地味男はイケメン元総長

緋村燐

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エピローグ

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「無事つき合えたみたいね。おめでとう」
「あの後そんなことになってたなんて……おめでとう、灯里ちゃん」
 休み明け、美智留ちゃんとさくらちゃんに報告すると揃って祝ってくれた。
 さくらちゃんと花田くんが付き合うようになったとき私も良かったねと思ったけれど、二人も私に同じように思ってくれたことが嬉しくて自然と笑みが浮かんだ。
「ありがとう」
 照れてしまう部分もあるけれど、ここは素直にお礼を言った。

「じゃあ今日は女子だけでプチお祝いパーティーでもしようか? さくらの方のお祝いもまだだったし、ケーキだけなら奢っちゃうよ」
 美智留ちゃんが笑顔でそう言ってくれたけれど、私は「ごめん」と謝った。
 申し訳ないけれど、今日はすでに予定が入ってるんだ。
「今日は陸斗くんが家に来る約束してて……申し訳ないけれど、お祝いはまた今度でも良い?」
「家に⁉」
「え? も、もうそんな関係に……?」
 美智留ちゃんは大げさなくらい驚き、さくらちゃんは頬を染めてオロオロと慌てる。
 その反応だけで何を想像したのかは予測できた。
「ちょっ⁉ メイクするだけだからね⁉」
 二人の反応に私まで恥ずかしくなって叫ぶ。
 そしてここが教室だということを思い出し、慌てて口を押さえた。
 私がメイクオタクだってことは未だに秘密だから。

 美智留ちゃんとさくらちゃんにメイクの話が出来るようになったのは嬉しい。
 けれど、そうやって話題に出していたら絶対に学校にまでメイク道具を持って来たくなってしまう。
 だから学校では未だに地味子をしているし、仲間以外の人たちには秘密なんだ。
「大丈夫よ。みんな帰る準備していて聞いてないから。それより、家に行ってメイクするの? 一昨日みたいにカラオケとかじゃなくて?」
 慌てる私を落ち着かせるように美智留ちゃんが質問してくる。
 彼女の言葉にホッとした私は、「うん」と話した。

「一昨日は出先だから簡単なメイク道具しか持って行ってなかったの。そのうちちゃんとメイクしたいって言ったら、今日の放課後なら良いって言ってくれて」
「……」
「えっと……それ、本当にメイクだけで済むのかな?」
 反応のない美智留ちゃんの代わりにさくらちゃんが言葉を発する。
「ないって。前に家でメイクしたときだって何もなかったし」
 と答えつつ、でもそういえばあの日の別れ際にファーストキス奪われたんだっけと思い出した。

 いや、でも今は恋人同士なんだしキスは問題ないよね?
 少なくとも二人が思っているような事にはやっぱりならないよ。
 うんうん、と自分の考えに納得していると、二人は顔を見合わせてから残念な子を見るような目を私に向けた。
「灯里……罪な子」
「日高くん、付き合ってからも大変そうだね」
「えー? なにそれ?」
 二人が何を言いたいのか分からなくてちょっと不満そうにしていると、陸斗くんが私たちの方に近付いて来る。

「灯里、待たせたな。行くか」
「もういいの?」
 ショートホームルームが終わってすぐに陸斗くんは工藤くんに捕まってしまって何やら話し込んでいた。
 今はそっちの話が終わるまで待っていたところだったんだ。
「……まあ、話は終わったから」
 視線を逸らされて何となくおかしいな、と思ったけれどすぐにまあいいかと立ち上がる。
「うん、じゃあ行こうか。美智留ちゃん、さくらちゃん、バイバイ。また明日ねー」
「じゃあねー。まあ、頑張りな」
「うん、また明日」
 二人から挨拶が返ってくると、私と陸斗くんは揃って学校を後にした。

「そう言えば工藤くんたちと何を話してたの?」
 二人で並んで私の家に向かいながら聞いてみる。
 どうしても知りたいというわけではなかったけれど、普通に気になったから。
「え? あー……灯里と付き合いはじめたこと確認された」
「ああ、そうなんだ」
 私も美智留ちゃんたちに報告していたから、似たような話をしていたんだなと思った。

「で、独り身の工藤の愚痴に付き合えとか言われて今日は灯里の家に行くからって断ったら……」
「うんうん……ん?」
 愚痴とお祝いで違いはあるけれど、本当に似たような会話をしていたことに引っ掛かりを覚える。
 その流れで反応も同じだったら……。
「メチャクチャ動揺した後に、頑張れとかゴム持ってるかとか聞かれた」
「ごっ⁉」
 少し気まずそうに話す陸斗くんの様子に本当に言われたんだって分かった。
 女子と違ってかなりリアルなものの名称まで出てきて流石の私も動揺する。

 え? 家に行くってなるとそういう風に思われちゃうの?
 え? それが普通なの?
 というか、陸斗くんもそのつもりだったとか?

 メイクだけのつもりだったからいきなりの展開にかなり動揺した。
 どうすればいいのかも分からなくて歩きながら顔を赤くしたり青くしたりと忙しくなる。
 すると、頭にポンッと大きな手が乗せられた。
「落ち着けって。変なことはしねぇから安心しろよ」
 そのまま私の髪をクシャッとしてから手が離れて行く。
「好きな女が嫌がるようなマネはしねぇよ」
 今は地味な格好なのに、そう言って二ッと笑う顔は男らしくてカッコ良くて……思わずキュンとした。
「ただ、俺も男だし……いずれはそういうこともしたいと思ってるってことだけは覚えといてくれよ」
 少しだけ照れ臭そうに口にした陸斗くんに、私はまた少し動揺しつつ「わ、分かった」と答えた。

 そんなドギマギするようなやり取りをしつつ私の家につく。
 今日も家には誰もいないけれど、お母さんは早く帰ってくると言っていた。
 彼氏が来るとは伝えておいたから鉢合わせしても問題はないけれど、出来れば帰ってくる前にメイクは終わらせておきたい。
 だって、お母さん私の初カレだって言ってお赤飯炊きそうなくらいテンション上がってたから……。
 本人である私より浮かれるってどういうことだろうと少し呆れた。
 帰ってきたら色々ちょっかい出されそうだし、メイクには集中したいからやっぱり先にしてしまいたい。

 そのむねを伝えて顔を洗って来てもらった陸斗くんの前でメイクの準備をしていく。
 向かい合っていつものルーティンをしようと目をつむる前に、彼の手が私の頬をスルリと撫でた。
「……お前はやっぱりメイクしているときが一番綺麗でカッコイイよ、灯里」
 大好きな彼に、大好きなメイクをしている瞬間を褒められて胸が高鳴る。
 こんなに嬉しいことはないと思った。
「うんっ……ありがとう。大好き」
 胸にあふれた言葉を口にして、私は今度こそ目を閉じる。

 大好きな人に、大好きなメイクを施すの。
 今の私が出来る最高の技術を駆使して、彼の魅力を引き出すんだ。
 最高にカッコよくなった陸斗くんの笑顔を見たいから。
 私は瞼を上げて、高揚する気分のまま微笑んだ。


 さあ、メイクの時間だ――。


END
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