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13 刑事“岩倉伊和男”
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それから、一か月ほどが経過した。カズ君との関係は良好で、彼は何度も私に好意を伝えてくれる。その度にカズ君は死にそうになっているのだけど、いつも運良くそれを回避していた。
カズ君は私との将来を見据えて、再び就職しようと考え始めている。私はそこまでする気はないので、慌てなくてもいいよと言っているのだけど、「好きになった人と家庭を築きたい」と恥ずかしい事を口にしていた。その時も周りで事故が起きるのだけど、カズ君は間一髪で避ける。どうなってんだこれ……
ちなみに身体の関係はまだない。キスもない。これからあるかもしれないが……正直、それはしてはいけないと私は思っている。そんな事をしてしまうと、いよいよ生まれてはいけない情が生まれてしまう。
カズ君は真面目だから、あまりそういう事を積極的に望まない。まぁ、私がする気が無いので、それを察して望んできたりしていないのだ。我慢しているのだろうか?
そんなある日、カズ君から「バイトに行ってくる~」というラインが来てから家で昼食を作っていると、滅多に鳴らない呼び出し音が鳴った。私は料理の手を止めて扉を開ける。するとそこには、スーツを着て険しい顔をした男性が二人立っていた。一人はまだ若く、もう一人は40代と思われる男性だ。50代の方の男性が、胸ポケットから手帳を出して言う。
「桃野百々子さんですね?」
警察手帳?まさか、刑事さん?手帳には“岩倉伊和男”と書かれている。もう一人の若い刑事さんも手帳を出し、見せてくれた。名前は“土田吉次”らしい。
「はい……そうですが……」
心臓の鼓動が速くなるのを隠しながら、私はそう答えた。
「少し、お話を聞かせて欲しいのですが……桃野さんは、小林幸三さんと、お付き合いしてましたよね?」
足にブルっと震えが来た。緊張しているのが自分でもよくわかる。しかし冷静に答えよう。嘘はつかないように……
「はい。でも、お付き合いする予定だったというべきでしょうか……プロポーズを受けた後に、彼は……」
「あぁ、なるほど」
岩倉は土田にメモを取るように指示を出す。土田はスマホにメモをとっていった。
「メモ帳に書いたほうが早いだろ」
岩倉がそう言うと、「こっちのほうが管理しやすいんで」と土田はスマホを見ながら言う。
「ったく、若い奴はなんでもデジタルデジタルだ。俺らの若い頃はな……」
「時代が違うんすよ。それに、今は50代でもスマホ使っている人いるんだし、そろそろ岩倉さんもガラケー卒業したらどうですか?3Gが終了するみたいだし、それ、あと少しで使えなくなるでしょ?」
「うっせーー!ガラケーは安いんだよ!それに、どうせ買い替えてもそんな薄い板にはせん。パカパカで十分だ」
なんか二人で言い合いをしていて私は置いてけぼりである。このまま扉を閉めてしまいたい。
「あ……あの……」
私が声をかけると、岩倉がこっちを向き頭を下げる。
「あぁ、すいません。あのですね、小林幸三さんは事故でお亡くなりになったのですが……少し気になる事があって」
「なんでしょう?」
「内竹充二さんはご存じで?」
心臓が口から飛び出しそうになる。その人物は、小林幸三の前のターゲットだ。前の町から割と離れた町に居たのだが……
「は……はい。確か、小林さんの前に付き合う予定だった……」
「その人も、事故で亡くなってるんですよね。知ってますよね?」
「はい……」
正直に答えよう。嘘はいけない。それに、私は何もしていない。全ては事故死。私は殺していない。
「調べた結果、ほんと、疑いようはなく事故死だったんです」
「はい……。それで?」
「しかしね。気になることがございまして……」
そう言った岩倉は鋭い眼光で私を見る。
「そこにも貴女の存在があった」
「偶然でしょう」
「そうなんです。二件続けてなら、偶然の可能性もあるなと……しかしですね。あなたの過去を調べさせてもらったんです」
呼吸が荒くなる。苦しい……
「するとですね」と岩倉は指を折り数える。「同じような偶然が、あと五件も見つかった」
「わ……」と言い、私は言葉を探る。「わかってます……私に関わった人は、高確率で事故に遭うんです」
「ははは。そうみたいですね。いや、奇妙だと思いまして」
「それで、刑事さんは何を言いたいのですか?」
「うん。証拠も何も残らない事故……いや、どうやったのかなって」
「どう?」
「単刀直入に言いますね。桃野さん、あんたが殺したんだろ?」
私は目を見開く。それは正解だが、間違いだ。私は何もしていない。
「私は何もしていません!私はただ、お付き合いしてただけで……」
「そうみたいですね。誰に聞き込みをしても、貴女を疑う人はいない。でも、なんか気になるんですよ。だって、あなたは恋人になる予定だった人が事故死したあとに、必ず引っ越している。まるで、何かから逃げるかのように……」
私は言葉に詰まる。
「桃野さん、種明かししてくれませんか?どうやって、今までの人を事故で殺したんです?」
どう答えればいい?私は必死に言葉を探した。
それから、一か月ほどが経過した。カズ君との関係は良好で、彼は何度も私に好意を伝えてくれる。その度にカズ君は死にそうになっているのだけど、いつも運良くそれを回避していた。
カズ君は私との将来を見据えて、再び就職しようと考え始めている。私はそこまでする気はないので、慌てなくてもいいよと言っているのだけど、「好きになった人と家庭を築きたい」と恥ずかしい事を口にしていた。その時も周りで事故が起きるのだけど、カズ君は間一髪で避ける。どうなってんだこれ……
ちなみに身体の関係はまだない。キスもない。これからあるかもしれないが……正直、それはしてはいけないと私は思っている。そんな事をしてしまうと、いよいよ生まれてはいけない情が生まれてしまう。
カズ君は真面目だから、あまりそういう事を積極的に望まない。まぁ、私がする気が無いので、それを察して望んできたりしていないのだ。我慢しているのだろうか?
