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再び、震える男
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「い、いやぁ、貴族様にお会いするなんて恐れ多いですから、俺はこの辺で…………」
「まあ、そう言わず。主が是非にもと仰っておりますので、さあ」
相手が貴族だと分かって逃げ出そうとした俺だが、目の前のガインさんとやらはどうもそれを許してくれそうにない。
スキルを説明するのはうやむやになったが、主の元に案内すると言いながら俺の後ろにピッタリくっついているのは、何かあったら即座に斬り殺すつもりなんだろう。
…………だから貴族と関わるのは嫌だったんだ。
〈振動〉を使えば逃げ出せるだろうけど、そんなことしたら間違いなくお尋ね者として手配される。
ここは大人しく従うしかないだろうな。
どうかまともな貴族でありますように…………
追い立てられるように馬車の前に着き、俺は片膝をついて頭を下げた。
「クレアーネ様。旅の者をお連れしました」
「ありがとう、ガイン」
おや、この声は女の子…………それもかなり若い娘だな。
だからといって油断はできないので、声が掛かるまで俺からは何も言わないし顔も上げない。
「旅のお方、どうぞ顔をお上げください。こちらがお礼を言う立場なのですから」
「はっ」
貴族のお嬢さんからお許しが出たので、俺は片膝を付いたまま顔を上げた。
────そして、固まった。
う…………うわぁお、ちょう可愛い…………
この世界は美形が多いんだけど(俺はモブ顔)、その中でも目の前の女の子は群を抜いて綺麗だった。
絹のような銀色の髪、雪のように白い肌、すこし垂れた優しそうな目と、宝石のように輝く緑の瞳。
そして、ほっそりとした体つきとは裏腹に大きな胸…………
この世界の素晴らしいところは、女の人が全員ノーブラなところだといっても過言ではないだろう。
「あの…………?」
はっ! 思わず見とれてしまっていた。
俺は小さく頭を振ると、下がりそうになる視線を意志の力で貴族の女の子の顔に固定した。
「失礼しました。過分なお言葉をいただき、ありがたく存じます」
「あら」
俺が礼儀正しい言葉遣いをしたのが意外だったのだろう。
女の子が小さく驚きの声を上げた。
この世界の冒険者ってほとんどが俺みたいな浮民だから、言葉遣いはおろか字の読み書きさえできないのがほとんどなんだよね。
「うふふ、そんなにかしこまらなくてもいいのですよ。あなたは恩人なのですから。
私はクレアーネ・セルドア・クローネンといいます。お名前を教えていただいても?」
「お…………私は、サトルといいます」
「サトル様…………変わったお名前ですのね」
「クローネン様、どうか私のことはサトルと呼び捨てにしてください」
「でしたら、私のこともクレアとお呼び下さい」
「と、とんでもございません! そのような恐れ多いこと…………!」
なんてこと言うんだこのお嬢さんは!
例え貴族本人がそれでいいと言ったのだとしても、この世界の社会構造自体が、平民が貴族を呼び捨てにすることを許さない。
ましてや、俺は平民以下の浮民なのだ。
もし俺が乗せられるままに「えへ、えへへ、じゃあクレアちゃんって呼んじゃおうかなぁ」なんて言ってみろ。
間違いなく俺の後ろに立っている騎士からバッサリ切り捨てられるぞ。
「そうですか? 残念です…………」
なんかちょっとしょんぼりしちゃってるのは可愛そうだが、俺も命がかかってるんだ。
勘弁してもらおう。
「えー、あの、クローネン様。私はそろそろ失礼させていただいて…………」
「あっ、ダメです! ちゃんとお礼をさせていただかないと!」
えぇぇぇぇっ、もう、勘弁してよ…………
クレアちゃんは可愛いんだけど、君と話すのは心臓に悪いんだよ…………
俺はちらっと後ろに立っている騎士、ガインさんに視線を飛ばした。
それを受けて、ガインさんも察してくれたんだろう。
小さく頷くと、クレアちゃんに声を掛ける。
「クレアーネ様。この者には、私の方から報奨を渡しておきますので…………」
「それもダメです! お爺様も、恩を受けたらそれ以上の恩を持って返すようにと仰ってます!
…………あっ、そうだ、サトルさんはこれからどちらに向かわれる予定ですか?」
「えっ、いえ、特に決まっては…………」
「あぁ、よかった。でしたら────────我が家にご招待致しますわ」
…………〈振動〉も使っていないのに、俺の背筋に震えが走った。
「まあ、そう言わず。主が是非にもと仰っておりますので、さあ」
相手が貴族だと分かって逃げ出そうとした俺だが、目の前のガインさんとやらはどうもそれを許してくれそうにない。
スキルを説明するのはうやむやになったが、主の元に案内すると言いながら俺の後ろにピッタリくっついているのは、何かあったら即座に斬り殺すつもりなんだろう。
…………だから貴族と関わるのは嫌だったんだ。
〈振動〉を使えば逃げ出せるだろうけど、そんなことしたら間違いなくお尋ね者として手配される。
ここは大人しく従うしかないだろうな。
どうかまともな貴族でありますように…………
追い立てられるように馬車の前に着き、俺は片膝をついて頭を下げた。
「クレアーネ様。旅の者をお連れしました」
「ありがとう、ガイン」
おや、この声は女の子…………それもかなり若い娘だな。
だからといって油断はできないので、声が掛かるまで俺からは何も言わないし顔も上げない。
「旅のお方、どうぞ顔をお上げください。こちらがお礼を言う立場なのですから」
「はっ」
貴族のお嬢さんからお許しが出たので、俺は片膝を付いたまま顔を上げた。
────そして、固まった。
う…………うわぁお、ちょう可愛い…………
この世界は美形が多いんだけど(俺はモブ顔)、その中でも目の前の女の子は群を抜いて綺麗だった。
絹のような銀色の髪、雪のように白い肌、すこし垂れた優しそうな目と、宝石のように輝く緑の瞳。
そして、ほっそりとした体つきとは裏腹に大きな胸…………
この世界の素晴らしいところは、女の人が全員ノーブラなところだといっても過言ではないだろう。
「あの…………?」
はっ! 思わず見とれてしまっていた。
俺は小さく頭を振ると、下がりそうになる視線を意志の力で貴族の女の子の顔に固定した。
「失礼しました。過分なお言葉をいただき、ありがたく存じます」
「あら」
俺が礼儀正しい言葉遣いをしたのが意外だったのだろう。
女の子が小さく驚きの声を上げた。
この世界の冒険者ってほとんどが俺みたいな浮民だから、言葉遣いはおろか字の読み書きさえできないのがほとんどなんだよね。
「うふふ、そんなにかしこまらなくてもいいのですよ。あなたは恩人なのですから。
私はクレアーネ・セルドア・クローネンといいます。お名前を教えていただいても?」
「お…………私は、サトルといいます」
「サトル様…………変わったお名前ですのね」
「クローネン様、どうか私のことはサトルと呼び捨てにしてください」
「でしたら、私のこともクレアとお呼び下さい」
「と、とんでもございません! そのような恐れ多いこと…………!」
なんてこと言うんだこのお嬢さんは!
例え貴族本人がそれでいいと言ったのだとしても、この世界の社会構造自体が、平民が貴族を呼び捨てにすることを許さない。
ましてや、俺は平民以下の浮民なのだ。
もし俺が乗せられるままに「えへ、えへへ、じゃあクレアちゃんって呼んじゃおうかなぁ」なんて言ってみろ。
間違いなく俺の後ろに立っている騎士からバッサリ切り捨てられるぞ。
「そうですか? 残念です…………」
なんかちょっとしょんぼりしちゃってるのは可愛そうだが、俺も命がかかってるんだ。
勘弁してもらおう。
「えー、あの、クローネン様。私はそろそろ失礼させていただいて…………」
「あっ、ダメです! ちゃんとお礼をさせていただかないと!」
えぇぇぇぇっ、もう、勘弁してよ…………
クレアちゃんは可愛いんだけど、君と話すのは心臓に悪いんだよ…………
俺はちらっと後ろに立っている騎士、ガインさんに視線を飛ばした。
それを受けて、ガインさんも察してくれたんだろう。
小さく頷くと、クレアちゃんに声を掛ける。
「クレアーネ様。この者には、私の方から報奨を渡しておきますので…………」
「それもダメです! お爺様も、恩を受けたらそれ以上の恩を持って返すようにと仰ってます!
…………あっ、そうだ、サトルさんはこれからどちらに向かわれる予定ですか?」
「えっ、いえ、特に決まっては…………」
「あぁ、よかった。でしたら────────我が家にご招待致しますわ」
…………〈振動〉も使っていないのに、俺の背筋に震えが走った。
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