震える転生者

布施鉱平

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震える男

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 やあ、俺の名前はサトル。

 前世では田中さとるって名前だったんだけど、こっちの世界って苗字があるのは貴族だけなんだよね。

 今の前振りで分かると思うけど、そう、俺はなんと異世界に転生した『転生者』なんだ。

 くぅ~、かっこいい!

 もう転生者ってだけで主人公感が半端ないよね。
 
 神様に会ってなにか頼み事されたりとか、特別な使命があったりするわけじゃないけど、ほら、最近は日常系の異世界転生ものも多いじゃない?
 俺も多分そんな感じだと思うわけ。

 ちなみに、俺が新しく生まれ変わったこの世界には、スキルや魔法があったりする。

 なんか神様からの贈り物なんだって。

 だから、この世界の人間は生まれる時に必ず一つスキルを持って生まれてくる。

 そのスキルの善し悪しで人生が決まると言っても過言じゃないくらいに、この世界はスキル格差社会なんだ。

 もちろん、俺も例に漏れずスキルを持って生まれた。

 えっ? 転生者なんだから、さぞやいいスキルを持って生まれたんだろうって。

 ふふふ…………

 聞いて驚け。

 なんと、俺が持って生まれたスキルは────

〈振動:LV1〉!!

 ん? よく分からない?
 
 仕方ないな、詳しく説明してやろう。


--------------------


〈振動:LV1〉

 自分の体の任意の部分を振動させることができる。
 振動の強さは微弱、やや弱、弱の三段階。
 同時に振動させられる数は最大二つ。
 持続時間は最大1分。


--------------------


 どうよ!

 すごいだろ?

 すごいクズスキルだろ!? 

 強さが三段階あるのに、最大が『弱』ってなんだよって思うだろ!?

 ああ、俺だって思ったさ。
 そして試してみたさ。

 対象→指先
 振動→弱

 プルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプル…………

 …………なんていうか、こう、例えるなら、寒気を感じて体がブルッと震えることあるじゃない?
 それが一分くらい続く感じ?

 ちなみに微弱なんて、震えてるのかどうかさえも分からないほどの微振動だった。

 泣いたね。

 物心ついて最初に感じたのは絶望だったね。

 こんなスキルでどうやって生きてけっての?

 親もそう思ったらしく、俺はまだ幼いうちに人買いにドナドナされる羽目になった訳だよ。




 ◇



 
 それから十五年、まあ、色々あった。

 遠洋漁業とか鉱山とかで真面目に一生懸命働いて、なんとか自由を手に入れたのがつい最近のこと。

 自由っていっても、どこの国にも属さない浮民って言われる身分だから、これから生きていくのも超大変な訳だけど、それでも自由は自由だ。

 もう髭モジャのおっさんたちに尻を狙われなくて済むってだけで天国ですよ。

 …………思えば、地獄の日々だったなぁ。

 そんな俺を毎晩慰めてくれたのが、今や心から信頼する相棒である俺のスキル〈振動:LV4〉だ。

 ふふふ…………
 そう、毎日のように発動しまくっていたら、スキルレベルが三つも上昇したのだよ。

 一般的にスキルレベルを1上昇させるのに十年くらいかかると言われているから、十五年で三つも上がったのは驚異的だと言わざるを得ない。

 まあ、毎日毎日使いまくったからなのかもしれないけどさ。

 え? 何に使ったのかって?
 
 それは聞くな。

 察しろ。

 …………話が脱線したが、最初はどうしようもないクズスキルだと思っていた〈振動〉も、レベルが上がるにつれて段々有用なものへと進化していった。

 今回は特別にその詳細を教えてやろう。

 これだ!


--------------------


〈振動:LV4〉

 半径10m以内の任意のものを振動させることができる。
 振動の強さは微弱~中までの無段階。
 同時に振動させられる数は最大五つ。
 持続時間は最大五分。


--------------------


 なんと自分以外のものを振動させられるようになったのだ!

 こいつぁすげぇ…………!

 しかも振動は段階式から無段階に変わって使いやすくなり、振動の強さも最大で『中』まで上がった。
 中は電動マッサージ器くらいの振動だから、もうブルッブルですよ。

 ? そんなもの、なんに使えるのかって?

 そりゃあもう、色々ですよ。

 なにせこっちは十五年掛けて〈振動〉の使い道を模索してきたんだ。

〈振動〉の使い道は、決してあっち方面(意味深)ばかりではないとここに宣言しよう。

 …………さて、独り言はこれくらいにしておこうかな。

 なんだか少し先の方から人の悲鳴らしきものが聞こえてきたし、今こそ〈振動〉の力を試す時だ!

 
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