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2章 ゼルドスの反乱 二つ目の危機
69話 互いに死力を尽くして 新たな仲間と出発の別れ
しおりを挟む「いやー、凄かったんよ! 久しぶりに面白いもの見せてもらったんよ!」
無邪気な笑顔を見せながら、はしゃぎ回っている神は無視しつつ、勝敗の行方をしっかりと見定める。
どうやら勝利を手にしたのは、ヴァンパイアの代表ヴィアデールだった。
惜しくも敗れたドライアドのシュカちゃんは、現在メルフィナの治療を受けている。
かなり無理をしていたようだな。
体力が尽きてしまうまで、全力で頑張ったみたいだ。
他の種族の代表たちは、治療が終わって元気な姿を見せている。
みんな大健闘だったが、勝ったヴァンパイアは流石だな。
よく分からないが、元から強い種族なのだろう。
なんか豚と一緒に人間が3人、治療されていたような気もするのだが、きっと見間違いだろうからスルーしておこう。
「お頭、負けちまいました!」
「うっ、面目無い」
「ミレリーちゃんも、ヴァレリちゃんも良く頑張ったよ~! 私なんてヴァンパイアさんにすぐ倒されちゃったもん!」
何か声も聞こえてきたような気がするが、幻聴に違いない。
俺、疲れが溜まってるんだな。
というわけで77名(+3人と豚)のバトルロイヤルは終わった。
勝ったのはヴァンパイアだったが、セラファルの目にはどう映ったのだろうか?
「ヴァンパイアは基礎能力が非常に高く、優秀なスキルも多数持っていることが分かりました。しかしマスターの近くで戦うには、少し力不足かと思います。火力重視ということであればリーサさんがいますし、スキルが優秀だからといってメルフィナさんには敵いませんね。マヤネさんよりもスピードや一撃の攻撃力も劣っています。しかし、ラーグルよりは強いですね」
サラッとラーグルさんがディスられているような気もするが、とりあえず目立った強い点がないというのは分かった。
ヴァンパイアはオールラウンダーに戦えるタイプだが、切り札になるものが少ないということだろうか。
「比べて、ドライアドは興味深いデータがありました。途中でスキルが変動したり、耐性や基礎能力が変わっていたりというものですね。こちらを駆使したからこそ、今回ヴァンパイアに傷を負わせて膝をつかせることができたのでしょう。これは素晴らしい特性ですね。伸びればかなり強いと考えられます。今は弱いですが」
よく分からないが、とりあえずスキルやステータスを自分で調整する能力を持っているようだ。
それが強いらしいが、いまいちピンとこない。
ステータスやスキルを敵によって変えることができるらしいから、しっかり戦えば強いのだろうな。
「待って欲しい、王妃殿。勝ったのは誰がどう見ようと私だ。魔王様の側近の座は、我らヴァンパイアが勝ち取ったのではないのか? ドライアドばかりが褒められ、我らが褒められていないように聞こえるのだが」
こいつ、セラファルを王妃と勘違いしているな。
言われたセラファルは、心なしかいつもより嬉しそうな表情をしている。
微妙な変化だが、多分喜んでいるのだろう。
わざわざ訂正することもないし、とりあえずはそのままでいいか。
「現状の戦力を考えると、ヴァンパイアはとても優秀です。マスターさえ良ければ、戦力として加えるのは賛成です。ラーグルより強いですから」
ラーグルがもはや雑魚キャラ扱いされてるなー。
セラファルの返答を聞いたヴァンパイアの3名は、俺の方をジッと見つめてきた。
ゲームなら仲間にするかしないかの、選択肢が表示されていそうだ。
「まあ良いんじゃないか。ゼルドス軍との戦闘は避けられないだろうし、人数も少ないならドラ助でも何とか運べそうだからな」
「100名くらいであれば、このドラ助めにお任せください。速度を殺さずに目的地まで送り届けましょう」
ドラ助もやる気まんまんらしい。
どっかの物置のようなキャッチフレーズを掲げているくらいだから、3名増えたところでそんなに変わらないだろうな。
ドラ助には100名乗っても大丈夫・・・。
「有難き幸せ。我らの受けた大恩に報いるため、死力を尽くしましょう」
「ウチも頑張るデース!」
「無論、私も魔王様のお役に立てるよう、務めさせていただきます」
ヴィアデールは名前覚えたけど、あと2名の名前を聞いとかなくてはならないな。
あと2名はどちらも女性みたいだが、片方がやけに個性の主張が激しい。
なんかノリが、日本人から見た外国の人を強調させたような感じだ。
話すと疲れそうだから、触れないでおこうか。
「魔王様、大丈夫デスか? 疲れてるなら、ウチが肩を揉むデスよ?」
「ヴェイリス、魔王様の困った表情が見えないのか? その喋り方もやめておけと、いつも注意しているではないか」
ヴィアデールが注意をしてくれた。
「オー! そうだったネー! 次から気をつけるネー!」
こいつ、気をつける気なんてさらさらないよな?
まあ、ちょっと面倒そうなやつは無視でいこう。
俺の無視スキルは、メルフィナのおかげでかなりレベルが高くなってるからな。これくらいは余裕だ。
無視スキルというスキルは無いんだけどな。
さて、これでドラ助のお願いも果たしてモンスターたちの今後も決まったことだし、ようやく西領へと向かうことができる。
新しく作られる町のことは、しっかりしてそうなドライアドのシュカちゃんに任せちゃって良さそうかな。
一応保険用に、ドラ助とは別に9匹の龍をテイムしておいた。
成龍から子龍まで様々だが、名前は後で決めることにしよう。
ドラ助1匹の名前決めだけで大変だったからな。先が思いやられる・・・。
とりあえず、ドラゴン10匹とモンスターいっぱいゲットだぜ。
◇
「それじゃあウリムちゃん、また来るでござるよ!」
「うん! また一緒にプタネラレースしようね~!」
「ぷひぷひ!」
マヤネとウリムが別れの挨拶を済ませる。
ちょっと豚料理を食べてみたかったが、それは今度でいいかな。
「ぷ、ぷひ!?」
何かを感じとったプタネラは少し怯えた様子で俺を見つめていたが、俺はいつものごとくスルーして豚料理を楽しみにしておこうと心に決めた。
そして俺たちを乗せたドラ助は、大きな翼をはためかせて黄龍山脈を勢いよく飛び立った。
飛び立つ際、リーサとウルリルが吹き飛ばされそうになって急いで両脇に抱きかかえてしまったことで、セラファルやメルフィナから羨ましそうに見られる事件もあったが、その他は順調だ。
目指す場所は地下要塞のため、空から攻めることはできないが、ある程度奇襲をすることはできるだろうか。
そしてこれからゼルドス軍との戦いが、幕を開けることとなったのであった・・・。
ちなみに今回の首謀者の1人であったカラノスは、監獄要塞から脱獄した大罪人だった。
カイに飛ばされたカラノスを、マヤネが拾いに行ったときには既にご臨終されていたそうな。なーむー。
◇あとがき◇
いただいた感想の返事を書こうとしてたら、寝落ちしてしまいました! (´・ω・`)申し訳ありません!
2018/8/20 ストーリー変更に伴って、一部の文を大幅に書き変えました。
応援ありがとうございます!
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