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4.最低な夫と可愛い子どもたち(r-18)
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この世の人間には男女の性別以外に、アルファ、ベータ、オメガの性質がある。
全体の約十%しかいないとされるアルファ、全ての能力値が高く生まれながらのエリート。皇族や国の中心を担う者たち、歴史に名を残す者たちがそれに当たり、『世界の宝』とされている。
全体の大多数を占めるベータ、中間層でありアルファに敵うことはないが、本人の努力次第でいくらでも高みを目指すことが出来る。
全体の約数%しかいないとされるオメガ、数ヶ月に一度発情期を迎え、性別問わず子を孕むことが出来る神秘的な肉体を持つ。オメガが僅かに発するフェロモンは宝であるアルファを狂わせることから、過去には社会的に冷遇されることが多かった。だが、ここ一世紀ほどは『オメガのアルファ出生率の高さ』が注目されたことでオメガの地位が変わり、アルファ内で強く求められるようになった。
僕はそのオメガだ。
普通、オメガと分かった時点で多くのアルファから釣書が届き、一番良い条件を出したところに嫁ぐ。僕の元にも多くの釣書が届いた。
だが、僕の家族はなるべく僕の幸せを優先する人たちだったから、僕が自ら選べるようになるまで保留にしてくれていたのだ。僕はその心遣いが嬉しくて、両親に甘えさせてもらうことにした。だって、オメガと分かったのは十五歳。まだまだ子どもの域を脱せない年齢で一生を決められるのは気が重すぎる。
だから、甘えさせてもらった。
しかし、一年経った頃、それをよく思わないアルファがいたらしく、両親に借金を負わせて自分の元に来るように仕向けた人間がいた。
――そろそろ私のプロポーズを受けてくれ。でなければもっともっとお前の大切な両親を苦しめてしまいそうだ。
下卑た笑顔でそう言ってきたのは侯爵家の男だった。
両親をもっと苦しめると暗喩された僕は、男のプロポーズを受けるしかなかった。
一生懸命覚悟した。だが、その覚悟は一瞬で消え去る。
テオが、僕にプロポーズをしたのだ。大公子に敵う人間はいない。皇族が対等に立てるレベルだ。
侯爵も僕たちも何も反論も意見も出来ず、テオのプロポーズを受けるしかなかった。
僕としては下卑た男よりも断然テオの方がマシだと思った。テオのことは正直何も知らず、大公子であることしか知らなかった。伯爵家のオメガが皇帝と対等と言われる大公家に嫁ぐことに不安はあったが、下卑た男に蹂躙され支配されるよりは良かった。それに、テオは両親と領地も守ると誓ってくれた。手を取らない理由がなかった。
瞬時にそう判断しテオに嫁いだが、テオは最低だった。数日間のうちに手続き関係を全て終わらせると、無理やり発情期を誘発してきて番にしたのだ。その上、初めてだと伝えたのに、初夜から一週間ベッドの上から出してもらえなかった。無理やり誘発された発情期だから長引き、テオもラットを起こしたのかと思ったが、その後も毎晩のように抱かれ、毎朝起き抜けに全身を舐められ、飲まれるようになった。嫌だと言っても力づくで拘束されて、好き放題快感を教え込まれ引き出された。
毎晩テオに抱かれ、毎回中に出され、ほぼ毎回気絶しているせい……いや、おかげで、僕とテオには三人の子どもがいる。
十六で結婚して、十七で男の子リアムを、十九で女の子と男の子の双子を産んだ。女の子がレオニーで、男の子がリュカと言う。
リアムは今年で五歳になった。乳母や侍女から聞くリアムは、勉学や剣術が優秀だが、あまり人と関わらないらしい。一人でいることが好きなのだと聞いた。テオに出された授業が終われば、基本的には庭園や図書館で本を読んでいる。たまに皇居へ行き同年代の皇子たちと遊んでいるが、自ら誰かと関わっていくことはあまりないらしい。
テオに子育ての許可を得てから、僕はまずリアムの元へ向かった。
侍女に聞いていた通り、今日は庭園にある東屋で読書をしていた。
今は夏が終わり過ごしやすい季節。外に出れば陽射しは心地良く風は穏やかだ。
