地味男はイケメン元総長

緋村燐

文字の大きさ
6 / 44
一章 メイクオタク地味子

お化け屋敷①

しおりを挟む
 二人一組で入る事になったお化け屋敷の入り口で、私は日高くんの隣に立っていた。

 何故こうなった⁉

 お化け屋敷は二、三人を一組にして、時間を空けて順番に中に入る様になっていた。
 そこで真っ先に花田くんがさくらちゃんを誘ったんだ。
「宮野さん、良かったら俺と行かない? さっき怒っちゃったお詫びに、守らせてよ」
 なんて言って。
 さっき叱って落ち込ませてしまった事を気にしていたんだろうか。
 というか、『守らせてよ』なんて普通に言えるのが凄い。
 当然さくらちゃんが断るわけもなく。
「そんな、お詫びなんて! あれは私が悪かったんだし……。でも、その……一緒に行っても良い?」
 恥ずかしがりながら申し出を受ける姿がロップイヤーラビットみたいで可愛かった。
 もう、ズッキュンって感じで心に刺さってきた。

 ああ……肌のトーンをもっと明るめにして、ほんのり桜色になる様にチークを当てて。
 あとはアイラインをタレ目気味にしたら完璧!
 そんな風に頭の中でメイクイメージをしていると、いつの間にか工藤くんと美智留ちゃんが一緒に入ることが決まっていた。

「工藤、あんたこういうの平気なの?」
「へ⁉ 平気に決まってるじゃねぇか! く、暗いのはちょっと苦手だけどさ」
「はいはい、私が付いて行ってあげるから」
 なんて、さっき二人でアトラクションを回っていたから仲良くなったみたいだった。

 というわけで、結果として私と日高くんがペアになってしまったんだ。
 口をはさむ余裕がなかったよ……。

 そんな感じで、皆の中で最後に入ることになった私と日高くんは、揃って入り口で順番を待っているのだ。
「お待たせ致しました。お次の方々どうぞ」
 そう言って誘導してくれるスタッフのお兄さんが近付いて来た。
「最初の部屋で一分ほどの動画が流れるので、見終わってから進んで下さい」
 言い慣れた様子でそう言ったお兄さんは、突然何かにつまづいたようで体制を崩す。
「うわっと。あ、すみません」
 こっちにぶつかってくることは無かったけれど、日高くんのメガネに手が当たってしまった様だ。
 そのせいで落ちてしまったメガネを二人はしゃがんで取ろうとする。

「いえ、大丈夫ですので」
 と断って日高くんがメガネを取ると、お兄さんは「本当にすみま――」と途中で言葉を止めて息を呑んだ。
「お前、日高っ!」
 知り合いだったのかな?
 でもお兄さんは苦虫を噛み潰した様な表情をしている。
 例え知り合いでも、仲が良いとは思えなかった。
 私の考えが当たっていたからかどうかは分からないけれど、お兄さんはそれ以上何も言わず離れていく。
 日高くんの反応を見ればもう少し何か分かるかな? と思ったけれど、長めの髪とメガネのせいで見上げる私からは表情がよく見えない。
 しかも日高くんは「行くか」とだけ言って先に進んでしまう。
 突っ込んで聞くほどの事とも思えなかったし、私は日高くんを追いかけた。

 中に入ると、入り口が閉じられて目の前のスクリーンに動画が映し出される。
 ここは永遠の命を持つヴァンパイアに憧れた一人の研究者の屋敷だそうだ。
 自分がヴァンパイアになるために人体実験を繰り返し、その結果屋敷は未完成のヴァンパイア――つまりゾンビが徘徊はいかいする屋敷になってしまった。
 いつの間にか研究者の姿は屋敷から消えていたが、ゾンビに襲われたからなのか、それとも自分もゾンビとなってしまったのか。
 もしくは――。

 というところで動画は終わった。
 暗さも相まって恐怖が煽られるけれど、まあ良くある設定だなと思っただけだ。
「倉木さんって、こういうの平気な人?」
 先に進みながら、日高くんが話しかけてきた。
 珍しい、と思う。
 私も日高くんの事は避けていたけれど、日高くんも私に積極的に関わろうとはしていなかった。
 むしろ日高くんも私を避けているくらいに見えることもあったのに。

「んー。怖いには怖いけど……」
 不思議に思いながらも聞かれた事に答える。
「プロ級に特殊メイクされてるわけじゃないから人間だって分かるし、パニックになる程怖くなることは無いかな?」
 前にテレビで紹介されてたような、恐怖を煽りまくったり、メイクも暗がりだと本物と見紛みまごうほどに完成度が高かったら流石にパニックになりそうだけど。

