オニの世、ヒトの世〜恋情の思慕〜

冬月紫音

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龍と晴と華夜

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事態はもっと大きくなりそうだった。

「とにかくその組織レボルトを潰さないとダメだな。それを潰さないとお前も帰れなくなるのももちろんだが、せっかく俺や晴が考えたオニの未来が潰れる。」
「いや、私はまだ帰るなんて一言も…」
「それでもだ。んー思ったより問題は大きいな…。多分俺たちだけで動くレベルじゃないのは分かってる。でもこれを親父に言ってもすぐには動けない。オニの側で調べてくれるとは思うが、レボルトの一員になってるオニが判明するまで大きくは動けないだろうし…。まぁ、案外どっかで話は聞いてて少し動いてるような気もするがな。」
「多分僕の父さんは知ってる気がするよ。いつも何にも言わないけど大概のことは知っているからね。」
「知ってて俺たちにヒトの説得に行かせたのかもな…。」

二人の言う意味が分からなかった。
私の知っている龍と晴のお父様はとても優しくていつも私を可愛がってくれたイメージしかない。
そんな私の表情が分かったのか、龍は呆れたように笑った。

「俺や晴の親父はやっぱりオニの世の政治のトップにいるだけあって、腹ん中隠すのが上手いんだよ。一緒に働くようになって1番キツくて怖かったのは俺達の親父だ。笑顔で俺たちの考えをぶった斬るからな。お前の前で見せていた顔も嘘じゃない。でも仕事モードに入ったあの人達はやっぱり日頃とは違ったんだよ。」
「そうだね…。全然違ったね…。」

なんか遠い目をする晴を見るとどういう表情をすればいいのか分からなかった。

「そっか、大変?だったんだね…?」
「まあな。」
「そうだね…。」

二人は一緒に苦笑いした。

「でもそれはお前の親父さんにも言えることだからな。」
「え…?」
「お前の親父さんも官僚だ。腹の探り合いを経験してきている。だからこそ本心を隠すのも上手い。あの人も相当厳しかった。でも本心はお前をずっと心配している。それだけは分かってあげろよ。否定するなよ…。」

言葉が出なかった。
頷くことも出来ずに俯いた。
二人が私に良いように嘘をついているのかもしれないとも思った。
でも嘘をつく必要もない。
だから本当のことだと信じたいけど、でもまだ心にあるトゲは抜けないのだ。

「努力はする…。」

やっと言えた言葉だった。
信じないとも言えない私は本当に甘い…。
あんなにあの瞬間、心がバラバラになる程ショックだったのに時間が経つとやはり少しあのショックを忘れているんだろうか…。

「まぁ、それでいい。とにかくその男?夜行ってやつは注意しろ。」
「そうだよ。向こうは華夜ちゃんを狙ってる。もしかすると僕たちが接触したこともすぐ勘付くかもしれない。そうなった時に強行するかもしれないんだ。あと僕たちのことを調べたら重要人物なのはわかるはず。そのために脅す材料で選ぶかもしれない。思った以上に華夜ちゃんは危険な立場だからね。」
「注意ったって、仕事に行かないわけにはいかないし、なるべく顔を合わせないとようにするぐらいしか出来ないよ?それも一応やってきたけど、上手くいってないし…。」
「それが疑問なんだよな…。気配を消せたとしてもヒトであるオーラは消せないはず。華夜みたいに幻惑が使えるならわかるが、そいつの能力は重力。華夜と同じ幻惑が使えるなら俺たちみたいに幻惑が使えないオニやヒトには通用しても同じ幻惑が使える華夜には通用しないはずなんだけどな…。」
「もしかすると何か違う能力が使えるのかもしくは他に協力している奴が変わった能力を持っているのかもしれないね。とにかくこのデータは正しくないのは分かったよ。やっぱりデータを作るのに他のやつを信用しちゃいけないね。」

どうも思った以上に晴は怒っているみたいだ。
晴は昔から賢くて、賢すぎるせいで同じ年の子達を下に見ることがあった。
私達は昔から一緒にいることもあったので、そういうことは無かったけど、他の同級生達はあまり信用しようとはしなかった。
他の人とするぐらいなら自分でするというのが彼のルールだった。

「ダメだよ。そんなこと言っちゃ。そのオニ達も一生懸命調べてくれた方もいるかもしれないでしょ?だって晴ですらこのことに気づかないぐらいギリギリの水面下で計画されていたのなら協力させられていたことも分からないかもしれないじゃない?」
「まぁ、そうだけど…。」
「昔からそうだけど、晴は他のオニを信用することも大事だって私何回も言ってきたと思うよ?」
「ごめん…。分かってる…。たしかにそうだよね。僕も気づかなかったから協力させられていることも分からない可能性もあるってことか…。んじゃ余計オニ側の協力者なんて見つけにくいじゃん。」

確かにそうだ。
細かく注意深い晴がデータが不完全なものだって気付かなかったのは本当に大変なことだろう。

「いや、これが逆に親父達の考えなのかもな…。」
「どういうこと…?」
「多分親父達も分かってるんだ。だからあの会議の場で俺たちに言ってたんだよ。『この案がとおらなければ変わり者として政界から外される』って。それは多分政界って言ったけど、オニの世からって意味と同じだ。俺や晴はただでさえそれぞれの親父の息子ってだけで目立つのに俺達が政界から外されたら多分俺達をのことなんてどのオニも信用しない。きっとオニの世から出されるようなもんだ。だからその組織をあえて人間の世から見ろってことじゃないかと思う。多分親父達もオニ側の方をある程度絞ってはいるだろうけど、決定的な証拠がつかめていない。だからこそ俺たちが動いてその証拠を掴んで、隙があれば潰せってことが含まれている気がするわ。」

そういうと龍は自分の髪をぐしゃぐしゃにした。
「こうなったらやってやろうじゃん!」
「そうだね。そうしないとダメっぽいよね。ていうかあの人達も本当に意地が悪いね…。」
「そうだな。」
「意地が悪い…?」
「だって僕達、華夜ちゃんに会わなかったらこのことに気づかなかったんだよ?ということはきっと出会うってことも想定済みだったんじゃないかなって思う…。」
「なるほど…。なんかすごい人達だったんだね…。」
「ああ。全然勝てねぇ。でもいつか追い抜いてやるけどな。」

龍はニカッと笑った。
晴はその表情につられて笑った。

そうだった。私達はいつもこうやって色々話し合って問題を解決してきたんだった。
私はやっぱり少し昔のことを忘れてきているのかもしれない。
だからこそこんな前あったいつもの風景に気づけなかった。
ならもしかすると…。

「うん。決めた…。」
「どうした?華夜?」
「どうしたの…?」
「うん。このことが解決したら家族に会うよ…。色々気づけなかったこともあの時あったのかもしれない。今すぐに会えなくてもこのことが解決したらまた気持ちが変わっているかもしれない…。私もヒトの立場としてオニ側に協力する。レボルトとは逆の考えだけどね。そして解決したら一回家に戻るよ。それでどうするか考える…。それで良い…?」
「あぁ!」
「うん!」

そう言って三人共笑顔になった。
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