そんなある日、カズ君から「バイトに行ってくる~」というラインが来てから家で昼食を作っていると、滅多に鳴らない呼び出し音が鳴った。私は料理の手を止めて扉を開ける。するとそこには、スーツを着て険しい顔をした男性が二人立っていた。一人はまだ若く、もう一人は40代と思われる男性だ。50代の方の男性が、胸ポケットから手帳を出して言う。
「桃野百々子さんですね?」
警察手帳?まさか、刑事さん?手帳には“岩倉伊和男”と書かれている。もう一人の若い刑事さんも手帳を出し、見せてくれた。名前は“土田吉次”らしい。
「はい……そうですが……」
心臓の鼓動が速くなるのを隠しながら、私はそう答えた。
「少し、お話を聞かせて欲しいのですが……桃野さんは、小林幸三さんと、お付き合いしてましたよね?」
足にブルっと震えが来た。緊張しているのが自分でもよくわかる。しかし冷静に答えよう。嘘はつかないように……
「はい。でも、お付き合いする予定だったというべきでしょうか……プロポーズを受けた後に、彼は……」
「あぁ、なるほど」
岩倉は土田にメモを取るように指示を出す。土田はスマホにメモをとっていった。
「メモ帳に書いたほうが早いだろ」
岩倉がそう言うと、「こっちのほうが管理しやすいんで」と土田はスマホを見ながら言う。
「ったく、若い奴はなんでもデジタルデジタルだ。俺らの若い頃はな……」
「時代が違うんすよ。それに、今は50代でもスマホ使っている人いるんだし、そろそろ岩倉さんもガラケー卒業したらどうですか?3Gが終了するみたいだし、それ、あと少しで使えなくなるでしょ?」
「うっせーー!ガラケーは安いんだよ!それに、どうせ買い替えてもそんな薄い板にはせん。パカパカで十分だ」
なんか二人で言い合いをしていて私は置いてけぼりである。このまま扉を閉めてしまいたい。
「あ……あの……」
私が声をかけると、岩倉がこっちを向き頭を下げる。
「あぁ、すいません。あのですね、小林幸三さんは事故でお亡くなりになったのですが……少し気になる事があって」
「なんでしょう?」
「内竹充二さんはご存じで?」
心臓が口から飛び出しそうになる。その人物は、小林幸三の前のターゲットだ。前の町から割と離れた町に居たのだが……
「は……はい。確か、小林さんの前に付き合う予定だった……」
「その人も、事故で亡くなってるんですよね。知ってますよね?」
「はい……」
正直に答えよう。嘘はいけない。それに、私は何もしていない。全ては事故死。私は殺していない。
「調べた結果、ほんと、疑いようはなく事故死だったんです」
「はい……。それで?」
「しかしね。気になることがございまして……」
そう言った岩倉は鋭い眼光で私を見る。
「そこにも貴女の存在があった」
「偶然でしょう」
「そうなんです。二件続けてなら、偶然の可能性もあるなと……しかしですね。あなたの過去を調べさせてもらったんです」
呼吸が荒くなる。苦しい……
「するとですね」と岩倉は指を折り数える。「同じような偶然が、あと五件も見つかった」
「わ……」と言い、私は言葉を探る。「わかってます……私に関わった人は、高確率で事故に遭うんです」
「ははは。そうみたいですね。いや、奇妙だと思いまして」
「それで、刑事さんは何を言いたいのですか?」
「うん。証拠も何も残らない事故……いや、どうやったのかなって」
「どう?」
「単刀直入に言いますね。桃野さん、あんたが殺したんだろ?」
私は目を見開く。それは正解だが、間違いだ。私は何もしていない。
「私は何もしていません!私はただ、お付き合いしてただけで……」
「そうみたいですね。誰に聞き込みをしても、貴女を疑う人はいない。でも、なんか気になるんですよ。だって、あなたは恋人になる予定だった人が事故死したあとに、必ず引っ越している。まるで、何かから逃げるかのように……」
私は言葉に詰まる。
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