18 / 24
18 カミングアウト
しおりを挟む
「私といたら、きっといつか死んじゃうよ」
私はカズ君にそう言った。卑しい女だ。自分が殺し屋だという事を……父親から依頼されて近付いたというのを隠して、“あなたのために別れる”と良い人ぶっている。
「でも、偶然でしょ?そんなの……」
カズ君はそれでも引き下がらない。
「偶然でも、これだけ続けば必然的なのよ。私と付き合おうとした人は、事故で死ぬ。疑われて当然……」
「でも、僕は生きてる!」
そうだ。それが謎なのだ。どうしてカズ君だけ?どうして何度も事故を回避できる?
「運が良かっただけだよ。何度も危ない目にあったでしょ?それがいつまで続くかわからない」
カズ君は考え込み、そして口を開く。
「じゃあ、どうして僕と友達になったの?僕の気持ちに気付いてたよね?」
ギクリとする。その通りだ。事故に遭うと分かっていたなら、何故近付いたのか?その答えは、殺し屋だから。でもそれは言えない。
「それは……」と、私が言葉に詰まると、カズ君は自分の考えを述べる。
「寂しかったんじゃないの?誰かと一緒に居たかったんじゃないの?例え相手が不幸になろうとも、それでも誰かと付き合いたかったんじゃないの?」
当たっているような、外れているような……いや、当たっているか。仕事と称して、本当は出会いを求めていたのだろう。
「僕は、不幸になってもいいよ。モモちゃんと居られるなら、死んでもいい。だって僕は……」
その続きをカズ君が言いかけたところで、私は彼の口を手で塞いだ。駄目だ。その先を言うと、また事故が彼を襲う。
「私のことを好きって言わないで」
私は能力の発動条件を教える。
「私に好きって言うと、事故が起きる」
カズ君はコクコクと頷き、私は手を離した。
「わ、分かったよ」
そう言うカズ君に、私は首を横に振る。
「分かってないよ。何も分かってない」
「分かってるよ!モモちゃんにそれを言ったら事故が起きるんでしょ?」
ほら、分かってない。
「そうじゃないよ」
「じゃあ、何?いや、何だっていい。僕はモモちゃんと別れたくない!」
子供みたいに無知で無鉄砲……別れたくないって、引き止める理由にはならないでしょ。ただのワガママだって事に、何故気付かない?そんなに私が必要?私が居ないと死ぬの?そんなわけない。私が居ない方が生きていける。本当の幸せを手に出来る。
私の気持ちはどうするの?別れる事がベストと結論付けた私の想いは考えないの?仕方ないからやっぱり別れないで満足できるの?あぁ……私はいったい何をグチャグチャ考えているのだろう。
それって全部私のせいじゃないか。私が本当の事を言わないから、彼も納得できない。だから別れたい気持ちにならない。
だから、言えよ!言え!言え!
私はカズ君の耳元に口を持っていった。そして、誰にも聞かれない小さな声で……騒音にかき消されてしまうような微かな波を、彼の頭に流し込んだ。
「私、殺し屋なの。依頼されて、カズ君を事故死させるために近付いたんだ」
それだけ言って、私は彼から離れる。
「分かったでしょ?だから、さよなら」
カズ君はどこを見るわけでもなく、ただ呆然と立ち尽くしていた。そりゃそうだ、ドン引きどころじゃない。ずっと騙されてたことに気付いて、彼は今絶望している事だろう。
私はカズ君に背を向けて、その場を去った。
今度こそ本当に、さようなら……
私はカズ君にそう言った。卑しい女だ。自分が殺し屋だという事を……父親から依頼されて近付いたというのを隠して、“あなたのために別れる”と良い人ぶっている。
「でも、偶然でしょ?そんなの……」
カズ君はそれでも引き下がらない。
「偶然でも、これだけ続けば必然的なのよ。私と付き合おうとした人は、事故で死ぬ。疑われて当然……」
「でも、僕は生きてる!」
そうだ。それが謎なのだ。どうしてカズ君だけ?どうして何度も事故を回避できる?
「運が良かっただけだよ。何度も危ない目にあったでしょ?それがいつまで続くかわからない」
カズ君は考え込み、そして口を開く。
「じゃあ、どうして僕と友達になったの?僕の気持ちに気付いてたよね?」
ギクリとする。その通りだ。事故に遭うと分かっていたなら、何故近付いたのか?その答えは、殺し屋だから。でもそれは言えない。
「それは……」と、私が言葉に詰まると、カズ君は自分の考えを述べる。
「寂しかったんじゃないの?誰かと一緒に居たかったんじゃないの?例え相手が不幸になろうとも、それでも誰かと付き合いたかったんじゃないの?」
当たっているような、外れているような……いや、当たっているか。仕事と称して、本当は出会いを求めていたのだろう。
「僕は、不幸になってもいいよ。モモちゃんと居られるなら、死んでもいい。だって僕は……」
その続きをカズ君が言いかけたところで、私は彼の口を手で塞いだ。駄目だ。その先を言うと、また事故が彼を襲う。
「私のことを好きって言わないで」
私は能力の発動条件を教える。
「私に好きって言うと、事故が起きる」
カズ君はコクコクと頷き、私は手を離した。
「わ、分かったよ」
そう言うカズ君に、私は首を横に振る。
「分かってないよ。何も分かってない」
「分かってるよ!モモちゃんにそれを言ったら事故が起きるんでしょ?」
ほら、分かってない。
「そうじゃないよ」
「じゃあ、何?いや、何だっていい。僕はモモちゃんと別れたくない!」
子供みたいに無知で無鉄砲……別れたくないって、引き止める理由にはならないでしょ。ただのワガママだって事に、何故気付かない?そんなに私が必要?私が居ないと死ぬの?そんなわけない。私が居ない方が生きていける。本当の幸せを手に出来る。
私の気持ちはどうするの?別れる事がベストと結論付けた私の想いは考えないの?仕方ないからやっぱり別れないで満足できるの?あぁ……私はいったい何をグチャグチャ考えているのだろう。
それって全部私のせいじゃないか。私が本当の事を言わないから、彼も納得できない。だから別れたい気持ちにならない。
だから、言えよ!言え!言え!
私はカズ君の耳元に口を持っていった。そして、誰にも聞かれない小さな声で……騒音にかき消されてしまうような微かな波を、彼の頭に流し込んだ。
「私、殺し屋なの。依頼されて、カズ君を事故死させるために近付いたんだ」
それだけ言って、私は彼から離れる。
「分かったでしょ?だから、さよなら」
カズ君はどこを見るわけでもなく、ただ呆然と立ち尽くしていた。そりゃそうだ、ドン引きどころじゃない。ずっと騙されてたことに気付いて、彼は今絶望している事だろう。
私はカズ君に背を向けて、その場を去った。
今度こそ本当に、さようなら……
0
あなたにおすすめの小説
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。
和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。
政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる