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14 人生の隅っこ、逃げ場無し
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「だから、私は殺してなんかいません!ただ、お付き合いしようとした人が事故に遭っただけです……引っ越したのだって、亡くした人を思い出すのが辛いからです……」
岩倉は考え込み、土田に意見を求める。
「土田、どう思う?」
「証拠がないので、殺したと決めつける事は出来ませんね。それに、殺すメリットがない」
「そうですよ。殺して何のメリットがあるのですか?」
私は土田の発言に便乗してそう言った。
「でも、逆にそのメリットさえ発見できれば……殺す動機に繋がる。どうやって事故死をさせたのかはわからないが、殺す手段として、その“偶然”を利用したと考えられる」
冷静に分析する土田に、岩倉は返す。
「偶然では厳しいな……しかし、メリットか……なるほど」
メリット……それはお金だ。依頼されてお金を貰っている。依頼者がその情報を漏らさない限り、大丈夫なはずだが……いや、しかし、それでも私を逮捕するのは無理だろう。
「今のところ、入っている情報によりますと……」と土田はスマホを見ながら話し始める。「桃野さんのお付き合いしていた方が事故死をしても、その亡くなった方から金銭は一切受け取っていなかったようです。例えば遺産だとか、そういったものは」
そうだ。私は依頼者からの報酬以外は受け取っていない。
「それはわざわざ言わんでも知ってる。それ以外のメリットがあるって事だろ」
「いや、だから、殺してないですって」
殺したと決めつけて話しているのがとても不愉快に感じ、私はそう言った。まぁ、依頼を受けて私が事故を起こさせたんだけど……でも、直接殺したわけじゃない。殺したのは寧ろ、死亡事故を起こした人達だ。
「失敬失敬、もしも貴女が殺していればの話です」
岩倉はそう言い、「では、今日はこの辺で」と土田を連れて部屋の前から去って行った。下に降りると大家さんがいたらしく、聞き込みをしているのが微かに聞こえる。しかし大家さんは「耳が遠いもんで、大声で言ってくれんか?!」とほとんど威嚇するように怒鳴っていた。二人がどんな反応をしたのかはわからないが、そのあと車に乗り込む音が聞こえて、どこかへ走り去って行ったのである。
あぁ……まさか……捜査しているとは思わなかった。でも、そうだよ。付き合っていた人が何度も事故死するなんて不自然すぎる。次、自分の周りで何か起これば、警察の疑いはさらに強くなるだろう。ならば、どうする?依頼をこちらから断るか?でも、そうしてどうする?断ったあとはカズ君と別れてまた引っ越すか?それこそ疑われるではないか……
知らないうちに私はどんどん人生の隅っこに追いやられていたようだ。全部自分のせいだが、どうしてこんな事になったんだと悔やまれる。頭を抱えて壁にもたれかかって呼吸を整えると、何やら良い匂いがしてきた。あぁそうだ。昼食を作っている途中だった。
私はとりあえずこの問題は後回しにして、昼食作りの続きを行う。たぶん、ここで焦って下手に動けばそれこそボロが出るかもしれない。ただ、これからはカズ君とのデートも気を付けないと……見張られているかもしれないし、カズ君がもしも事故で死ぬような事があれば、徹底的に調べ上げられそうだ。
それから数分が経ち、私は昼食を作り終えてそれを食べた。お腹がいっぱいになるが、モヤモヤが消えない……とりあえず、昼寝でもして現実逃避でもしようか?ちゃんと眠れるかな……と思っていたが、横になると案外簡単に眠る事ができた。まるで未来から来たロボットと暮らす眼鏡をかけた少年のようだ。
そして私は夢を見る。それは、ずいぶんリアルな夢で、ずいぶんリアルな私の過去を再現した夢だった。
岩倉は考え込み、土田に意見を求める。
「土田、どう思う?」
「証拠がないので、殺したと決めつける事は出来ませんね。それに、殺すメリットがない」
「そうですよ。殺して何のメリットがあるのですか?」
私は土田の発言に便乗してそう言った。
「でも、逆にそのメリットさえ発見できれば……殺す動機に繋がる。どうやって事故死をさせたのかはわからないが、殺す手段として、その“偶然”を利用したと考えられる」
冷静に分析する土田に、岩倉は返す。
「偶然では厳しいな……しかし、メリットか……なるほど」
メリット……それはお金だ。依頼されてお金を貰っている。依頼者がその情報を漏らさない限り、大丈夫なはずだが……いや、しかし、それでも私を逮捕するのは無理だろう。
「今のところ、入っている情報によりますと……」と土田はスマホを見ながら話し始める。「桃野さんのお付き合いしていた方が事故死をしても、その亡くなった方から金銭は一切受け取っていなかったようです。例えば遺産だとか、そういったものは」
そうだ。私は依頼者からの報酬以外は受け取っていない。
「それはわざわざ言わんでも知ってる。それ以外のメリットがあるって事だろ」
「いや、だから、殺してないですって」
殺したと決めつけて話しているのがとても不愉快に感じ、私はそう言った。まぁ、依頼を受けて私が事故を起こさせたんだけど……でも、直接殺したわけじゃない。殺したのは寧ろ、死亡事故を起こした人達だ。
「失敬失敬、もしも貴女が殺していればの話です」
岩倉はそう言い、「では、今日はこの辺で」と土田を連れて部屋の前から去って行った。下に降りると大家さんがいたらしく、聞き込みをしているのが微かに聞こえる。しかし大家さんは「耳が遠いもんで、大声で言ってくれんか?!」とほとんど威嚇するように怒鳴っていた。二人がどんな反応をしたのかはわからないが、そのあと車に乗り込む音が聞こえて、どこかへ走り去って行ったのである。
あぁ……まさか……捜査しているとは思わなかった。でも、そうだよ。付き合っていた人が何度も事故死するなんて不自然すぎる。次、自分の周りで何か起これば、警察の疑いはさらに強くなるだろう。ならば、どうする?依頼をこちらから断るか?でも、そうしてどうする?断ったあとはカズ君と別れてまた引っ越すか?それこそ疑われるではないか……
知らないうちに私はどんどん人生の隅っこに追いやられていたようだ。全部自分のせいだが、どうしてこんな事になったんだと悔やまれる。頭を抱えて壁にもたれかかって呼吸を整えると、何やら良い匂いがしてきた。あぁそうだ。昼食を作っている途中だった。
私はとりあえずこの問題は後回しにして、昼食作りの続きを行う。たぶん、ここで焦って下手に動けばそれこそボロが出るかもしれない。ただ、これからはカズ君とのデートも気を付けないと……見張られているかもしれないし、カズ君がもしも事故で死ぬような事があれば、徹底的に調べ上げられそうだ。
それから数分が経ち、私は昼食を作り終えてそれを食べた。お腹がいっぱいになるが、モヤモヤが消えない……とりあえず、昼寝でもして現実逃避でもしようか?ちゃんと眠れるかな……と思っていたが、横になると案外簡単に眠る事ができた。まるで未来から来たロボットと暮らす眼鏡をかけた少年のようだ。
そして私は夢を見る。それは、ずいぶんリアルな夢で、ずいぶんリアルな私の過去を再現した夢だった。
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