私に告白してきた奴はだいたい事故で死ぬけど、こいつだけはなかなか死なない

ゆみのり

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18 カミングアウト

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「私といたら、きっといつか死んじゃうよ」

 私はカズ君にそう言った。卑しい女だ。自分が殺し屋だという事を……父親から依頼されて近付いたというのを隠して、“あなたのために別れる”と良い人ぶっている。

「でも、偶然でしょ?そんなの……」

 カズ君はそれでも引き下がらない。

「偶然でも、これだけ続けば必然的なのよ。私と付き合おうとした人は、事故で死ぬ。疑われて当然……」

「でも、僕は生きてる!」

 そうだ。それが謎なのだ。どうしてカズ君だけ?どうして何度も事故を回避できる?

「運が良かっただけだよ。何度も危ない目にあったでしょ?それがいつまで続くかわからない」

 カズ君は考え込み、そして口を開く。

「じゃあ、どうして僕と友達になったの?僕の気持ちに気付いてたよね?」

 ギクリとする。その通りだ。事故に遭うと分かっていたなら、何故近付いたのか?その答えは、殺し屋だから。でもそれは言えない。

「それは……」と、私が言葉に詰まると、カズ君は自分の考えを述べる。

「寂しかったんじゃないの?誰かと一緒に居たかったんじゃないの?例え相手が不幸になろうとも、それでも誰かと付き合いたかったんじゃないの?」

 当たっているような、外れているような……いや、当たっているか。仕事と称して、本当は出会いを求めていたのだろう。

「僕は、不幸になってもいいよ。モモちゃんと居られるなら、死んでもいい。だって僕は……」

 その続きをカズ君が言いかけたところで、私は彼の口を手で塞いだ。駄目だ。その先を言うと、また事故が彼を襲う。

「私のことを好きって言わないで」

 私は能力の発動条件を教える。

「私に好きって言うと、事故が起きる」

 カズ君はコクコクと頷き、私は手を離した。

「わ、分かったよ」

 そう言うカズ君に、私は首を横に振る。

「分かってないよ。何も分かってない」

「分かってるよ!モモちゃんにそれを言ったら事故が起きるんでしょ?」

 ほら、分かってない。

「そうじゃないよ」

「じゃあ、何?いや、何だっていい。僕はモモちゃんと別れたくない!」

 子供みたいに無知で無鉄砲……別れたくないって、引き止める理由にはならないでしょ。ただのワガママだって事に、何故気付かない?そんなに私が必要?私が居ないと死ぬの?そんなわけない。私が居ない方が生きていける。本当の幸せを手に出来る。

 私の気持ちはどうするの?別れる事がベストと結論付けた私の想いは考えないの?仕方ないからやっぱり別れないで満足できるの?あぁ……私はいったい何をグチャグチャ考えているのだろう。

 それって全部私のせいじゃないか。私が本当の事を言わないから、彼も納得できない。だから別れたい気持ちにならない。

 だから、言えよ!言え!言え!

 私はカズ君の耳元に口を持っていった。そして、誰にも聞かれない小さな声で……騒音にかき消されてしまうような微かな波を、彼の頭に流し込んだ。

「私、殺し屋なの。依頼されて、カズ君を事故死させるために近付いたんだ」

 それだけ言って、私は彼から離れる。

「分かったでしょ?だから、さよなら」

 カズ君はどこを見るわけでもなく、ただ呆然と立ち尽くしていた。そりゃそうだ、ドン引きどころじゃない。ずっと騙されてたことに気付いて、彼は今絶望している事だろう。

 私はカズ君に背を向けて、その場を去った。

 今度こそ本当に、さようなら……
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