「リアム」
名前を呼べば、すぐに小さな頭が上がった。
僕に似た銀色の髪と大きな瞳、ふくよかな丸い頬、可愛いが詰まった姿に、胸がきゅうっとなった。
「……母さま?」
突然の僕の登場にリアムは驚き、次いで血の気を引かせた。その変わりように僕も驚き、駆け足で近寄った。
「リアム? どうしたの?」
座るリアムの前にしゃがみ込んで、優しく手を取る。見上げた顔は真っ白だ。
「母さま、今日って、お茶会、でしたか? ぼく、僕、忘れて」
「あ」
リアムがなぜ突然顔面蒼白になったか合点がいく。
僕と子どもたちは月に二回、お茶会を開いている。そのタイミングしかテオから許可が降りなかったからだ。三人とも僕を母として見てくれているけど、存分に時間を取ることは出来ないし、すぐにテオから引き離されてしまう。それでも三人はこの時間をとても大切にしてくれていた。
リアムはその日時を間違えたのだと勘違いしたらしい。
僕は落ち着かせるように、「違うよ」と早口に説明する。
「今日はお茶会はないよ。ただ、父様から子どもたちと好きな時に好きなように過ごして良いとお許しをもらったんだよ。だからすぐに皆に会いに来た」
「……え、ほんとう? これから、好きなときに会えるんですか?」
「うん。僕も会いに行くし、リアムも会いに来て」
「ほんとうに?」
力強く頷けば、リアムの顔にようやく血の気が戻る。真っ白から普段の温かみが感じられる色味になった。
「リアムが良ければ、レオニーとリュカのところに行って一緒に遊ばない?」
リアムは嬉しそうに頷いた。その手を取って繋げば、もっと良い笑顔を見せてくれる。
レオニーとリュカは子ども部屋にいた。双子の女の子と男の子は僕とテオに似ている。ただ黒髪に赤い瞳をしているため第一印象としてはテオ似に見えてしまう。
二人はリアムと同じように僕の登場に驚いたが、これからは好きな時に一緒に過ごせることを伝えれば飛び跳ねて喜んでくれた。
レオニーに至っては「抱っこ!」とせがんでくる。女の子だが、その姿はやんちゃな男の子のようだった。リュカはレオニーを羨ましそうに見たので、三人揃って抱きしめた。
「可愛いな~。今までごめんね。これからはずっと一緒にいようね」
僕はその言葉通り、好きなように子どもたちに会いに行った。
朝昼晩と一緒にご飯を食べて、勉強の時間以外は一緒に遊んだ。
今までの生活とは全く違う。だって、毎晩抱かれるから疲弊して朝起きるのは遅いし、起きたとしても飲むまで舐められ続けてまた体力は消耗するし、日中はテオに請われるがままテオの洋服やハンカチに刺繍をしまくるか、テオの休憩時にまた舐められて飲まれるかしかしていない。
だから、子どもたちとの時間が取れて、色々なテオとの行為に「嫌」と拒否をし受け入れてもらえている今が、とても充実している。今まではテオが怖くて借金を肩代わりしてくれたテオの機嫌を損ねたくなくて、いつもテオの言う通りにしてきたけど、愛されているのだと知ってからは怖さが半減……いや、なくなった。テオはちゃんと話も聞いてくれるしお願いすればちゃんと話してくれる。家族としても夫夫としてもようやく進め出せたと思う。
……ただ、一つ不満があるとすれば、僕が部屋を出る度に護衛が二人もついて回ることだ。
高位貴族の家がどのようにしているか分からないけど、毎回毎回屋敷の中で護衛されるものだろうか。しかも、その護衛二人は大公家が抱える騎士団の筆頭団員。要は騎士団内で特に能力が高く強いということだ。そんな筆頭団員を僕の専属にさせる意味が分からない。しかも本当に彼らは優秀で、足音も気配もしないからたまに本気で驚いてしまう。
テオに「屋敷内で護衛はいらない」と言っても、「ダメだ」の一点張り。護衛からも「伴侶様に何かあったら世界が崩壊しますので」と言われてしまった。
「リュシー、おいで」
「……行きません」
「どうして? 今からは夫夫の時間だ」
夜、子どもたちが寝たのを確認してから二人の私室に戻れば、すぐに手招きされる。テオがいる場所は浴室に続く扉の前だ。嫌な予感しかしない。
「約束しただろ? 他人とはしないこと、出来ないことは必ずする。リュシーは俺以外と風呂に入るのか?」
