復讐の剣、偽りの仲間 ~魔王討伐の報酬は、勇者の首~

kidosan

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サヴァン少年期

安寧を求めて

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   *********


「―――サヴァンに盗賊の道は……合わない。 いや、合ってはならないのだ。 俺は父として、アイツに真っ当な人生を歩んでもらいたい。 それにアイツには戦闘の才能がある。 それも俺、いや先代を遥かに超えてしまう才能が。 一度ヒトを殺せば最後、アイツは過去の俺と同じになる。 絶対にそうさせてはならない……」
「なるほど。 分かった気が……します」
「お前ほんと察しがいいな」

 ヴェルの額から出た汗が彼の頬を伝う。
 王国を脅かす盗賊団の首領が、我が息子を思いやるその姿にヴェルは驚愕したのだ。
 そしてヴェルは頬の汗を拭うと、ゴランドの目を見つめた。
 それに応えるようにゴランドは、こう言葉を返す。

「相性だけでいえば、戦闘の才能のあるサヴァンに盗賊は合っているかもしれん。 ただ、その才能を略奪のみで終わらせてはならない。 民を救う、かの勇者のような存在になるべきなのだ。 サヴァンには、その資格がある。 そこでだ……」

 ゴランドは一息置くと、再び口を開けた。

「お前に“サヴァンを任せる”」
「えっ!? それはどういう……」

 ゴランドはしばらく沈黙した後に、腰のポケットから鞘の付いた短剣を取り出した。
 そしてそれをヴェルのてのひらに置き、彼にこう告げる。

「俺は多分……そう長くは生きれまい。 それと2日後、俺が姿を見せなかったらサヴァンとサーヴェを連れて基地から出ていってくれ。 それもなるべく遠くにだ。 あと、この短剣をお前に託す。 売ろうが俺は構わん。 好きに使ってくれ」
「ま、待ってください! 首領は一体……何をしようとしているのですか!?」
「グロフィン盗賊団を解散させる。 そしてその“けじめ”を俺は付けるつもりだ」

 ゴランドはそれ以上は何も言わず、その場から立ち去った。
 そんな中ヴェルはその場に立ち尽くしたまま、重い足取りで基地の方へと向かっていくゴランドの姿を目で追っているだけだった。



   *********



 ~グロフィン盗賊団基地 作戦会議室にて~


「ふ、ふざけんじゃぁねぇ! 盗賊団を解散するだぁ!? おい」
「笑えない冗談はよしてくれ。 家族だっていんだぞコッチは?」

 当然、こうなるであろうことは知っていた。

 盗賊団が無くなると言うことは、それに属する皆の食い扶持がなくなるということ。 それを何の脈絡もなしに言い渡せば、異議を唱える者はこうして出てくるだろうということは最初から分かっていたのだ。
 
 ただ、もう決めた事だ。 貫き通すしかない。 
 幸い、財宝や金銭の貯蓄はまだある。 
 それを全て、盗賊団員全員に平等に配当すれば済むだろうか。
 いや、だがそれで済む訳がない……ここはやはり、“奥の手”を使うしかない。 

「皆、よく聞いてくれ。 明朝、近衛兵の大隊と共に国宝が積められている馬車がこの近くを通る。 俺は単独でそれらを襲撃し、そして国宝を手に入れる。 ……この意味が分かるな?」
「へぇ、国宝か。 売ったら80億ヴェニーはくだらねぇ代物じゃぁねぇか?」
「ほぅ。 それで得た金を俺らに割譲するってんだな? ンなら意義ねぇぜ」
 
 部下のその言葉にゴランドは、小さく頷く。
 そしてその場から立ち去り、家族の元へと向かった。




   *********



「サヴァンよ……父さんは明日、仕事に出る。 今までよりも過酷で危険な仕事にだ。 もしかすると戻ってこれんかもしれん。 なに、心配するな。 必ず生きて帰ってみせるさ」
「はい父さん。 どうかご無事で!」

 
 この時のサヴァンには知る由もなかった。
 彼の父が明日、亡骸となって此処に帰ってくることを。
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