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第二章
23話 出会い
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「ん~っふふっふ、ふ~ん」
ここ数日、チロはご機嫌だった。
なにせ、大量の塩の結晶が手に入ったのである。
これまでの『素材の味だけを活かした料理』からグレードアップし、『素材の味を活かした塩味の料理』を作れるようになったのだから、その喜びも当然だと言えた。
飽きるほど食べてきた焼きドリンギも、削った塩をパラリと振るだけであら不思議、あっという間に全く別の食べ物に変身するのである。
「塩って、すごいんだなぁ……」
食事のたびに、チロは塩の偉大さを思い知っていた。
もはや『塩信仰』とでも言ったほうがいいくらいに、チロの塩に対する畏敬の念は膨らんでいた。
洞窟内でも一番の大きさを誇る結晶に、朝晩祈りを捧げるほどである。
「では、いただきます」
チロは塩に感謝し、塩を敬いながら、手を合わせて食前の挨拶をした。
今日のメニューは『ドリンギの塩焼き』に『サツマイモの塩ステーキ』、そしてデザートの『シトラ草の盛り合わせ ~ひとつまみの塩をかけて~』である。
…………いつもの料理にただ塩をかけただけだが、料理チート系の主人公ではないチロに出来るのは、所詮この程度だ。
前世の記憶があるとは言え、頭の中にあるレシピなんてどれもぼんやりしたものだし、そもそも『レシピ通りにちゃんと分量を計って作る』なんて真面目な調理をしたことがない。
クックパッ○に『豚肉150g』と書いてあっても、スーパーで買った豚肉のパックが230gだったら、気にせずそのまま全部使う。
それがチロにとっての『料理』だったのだ。
そんなチロに、『まあ、こんなに美味しい食べ方もあるのね!?』みたいな、奇抜な発想がある訳がない。
食材と塩があるなら、焼いて塩を振って食う。
それだけだ。
だが、それでいいのだ。
余計なことをして貴重な食料を不味くするよりは、なんの捻りもないただの塩焼きのほうがよっぽどマシである。
ガツガツムシャムシャと、チロは塩味のドリンギやサツマイモを頬張り、食後のデザートであるシトラ草に手を伸ばした。
「ん、あれ?」
…………が、その手は、虚しく空を切った。
シトラ草の乗っていた皿は、空になっている。
そしてその代わりに────
「キュアァ」
────皿に前足を乗せ、「もっとよこせ」と言わんばかりに鳴き声をあげる、金色のトカゲがいたのだった。
ここ数日、チロはご機嫌だった。
なにせ、大量の塩の結晶が手に入ったのである。
これまでの『素材の味だけを活かした料理』からグレードアップし、『素材の味を活かした塩味の料理』を作れるようになったのだから、その喜びも当然だと言えた。
飽きるほど食べてきた焼きドリンギも、削った塩をパラリと振るだけであら不思議、あっという間に全く別の食べ物に変身するのである。
「塩って、すごいんだなぁ……」
食事のたびに、チロは塩の偉大さを思い知っていた。
もはや『塩信仰』とでも言ったほうがいいくらいに、チロの塩に対する畏敬の念は膨らんでいた。
洞窟内でも一番の大きさを誇る結晶に、朝晩祈りを捧げるほどである。
「では、いただきます」
チロは塩に感謝し、塩を敬いながら、手を合わせて食前の挨拶をした。
今日のメニューは『ドリンギの塩焼き』に『サツマイモの塩ステーキ』、そしてデザートの『シトラ草の盛り合わせ ~ひとつまみの塩をかけて~』である。
…………いつもの料理にただ塩をかけただけだが、料理チート系の主人公ではないチロに出来るのは、所詮この程度だ。
前世の記憶があるとは言え、頭の中にあるレシピなんてどれもぼんやりしたものだし、そもそも『レシピ通りにちゃんと分量を計って作る』なんて真面目な調理をしたことがない。
クックパッ○に『豚肉150g』と書いてあっても、スーパーで買った豚肉のパックが230gだったら、気にせずそのまま全部使う。
それがチロにとっての『料理』だったのだ。
そんなチロに、『まあ、こんなに美味しい食べ方もあるのね!?』みたいな、奇抜な発想がある訳がない。
食材と塩があるなら、焼いて塩を振って食う。
それだけだ。
だが、それでいいのだ。
余計なことをして貴重な食料を不味くするよりは、なんの捻りもないただの塩焼きのほうがよっぽどマシである。
ガツガツムシャムシャと、チロは塩味のドリンギやサツマイモを頬張り、食後のデザートであるシトラ草に手を伸ばした。
「ん、あれ?」
…………が、その手は、虚しく空を切った。
シトラ草の乗っていた皿は、空になっている。
そしてその代わりに────
「キュアァ」
────皿に前足を乗せ、「もっとよこせ」と言わんばかりに鳴き声をあげる、金色のトカゲがいたのだった。
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