他人とは出来ないこと、しないこと。
結婚する際に約束させられたそれは、意味もよく分からないまま交わした。そもそも何を指しているかも分からなかったし。
だが、蓋を開けてみれば随分と破廉恥なことばかりだった。
一緒に風呂に入るだの、飲ませるだの、……色々。
「でも、入ると、いつも好き勝手するじゃないですか」
「もちろんする。夫夫間でしか出来ないことだしな」
「何もしないなら一緒に入ります。もしするなら、明日は無視します」
「分かった。手は出さない。だから一緒に風呂に入ろう」
両手を上げてそう言ったくせに、テオは風呂に入った瞬間アルファのフェロモンを発して、軽い発情を促してきた。オメガの本能――子を孕みたい欲が刺激されてしまう。
「……っばか! ばか!」
「何が?」
「なんで! もう! 本当にばか!!」
僕は自分からテオを求めてしまった。大きく固い裸体に抱きつき、濡れてくる下半身を押し付ける。クラクラして、テオのことしか考えられなくて、テオへの罵倒はもう出てこない。
自分のアルファが孕ませる準備が出来ていると教えてくれるフェロモンを感じて、冷静でいられるオメガはいない。
「テオ、我慢、できない」
「あぁ、気持ち良くしようか?」
「ん、して――ん」
荒々しく口付けをされる。口内を舐め回されて、舌を甘噛みされる。同時に濡れた後孔に指を入れられ掻き回される。
「ぁ、ぁ、あ、あっ、ん」
指の動きに合わせて声が出る。何年間も男に、テオに慣らされた体はあっという間に熱を持って受け入れる準備を始めた。より奥へ差し入れやすいように自然と両足を開く。自分からも腰を揺らしてしまう。
「リュシー、挿れてもいいか?」
「ん、いぃ、いれて」
立ったまま、抱き合う。片足を持ち上げられるとすぐに怒張がはいってきた。
「――っ!」
「――は、ぁ。あぁ、リュシーの中は最高だな」
目の前がチカチカする。お腹いっぱいになる。
「テオ、テオっひ、っゔ! あぁ!」
律動が始まる。もう、気持ち良いことしか分からない。
「手を出さない」という言葉だけでは足りないのだと学んだけど、世間知らずな僕がテオに勝てるわけもなく、その後も何度も何度も騙されては好き勝手されるのだった。
全体の約十%しかいないとされるアルファ、全ての能力値が高く生まれながらのエリート。皇族や国の中心を担う者たち、歴史に名を残す者たちがそれに当たり、『世界の宝』とされている。
全体の大多数を占めるベータ、中間層でありアルファに敵うことはないが、本人の努力次第でいくらでも高みを目指すことが出来る。
全体の約数%しかいないとされるオメガ、数ヶ月に一度発情期を迎え、性別問わず子を孕むことが出来る神秘的な肉体を持つ。オメガが僅かに発するフェロモンは宝であるアルファを狂わせることから、過去には社会的に冷遇されることが多かった。だが、ここ一世紀ほどは『オメガのアルファ出生率の高さ』が注目されたことでオメガの地位が変わり、アルファ内で強く求められるようになった。
僕はそのオメガだ。
普通、オメガと分かった時点で多くのアルファから釣書が届き、一番良い条件を出したところに嫁ぐ。僕の元にも多くの釣書が届いた。
だが、僕の家族はなるべく僕の幸せを優先する人たちだったから、僕が自ら選べるようになるまで保留にしてくれていたのだ。僕はその心遣いが嬉しくて、両親に甘えさせてもらうことにした。だって、オメガと分かったのは十五歳。まだまだ子どもの域を脱せない年齢で一生を決められるのは気が重すぎる。
だから、甘えさせてもらった。
しかし、一年経った頃、それをよく思わないアルファがいたらしく、両親に借金を負わせて自分の元に来るように仕向けた人間がいた。
――そろそろ私のプロポーズを受けてくれ。でなければもっともっとお前の大切な両親を苦しめてしまいそうだ。
下卑た笑顔でそう言ってきたのは侯爵家の男だった。
両親をもっと苦しめると暗喩された僕は、男のプロポーズを受けるしかなかった。
一生懸命覚悟した。だが、その覚悟は一瞬で消え去る。
テオが、僕にプロポーズをしたのだ。大公子に敵う人間はいない。皇族が対等に立てるレベルだ。
