとね」

 私がそう言ったことで場は収まり、少し沈黙が落ちる。

「あー……じゃあさ、やっぱり岸は学園に来ない方が良いんじゃない?」

 嘉輪が話題を戻すように沈黙を破った。

「あんたは気にしなくても聖良が色々気を揉んじゃうみたいだし……。それに、あんたはあんたでやることあるんでしょう?」

「あー、まあ」

 嘉輪の言葉に永人はうんざりとした様子になる。


 嘉輪の言う通り永人は今城山学園敷地内にある大学の入学資格を得るために色々やっている。

 主に高卒認定資格の取得のための勉強だけれど。


 来年の大学入学は無理だけれど、私と一緒に大学に進むなら丁度いいからって。

 でも、その勉強がちょっと問題らしい。


「何? 勉強そんなに嫌なの?」

 永人の様子に嘉輪が不思議がる。

 そこまで頭悪かったの? とでも言いそうな表情に、私は慌ててフォローを入れた。


「勉強が嫌ってわけじゃないみたいだよ? ただ、鬼塚先輩が……」

「へ? 鬼塚先輩?」

 どうしてここで鬼塚先輩の名前が出てくるのか分からないといった様子の嘉輪。

 まあ、永人と同級生って以外に共通点はないもんね……。


「ほら、三年生は期末テストが終わったら自由登校でしょう?」

 普通の高校なら三学期に入ってからだけれど、城山学園では特にH生はハンターとしての仕事を始める人も何人か出てくるらしい。

 そういう人は早めに現場になれた方がいいからって、今のうちから色々出歩くんだとか。

 そんな人達に合わせて今から自由登校ってことになっているみたい。


「ああ、そうだったわね。……それで?」

「鬼塚先輩もハンターとして仕事を始めてるみたいなんだけど、まだそこまで飛び回ってるわけじゃないから寮にいる時間の方が長くて……それで寮にいる永人に色々と構ってるみたいで……」

「……何で?」

 嘉輪の疑問も当然のものだった。
 私もはじめ知ったとき「何で⁉」って思わず叫んだもん。

「それがね、鬼塚先輩はもともと永人のことは良く思ってなかったの。永人が在学中に違反吸血をした人間の中に彼の幼馴染もいたらしくて……」

「じゃあなおさら何で⁉」

 さらに驚く嘉輪にそう思うよね、と同意したくなる。


「でも、私が永人の顔面に正拳突きして吹っ飛ばしちゃったのを見て、その辺の恨みみたいなものも吹っ飛んじゃったんだって」

「……そういえばあのとき一人だけ大笑いしてたわね」

 嘉輪の言葉に私もあのときのことを思い出す。

 同じH生にすら異様な目で見られていた鬼塚先輩。
 あれは色々吹っ飛んだ結果だったのかもしれない。


「まあ、それでなぜか逆に構いたくなったんだとか……。永人を気遣ってくれるような人は少ないだろうしって」

「……まあ、鬼塚先輩ってもともと面倒見のいい人だしね……」

 いいのかそれで、と思わなくもないけれど、鬼塚先輩らしいと言えばらしいなと納得する。

 でも構われている本人はうんざりしていた。


「面倒見がいい? 気遣いとかいらねぇし。うぜぇだけだっての」

「……」

 本気で嫌がっている永人を嘉輪はジトーッと見つめる。

「岸……まさかあんた、聖良に会いたいからとか言ってるけど、本当は鬼塚先輩から逃げたいだけなんじゃないの?」

「はぁ⁉ 会いてぇってのも本当だっつーの!」

「……会いたいの“も”、なんだ」

「ぐっ……」

 突っ込まれた永人は二の句が継げなくなっていた。


 いつも人を食ってかかっているような永人だけれど、鬼塚先輩や嘉輪にはたまに負けてしまうみたい。

 そんな新しい発見をして少し嬉しい気分になりながらも、私は考えることが多いなぁと小さくため息をつく。


 色々と納得してもらえていない元婚約者候補の人達のこと。

 永人と私の仲を認めてくれない一部の大人達。

 そして“花嫁”に純血種の血を入れるのは《禁忌》だと言う嘉輪のお父さんの話。


 向き合わなきゃならないこと、放置してもいいこと、どうしていいのかも分からないこと。

 いろんな問題がまだ残っている。

 それらを考えると憂鬱になるけれど、残したままにはできない事だ。


 だから、ちゃんと最良になる様に考えよう。

 全部が上手く行くとは思えないけれど、少しでも良くなる様に。


 私は大切な恋人と友人のやり取りを聞きながらそんな決意をしていた。
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