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第1話 憂鬱なる光の君
しおりを挟む都心の夜景を一望できる、高級ホテルのスイートルーム。
キングサイズのベッドで目覚めた源煌(みなもと・こう)は、けだるげに重たい瞼を持ち上げた。
隣には、昨晩バーで逆ナンしてきたモデル風の美女が眠っている。豊満な肢体は魅力的だったが、煌の瞳には冷ややかな光しか宿っていない。
シーツから無造作に伸びた彼女の太腿には、うっすらと赤い痣が浮いている。
暴力ではない。ただ、煌が持ち合わせる“それ”が、あまりにも規格外すぎた結果だ。
「……また、これか」
煌は吐き捨てるように呟き、シャワールームへと向かった。
鏡に映る自分を見る。
透き通るような肌、切れ長の瞳、整いすぎた容姿。世間は彼を「現代の光源氏」ともてはやす。金も名誉も、そして美貌も、すべてを持っていると。
だが、股間に鎮座する凶暴な獣だけは、彼の意思を裏切り続けていた。
昨夜の情事を思い出す。
女は最初、煌の美貌に陶酔していた。だが、いざ行為に及ぶ段になり、煌のモノがあらわになった瞬間、その瞳は恐怖に見開かれた。
『うそ……入らない、無理よ』
その言葉を聞くのは何度目だろうか。
あるいは、無理やり受け入れたとしても、そこにあるのは愛し合う喜びではなく、ただの苦痛か、あるいは珍獣を見るような好奇の目だけ。
(俺が欲しいのは、肉欲の処理じゃない。……心と体、そのすべてで俺を包み込んでくれる、たった一人の女だ)
熱いシャワーを浴びながら、煌は孤独を噛みしめる。
かつて愛した義母のような女性、華蓮(かれん)への思慕も、この身体的コンプレックスゆえに封印した。
シャワーを出てスーツに袖を通すと、完璧な「若き総帥」の仮面を被る。
ベッドの上の女には、分厚い封筒と名刺を置いておく。手切れ金だ。二度と会うことはない。
「行くか……」
煌は部屋を出た。
その足取りは重い。だが、運命はすぐそこまで迫っていた。
今日、彼は出会うことになる。
まだ何の色にも染まっていない、純白の少女――紫苑(しおん)に。
それは、彼が初めて見つけた、自分だけの「光」となる存在だった。
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