侯爵も僕たちも何も反論も意見も出来ず、テオのプロポーズを受けるしかなかった。
僕としては下卑た男よりも断然テオの方がマシだと思った。テオのことは正直何も知らず、大公子であることしか知らなかった。伯爵家のオメガが皇帝と対等と言われる大公家に嫁ぐことに不安はあったが、下卑た男に蹂躙され支配されるよりは良かった。それに、テオは両親と領地も守ると誓ってくれた。手を取らない理由がなかった。
瞬時にそう判断しテオに嫁いだが、テオは最低だった。数日間のうちに手続き関係を全て終わらせると、無理やり発情期を誘発してきて番にしたのだ。その上、初めてだと伝えたのに、初夜から一週間ベッドの上から出してもらえなかった。無理やり誘発された発情期だから長引き、テオもラットを起こしたのかと思ったが、その後も毎晩のように抱かれ、毎朝起き抜けに全身を舐められ、飲まれるようになった。嫌だと言っても力づくで拘束されて、好き放題快感を教え込まれ引き出された。
毎晩テオに抱かれ、毎回中に出され、ほぼ毎回気絶しているせい……いや、おかげで、僕とテオには三人の子どもがいる。
十六で結婚して、十七で男の子リアムを、十九で女の子と男の子の双子を産んだ。女の子がレオニーで、男の子がリュカと言う。
リアムは今年で五歳になった。乳母や侍女から聞くリアムは、勉学や剣術が優秀だが、あまり人と関わらないらしい。一人でいることが好きなのだと聞いた。テオに出された授業が終われば、基本的には庭園や図書館で本を読んでいる。たまに皇居へ行き同年代の皇子たちと遊んでいるが、自ら誰かと関わっていくことはあまりないらしい。
テオに子育ての許可を得てから、僕はまずリアムの元へ向かった。
侍女に聞いていた通り、今日は庭園にある東屋で読書をしていた。
今は夏が終わり過ごしやすい季節。外に出れば陽射しは心地良く風は穏やかだ。
「リアム」
名前を呼べば、すぐに小さな頭が上がった。
僕に似た銀色の髪と大きな瞳、ふくよかな丸い頬、可愛いが詰まった姿に、胸がきゅうっとなった。
「……母さま?」
突然の僕の登場にリアムは驚き、次いで血の気を引かせた。その変わりように僕も驚き、駆け足で近寄った。
「リアム? どうしたの?」
座るリアムの前にしゃがみ込んで、優しく手を取る。見上げた顔は真っ白だ。
「母さま、今日って、お茶会、でしたか? ぼく、僕、忘れて」
「あ」
リアムがなぜ突然顔面蒼白になったか合点がいく。
僕と子どもたちは月に二回、お茶会を開いている。そのタイミングしかテオから許可が降りなかったからだ。三人とも僕を母として見てくれているけど、存分に時間を取ることは出来ないし、すぐにテオから引き離されてしまう。それでも三人はこの時間をとても大切にしてくれていた。
リアムはその日時を間違えたのだと勘違いしたらしい。
僕は落ち着かせるように、「違うよ」と早口に説明する。
「今日はお茶会はないよ。ただ、父様から子どもたちと好きな時に好きなように過ごして良いとお許しをもらったんだよ。だからすぐに皆に会いに来た」
「……え、ほんとう? これから、好きなときに会えるんですか?」
「うん。僕も会いに行くし、リアムも会いに来て」
「ほんとうに?」
力強く頷けば、リアムの顔にようやく血の気が戻る。真っ白から普段の温かみが感じられる色味になった。
「リアムが良ければ、レオニーとリュカのところに行って一緒に遊ばない?」
リアムは嬉しそうに頷いた。その手を取って繋げば、もっと良い笑顔を見せてくれる。
レオニーとリュカは子ども部屋にいた。双子の女の子と男の子は僕とテオに似ている。ただ黒髪に赤い瞳をしているため第一印象としてはテオ似に見えてしまう。
二人はリアムと同じように僕の登場に驚いたが、これからは好きな時に一緒に過ごせることを伝えれば飛び跳ねて喜んでくれた。
レオニーに至っては「抱っこ!」とせがんでくる。女の子だが、その姿はやんちゃな男の子のようだった。リュカはレオニーを羨ましそうに見たので、三人揃って抱きしめた。
「可愛いな~。今までごめんね。これからはずっと一緒にいようね」
僕はその言葉通り、好きなように子どもたちに会いに行った。
朝昼晩と一緒にご飯を食べて、勉強の時間以外は一緒に遊んだ。
