モブ喰い勇者 ~美少女ヒロイン? いえ、興味ありません~

布施鉱平

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地球に残された少女

第二十四話、少女の失ったもの

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「…………優さまぁ…………」

 斉藤裕子は自室のベッドに横たわりながら、今日もその名を呟いた。

 以前であれば心から沸き上がる歓喜とともに呟く名前だが、最近はそうではない。

 彼女の主人(婚姻関係を指す言葉ではない)が失踪してから、はや一年が経とうとしていた。

「うっ……うぅぅ……っ、優さまぁ……」

 優子は、優がいなくなってから毎日泣いていた。
 捨てられた、と思っているのではない。

 優は裕子のことをずっと大切にしてくれていたのだ。
 
 優は、色んなことを教えてくれた(主にセックス関連)。

 色んな場所に連れて行ってくれた(露出&青姦)。

 そして、ずっと一緒にいてくれるとまで言ってくれた(主従契約)。

 優に尽くし、優の為に生きることこそが、裕子の生きる意味だったのだ。
 
「優さまぁ…………優さまぁ…………っ」

 嘆きながら、裕子は自らの胸と下半身に手を伸ばした。
 左手で乳首を捻りあげ、右手でむき出しになったクリトリスを押しつぶす。

「ひぎぃっ! 優さまぁっ!」

 ○学生の時から何百回と抱かれてきた裕子は、優の愛撫を寸分の狂いもなく再現することができた。
 
 優と全く同じ強さで、優と全く同じ速さで。
 裕子は自分の体を慰めることができた。

「あっ、あっ、優さまっ! 優さまっ!」

 胸を揉みしだき。
 乳首に歯を立て。
 三本の指でアナルをかき回し。
 クリトリスを強く弾きながら、高速でGスポットを刺激する。

 ……………………だが、

「うっ…………うぅぅっ…………優さまぁ…………優さまじゃないと、ダメなんです…………ダメなんですよぉ…………」

 裕子は、気持ちよくなれなかった。

 どれだけ優と同じ動きをして見せたところで、裕子は、優ではないのだ。
 
 この一年、裕子は優のいない寂しさを誤魔化そうと一日に何度も自慰をしてきたが、結局一度もイクことができないでいた。

 裕子の体は、完全に優専用にカスタマイズされてしまっていたのだ。

「優さまぁ……ぐすっ……優さまぁ……裕子のマンコに、優さまのおチンポ突っ込んでくださいぃ……グチョグチョに掻き回して、子宮を押しつぶして、いっぱいなか出ししてくださいぃ……」
 
 使い込まれてビラビラのはみ出したマンコを左右に拡げながら、裕子は声を絞り出す。

 …………だが当然、それに応えてくれる彼女の主人は、存在しない。

「うぅっ…………うぁぁっ…………うぁぁぁぁ…………っ!」
 
 悲しくて、寂しくて、心が張り裂けそうだった。
 
 優の為に存在しているマンコなのに、優の為に存在している裕子なのに。

 優さえいれば、他には何も必要ないのに。




 優だけが、いないのだ。




 ◇


 それから数日後。

 裕子の姿は、かつて彼女が在籍していた○学校の教室の中にあった。
  
 ────四年三組
 
 彼女が愛する人に初めてを捧げた、思い出の教室である。

「……………………」

 裕子は随分と狭く感じるようになってしまった教室の窓から、沈みゆく夕日を眺めた。
 
 こみ上げてくるのは懐かしさと愛おしさ、そして底が見えないほど深い悲しみ…………

 小さく息を吐き出すと、裕子は教室の中を移動して窓際の席の横に立った。

 後ろから数えて四番目の席だ。

 この席に座っていた少年に、裕子は恋をしていた。
 
 眉目秀麗で文武両道。
 優しく、社交的で、カリスマ性がある。
 そんな完璧を絵に書いたような少年だった。

 当然スクールカーストの最底辺にいるような裕子とは、釣り合うはずもない。

 裕子自身も、付き合いたいと思っていたわけではなかった。
 手の届かない存在であることは、誰よりも自分がよく知っていたのだ。

「……………………」
 
 当時のことを思い出しながら、裕子は下着を足首の辺りまで引き下ろす。
 そしてスカートの端を咥えて下半身を露出した。

 あの時はつま先立ちをしなければ机の角にマンコが届かなかったが、今は逆に少し膝を曲げなければ届かない。
 
 裕子はややガニ股になると、小さな角にむにっとマンコを押し付けた。

(優くん…………)

 そして頭の中で、当時と同じ呼び方で彼女の主人の名前を呼んだ。

(優くん…………優くん…………)

 腰を揺すりながら、裕子は何度もその名を呼び続けた。


 ────裕子の運命を決めた、あの日と同じように。


 今日、裕子が人気のない小学校に侵入してオナニーをしているのは、寂しさのせいでおかしくなってしまったからではない。

 もう一度、奇跡を起こしたかったからなのだ。

 あの日、裕子が優の机で角オナをしていなかったら、優とセックスすることはなかっただろう。
 それどころか、一度も会話すらしないまま卒業し、別々の人生を歩んでいただろう。

 だから、裕子はありえないと知りつつも、奇跡が起こることを願うしかなかった。

「んっ、んっ、んっ、んっ」

 くちゅくちゅと、教室に水音が響く。

 溢れ出した愛液が、ぽたぽたと教室に滴り落ちる。

 あの日も、こうだった。

 無骨な机の角を優の指だと思い、決して叶うことのない妄想だと知りつつも昂ぶっていった。

 そして────

 ガラリッ

 あの時と同じように、教室の扉が開かれた。

「…………っ!?」

 驚き、中腰のまま振り返る裕子の視界に、人影が映り込む。

「あ、あぁ……」

 裕子の口から、震える声が漏れた。

 なぜならそこには…………









「……ぐへへへっ、お嬢ちゃん。いけないなぁ、こんなところでオナニーなんかして……」










 初恋の人とは似ても似つかない、ハゲでデブで脂ぎった40代くらいのおっさんが、ニヤニヤとイヤらしい笑みを湛えながらスマホを構えていたのだ。
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