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異界を渡るマレビト

アキラ先輩の事情①

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「えっ?」

 最後の冷たいつぶやきにおどろいてハッと目を開ける。
 でも、見えたのはフェリシアさまではなくて神殿の女神像。

 もとの場所にもどってこれたんだって理解するまでちょっと時間がかかった。

 最後のつぶやきは何だったんだろう?
 おろか者って誰のこと?

「……ラナさん?」

 フェリシアさまの最後の声と言葉が気になって首をかしげていると、アキラ先輩に声をかけられた。

「あ、アキラ先輩」
「終わったのかな?」
「はい、たぶん」

 私は立ち上がると、内陣ないじんから出てアキラ先輩のところにもどる。

 フェリシアさまの言葉は気になるけれど、考えたって答えは出なさそうだ。
 それならまず、さっきわかったことをアキラ先輩にも伝えないと。

「アキラ先輩、新情報です!」

 宣言して、整った顔を見すぎないようにしながらフェリシアさまから聞いたこの世界の回復魔法のことを伝えた。
 アキラ先輩もおどろいていたけれど、やっぱり納得したって感じみたい。
 「そうか」ってうなずいてた。

「ラナさん、長い間動かないなと思っていたけれどそんなことになってたんだ?」
「はい。あと最後にフェリシアさま、『おろか者にはばつを』って言ってたんですけど……どういう意味なんでしょう?」

 いくらアキラ先輩でもわかるわけないよねと思いつつ、全部報告しておこうと思って話した。

「『おろか者にはばつを』、か……」

 うーん、ってあごに指を当ててうなるアキラ先輩。
 場ちがいだと思いつつ、カッコイイなぁって思っちゃった。
 その整った顔で見られると緊張きんちょうしちゃうけど、ただ見ているだけの状態ならつい見ほれちゃう。
 きっと目のホヨウってこういうことを言うんだろうな。

 なんて思っていたらこっちを見たアキラ先輩とバッチリ目が合っちゃって、思わず視線をそらした。

「ラナさん?」
「あ、いえ。なんでもないです。……ちょっとまぶしくて」
「まぶしい? 光当たってたっけ?」

 不思議そうに首をひねるアキラ先輩にもう一度「なんでもないです」と言って話をもどす。

「それより、フェリシアさまはなにが言いたかったんだと思いますか?」
「うーん……それはさすがにわからないけど……でもなにかおろかなことをする人がいるってことだろうね。たぶん、花祭りの日に」
「花祭り?」

 はじめて聞く単語に今度は私が首をかしげた。

「ラナさんがおいのりしている間なん人か話しかけてきた人がいたんだ」

 『旅の聖女さまに女神さまの祝福を』ってあいさつするみたいに話しかけてきて、いつまでいるのかとか聞かれたんだって。

「二日後の花祭りは見て行った方がいいって教えてくれたんだ。結構盛大な祭りで、花冠かかんをかぶった人たちが女神さまから祝福をもらえる日なんだって」
「へぇ……って、花って!」

 世間話みたいだったからスルーしちゃいそうになったけど、花でお祭りって言ったら!

「そう。たぶん鏡で見たラナさんのお母さんの前世――マーガレットさんが魔物にされる日は明後日だ」
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