「……へぇ。なんか珍しいな」
「……」
 何が?
「まあ、手つないでほしいとか言われなくて良かったけど」
「……あっそ」
 つまり、話しかけてきたのは怖いからと言ってくっつかれたくなかったからってことか。
 分からなくはないけど、日高くんの人間性はちょっと良いとは思えなくなる。
 まあ、待ち合わせに遅刻したり身だしなみ整えてなかったり、私の中での日高くんの株はだだ下がり気味だけど。
 私にどう思われようが気にしないんだろうけどね。
 そんな感じで突然現れたゾンビにビックリしたり、恐怖を煽ってくる効果音にビクビクしながらある意味しっかりと楽しんでいると……。

 フッと、突然真っ暗になった。

 暗がりと言っても足元は寒色系の明かりで照らされていたし、場所によっては燃えてるように見せるためか赤く照らされたところとかもあった。
 突然真っ暗になったから、そうやって恐怖を煽る感じなのかな? と思って待っていたけど、何か音が聞こえて来るわけでもどこか一部が明るくなるわけでもない。
「……」
 日高くんも黙って立っている気配がする。
 流石に何かおかしいなと思い始めたとき、場違いにも思えるアナウンスが聞こえた。
『お化け屋敷ご利用中のお客様にお知らせします。館内は現在停電中です。原因はただいま調査中ですが、利用中のお客様は非常口から外に避難をお願いいたします。繰り返します――』
 おかしいと思ったら停電したらしい。
 でもアナウンスが使えるってことは、明かりなど照明系の電源だけってことだろう。

「チッ、めんどくせー……」
 ぼそっと日高くんの呟きが聞こえた。
 日高くんって、思ったよりガラが悪いかもしれない。
 私たちが今いる場所はどこかの部屋に移動するための通路みたいで、非常口は見当たらない。
 取りあえず非常口があるであろう先の部屋に進まないと。
「取りあえず、進もうか」
「……そうだな」
 ……何だか、日高くんの口調が変わって来てるような。
 気のせいかな?

 真っ暗だからゆっくり足元に気を付けながら進む。
 次の部屋は照明がないのにほんのり明るかったからまだ進みやすかった。
 入ってみるとなぜ明るいのか理由が分かる。
 天井や壁、床にいたるまで淡緑黄色の明かりが張り付いている。
 蓄光性ちくこうせいのある蛍光塗料みたいだ。
 これだけだとキレイにしか見えないから、多分照明を使って怖い感じにしていたんだろう。
 部屋を見回してそんな予測を立てながら非常口の誘導灯を探す。
 誘導灯は蛍光塗料より明るいからすぐに分かった。

「あっちだな」
 日高くんも見つけた様ですぐにそっちへ向かう。
 でも非常口に到着する前に第三者の声に呼び止められた。

「待てよ、日高 陸斗」
 声の方を見ると、男の人がいた。
 服装はこの遊園地のスタッフのものだ。
 そして被っている帽子がこのお化け屋敷のスタッフ共通のもの。
 顔もちょっと見覚えがあると思ったところで気付いた。
 彼はさっき入り口のところで誘導してくれたスタッフだ。
 日高くんの知り合いっぽい人。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜

野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」   「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」 この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。 半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。 別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。 そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。 学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー ⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。 ⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。 ※表紙絵、挿絵はAI作成です。 ※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。

現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話

そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん! 好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。 ほのぼのラブコメというか日常系小説 オチなどはなく、ただひたすらにまったりします 挿絵や文章にもAIを使用しております。 苦手な方はご注意ください。

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

皆に優しい幸崎さんは、今日も「じゃない方」の私に優しい

99
ライト文芸
奥手で引っ込み思案な新入社員 × 教育係のエリート社員 佐倉美和(23)は、新入社員研修時に元読者モデルの同期・橘さくらと比較され、「じゃない方の佐倉」という不名誉なあだ名をつけられてしまい、以来人付き合いが消極的になってしまっている。 そんな彼女の教育係で営業部のエリート・幸崎優吾(28)は「皆に平等に優しい人格者」としてもっぱらな評判。 美和にも当然優しく接してくれているのだが、「それが逆に申し訳なくて辛い」と思ってしまう。 ある日、美和は学生時代からの友人で同期の城山雪の誘いでデパートのコスメ売り場に出かけ、美容部員の手によって別人のように変身する。 少しだけ自分に自信を持てたことで、美和と幸崎との間で、新しい関係が始まろうとしていた・・・ 素敵な表紙はミカスケ様のフリーイラストをお借りしています。 http://misoko.net/ 他サイト様でも投稿しています。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯
青春
 雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。  彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。  しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。 彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!

子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちだというのに。 入社して配属一日目。 直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。 中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。 彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。 それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。 「俺が、悪いのか」 人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。 けれど。 「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」 あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちなのに。 星谷桐子 22歳 システム開発会社営業事務 中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手 自分の非はちゃんと認める子 頑張り屋さん × 京塚大介 32歳 システム開発会社営業事務 主任 ツンツンあたまで目つき悪い 態度もでかくて人に恐怖を与えがち 5歳の娘にデレデレな愛妻家 いまでも亡くなった妻を愛している 私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?

処理中です...