今までの生活とは全く違う。だって、毎晩抱かれるから疲弊して朝起きるのは遅いし、起きたとしても飲むまで舐められ続けてまた体力は消耗するし、日中はテオに請われるがままテオの洋服やハンカチに刺繍をしまくるか、テオの休憩時にまた舐められて飲まれるかしかしていない。
だから、子どもたちとの時間が取れて、色々なテオとの行為に「嫌」と拒否をし受け入れてもらえている今が、とても充実している。今まではテオが怖くて借金を肩代わりしてくれたテオの機嫌を損ねたくなくて、いつもテオの言う通りにしてきたけど、愛されているのだと知ってからは怖さが半減……いや、なくなった。テオはちゃんと話も聞いてくれるしお願いすればちゃんと話してくれる。家族としても夫夫としてもようやく進め出せたと思う。
……ただ、一つ不満があるとすれば、僕が部屋を出る度に護衛が二人もついて回ることだ。
高位貴族の家がどのようにしているか分からないけど、毎回毎回屋敷の中で護衛されるものだろうか。しかも、その護衛二人は大公家が抱える騎士団の筆頭団員。要は騎士団内で特に能力が高く強いということだ。そんな筆頭団員を僕の専属にさせる意味が分からない。しかも本当に彼らは優秀で、足音も気配もしないからたまに本気で驚いてしまう。
テオに「屋敷内で護衛はいらない」と言っても、「ダメだ」の一点張り。護衛からも「伴侶様に何かあったら世界が崩壊しますので」と言われてしまった。
「リュシー、おいで」
「……行きません」
「どうして? 今からは夫夫の時間だ」
夜、子どもたちが寝たのを確認してから二人の私室に戻れば、すぐに手招きされる。テオがいる場所は浴室に続く扉の前だ。嫌な予感しかしない。
「約束しただろ? 他人とはしないこと、出来ないことは必ずする。リュシーは俺以外と風呂に入るのか?」
他人とは出来ないこと、しないこと。
結婚する際に約束させられたそれは、意味もよく分からないまま交わした。そもそも何を指しているかも分からなかったし。
だが、蓋を開けてみれば随分と破廉恥なことばかりだった。
一緒に風呂に入るだの、飲ませるだの、……色々。
「でも、入ると、いつも好き勝手するじゃないですか」
「もちろんする。夫夫間でしか出来ないことだしな」
「何もしないなら一緒に入ります。もしするなら、明日は無視します」
「分かった。手は出さない。だから一緒に風呂に入ろう」
両手を上げてそう言ったくせに、テオは風呂に入った瞬間アルファのフェロモンを発して、軽い発情を促してきた。オメガの本能――子を孕みたい欲が刺激されてしまう。
「……っばか! ばか!」
「何が?」
「なんで! もう! 本当にばか!!」
僕は自分からテオを求めてしまった。大きく固い裸体に抱きつき、濡れてくる下半身を押し付ける。クラクラして、テオのことしか考えられなくて、テオへの罵倒はもう出てこない。
自分のアルファが孕ませる準備が出来ていると教えてくれるフェロモンを感じて、冷静でいられるオメガはいない。
「テオ、我慢、できない」
「あぁ、気持ち良くしようか?」
「ん、して――ん」
荒々しく口付けをされる。口内を舐め回されて、舌を甘噛みされる。同時に濡れた後孔に指を入れられ掻き回される。
「ぁ、ぁ、あ、あっ、ん」
指の動きに合わせて声が出る。何年間も男に、テオに慣らされた体はあっという間に熱を持って受け入れる準備を始めた。より奥へ差し入れやすいように自然と両足を開く。自分からも腰を揺らしてしまう。
「リュシー、挿れてもいいか?」
「ん、いぃ、いれて」
立ったまま、抱き合う。片足を持ち上げられるとすぐに怒張がはいってきた。
「――っ!」
「――は、ぁ。あぁ、リュシーの中は最高だな」
目の前がチカチカする。お腹いっぱいになる。
「テオ、テオっひ、っゔ! あぁ!」
律動が始まる。もう、気持ち良いことしか分からない。
「手を出さない」という言葉だけでは足りないのだと学んだけど、世間知らずな僕がテオに勝てるわけもなく、その後も何度も何度も騙されては好き勝手されるのだった。
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