僕は死んだ。そして転生した。…………エロゲのヒロインとして。

布施鉱平

文字の大きさ
2 / 11

ヤってやろうじゃないか!

しおりを挟む
 前世を思い出したは焦った。
 焦りまくった。

 まず自分が転生したのがリース、つまり前世とは違う『女』という性別であること。
 そして、ボクリースが【ファリアの翼】のサブヒロインであるという現実にだ。

【ファリアの翼】は18禁アダルトゲームである。
 エロゲーである。

 泣きゲーだとは言え、しっかりとエロにも重きが置かれている。
 なにせ官能小説界の鬼才がエロシーンを手がけているのだ。
 それはもうエロエロである。

 サブヒロインであるリースには、当然のようにいくつものエロイベントが用意されていた。
 朝までぶっ通しで犯されたり、後ろに突っ込まれたり、おもちゃで責められたりと、それはもう色々と……

 …………うぅ。

 自分がされている場面を想像したら、サブイボが立った。

 でも……それは、まあ、いい。

 女として転生してしまった以上、いつかは男に組み伏せられ、棒を突っ込まれる日が来るのだ。 
 それが生命の仕組みであり、世界の真理である以上、仕方のないことだとあきらめるしかない。

 だが、男といたすのは百歩……いや一万歩譲ってまだ許せるとしても、許せないのはその致す内容だ。

 のなかで完全に神ゲーとして位置づけされた【ファリアの翼】であるが、どうしても受け入れられない点がひとつだけあった。

 それが、エロのジャンルだ。
 
 この【ファリアの翼】……エロイベントの約六割が『寝取られ』なのだ。

 共に冒険をし、絆を深めてきた仲間達。
 それが、ほんの少しウィルが選択肢を間違えるだけで簡単に寝取られてしまう。

 いい感じの場面で告白をしなかった → 寝取られる
 着替えを覗かなかった → 寝取られる
 訓練に付き合わなかった → 寝取られる

 などなど、厳しすぎる寝取られフラグが無数に散りばめられているのだ。

 僕はプレイしていて、ウィルがかわいそうでならなかった。
 彼は勇者だ。
 厳しい修行を乗り越え、自分の人生を捨ててまで世界のために戦っている。
 
 それなのに、彼の大事な仲間たちは簡単に彼を裏切るのだ。
 最初は騙されたり無理やりだったりと、仕方ない状況の方が多い。
 だが、最終的には心まで寝取られ、自分からウィルではない男を求めるようになるのだ。
 
 あろう事か、ときにはそれをウィルに見せつけながら……
 
 絶望に打ちひしがれるウィルの姿に、僕は深く同情した。
 
 そして、その原因であるヒロイン達には怒りすら覚えた。

『なんでそんな簡単にほかの男に体を許すんだよ!』
『ウィルと築き上げてきた絆はなんだったんだよ!』
『お前らのウィルに対する愛情はその程度かよ!』

 何度心の中で叫んだだろう。
 何度血の涙を流しただろう。

 セーブ、ロードを繰り返し、なんとか寝取られを回避しようと努力しても、ほんの少しのミスでまた寝取られる。

 それがいい! という人も、もちろんいるのだろう。
 だが、僕はダメだった。
 抜けるには抜けたが、芯から気持ちよくはなれなかった。
 
 童貞をこじらせた僕は、ほかの多くの同士がそうであるように処女厨であり、一途至上主義でもあったのだ。
 
 そして、そんな僕が、数多あまたの寝取られフラグを未来に抱えたボクリースになったのである。

 
 …………なって、しまったのである。




 ◇


 不幸中の幸いだったのは、転生したのが他のどのヒロインでもなく【リース】だったことだろうか。

 なぜなら、ほかのヒロイン達と違い、リースだけはどれだけ体をけがされようと絶対に心までは寝取られない、意志の強い女の子だったからだ。

 仲間に裏切られて犯されても、敵に捕まって輪姦まわされても、媚薬で快楽漬けにされて狂いかけても、必死に耐えながら一途にウィルを愛し続ける姿には感動すら覚えた。

 だから、一途っ娘の大好きな僕が一番好きなヒロインは、当然リースだった。

 しかし、好きだったヒロインに転生できたらといって、嬉しいという気持ちは全くない。
 むしろこれから先の事を考えると不安でしかなかった。
 
 人類と魔族はバリバリ戦争中だし、魔王軍の猛攻に人類は押され気味だ。
 我が身可愛さにウィルと関わらない道を選んだところで、結局は魔族に攻め滅ぼされてレイプ三昧だろう。

 それなら、危険とわかっていても【リース】の役を演じきるしかない。

 リースはウィルの幼馴染という性質上、【勇者ウィル】の誕生に深くたずさわる重要なキャラなのだ。
 メインヒロインではないが、その重要度はサブヒロインの中ではダントツに一番だと言っていい。

 なぜなら、ウィルに勇者の証である【聖剣】を抜かせたのは、ほかならぬリースなのだから。

 出来れば、危険なことには関わらず静かに生きていきたい。
 でも、それは無理だ。
 
 ボクがリースとしての役割を放棄してしまえば、おそらく【勇者ウィル】は生まれない。

 そして【勇者ウィル】が生まれなければ、人類は魔王の侵攻に耐えることができないだろう。

 ウィルに関われば危険な目に遭う。
 命の、貞操の、尊厳の危機にさらされる。

 だけど、目を背けて生きるという選択肢は存在しなかった。

 せっかく生まれ変わったのだ。
 何もせずにただ怯え、鬱々とする人生など送りたくはない。

 だから、ボクは決意した。
 精一杯、リースとして生きてやる。
 
 そして、寝取られフラグを全力でへし折ってやる、と。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る

丸三(まるぞう)
ファンタジー
中世近世史を研究する大学講師だった男は、過労の末に倒れ、戦国時代へと転生する。 目覚めた先は、近江・長浜城。 自らの父は、豊臣秀吉の弟にして政権の屋台骨――豊臣秀長。 史実では若くして病没し、豊臣政権はやがて崩れ、徳川の時代が訪れる。 そして日本は鎖国へと向かい、発展の機会を失う。 「この未来だけは、変える」 冷静で現実主義の転生者は、武ではなく制度と経済で歴史を動かすことを選ぶ。 秀長を生かし、秀吉を支え、徳川を排し、戦国を“戦”ではなく“国家設計”で終わらせるために。 これは、剣ではなく政で天下を取る男の物語。 「民が富めば国は栄え、国が栄えれば戦は不要となる」 豊臣政権完成を目指す、戦国転生・内政英雄譚。 ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...