今日も私は、「私」を演じる

若原勇作

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第2話 室賀さんは男?女?

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 玲が転校してきた翌日、優里はいつも通りの時間に学校に着いた。
 教室の空気は普段どおりで、昨日のような浮ついた雰囲気はあまり感じられなかった。
 優里が荷物を整理しようと机に鞄を置いた途端、背後に誰かが立つ気配を感じた。

「おっはよー、優里!」
「わっ!」

 急に背中に重みを感じ、思わず声を上げる。振り返ると、親友の森野澪もりのみおが嬉しそうに微笑み、優里に抱きついていた。

「もおー澪、びっくりさせないでよー」
「あはは、ごめんごめん。優里の反応、面白くってさー」

 ぴょんっと優里の背中から降りると、澪は悪戯っぽく笑った。

「ところでさ、室賀さんと少しは話せた? 休み時間は全然話してくれなくて、まだどんな子かわかんないんだよねー」
「それが全然なんだ。あんまり話しかけてほしくなさそうな感じで…」
「え! 誰とでもすぐに打ち解ける優里でもダメなんだ…」

 澪のうむむとうなる様子に、優里は苦笑した。

「だったら、話しかけなきゃいいじゃない」

 突然違う声が割り込んできた。
 振り向くと、2組のボス女子、藤崎美蘭ふじさきみらんが不機嫌そうに立っていた。

「向こうがあんな態度取るんだから、私たちが優しく接する必要なんてないわよ。どうせ、ちょっと顔が良くてスタイルがいいからって、調子に乗ってるんだわ」

 美蘭は自己中心的で、気に入らないことがあると怒ったり、権力を使って人を排除したりするタイプだ。

「……そうだよね」

 優里は無理のない笑顔でそう答えた。
 その直後、教室の扉がガラッと開いた。
 優里が音のした方へ顔を向けると、目を見開かずにはいられなかった。
ドアの前に立っていたのは、見知らぬ男子生徒だったからだ。

(え……誰? クラスを間違えたのかな?)

「ここ、2年2組なんですけど」

 美蘭が迷惑そうな顔で声をかけたが、彼はその言葉を無視し、優里の隣の席に座った。

「なっ……!」

 美蘭の顔が一瞬で怒りの色に染まった途端、教室の空気が凍り、視線が彼を射た。

「えっ、あの、その席、室賀さんの席……なんですけど……」

 恐る恐る声をかける優里に対し、彼は眠そうに目をこすりながら、淡々と答えた。

「俺が室賀玲なんだけど」
「………は?」

 教室中が静まり返る。
 彼―玲は短髪で、男子の制服を着ていた。しかし、顔は昨日と同じ中性的な美しさを保っている。

(え、え? 本当に室賀……さん? 女の子じゃなくて男の子だったの? じゃあ、何で昨日は女の子の格好を……?)

 優里の頭の中で「?」が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。
 澪は目を丸くして、小声でつぶやいた。

「なにこれ……どういうこと……?」

 一方、美蘭はプライドが刺激されたのか、あるいは驚愕したのか、顔を真っ赤にして唇をかみしめ、鋭い視線を玲に向けた。
 玲は眉をわずかに上げるだけで、何も言わずに机に肘をついた。
 そのとき、担任の先生が教室に入ってきた。

「おーい、お前たち。もう朝のチャイム鳴ったぞー。早く席に―」

 先生が玲を見た瞬間、一瞬ギョッとした表情を浮かべた。
 しかしすぐに咳払いをし、気を取り直すように静かに言った。

「……席に着きなさい」

 こうして、教室には昨日とはまったく違う、緊張と好奇心、そしてほんの少しのざわめきが入り混ざった空気が漂い、優里は思わず自分の隣に座った玲をちらりと見つめた。
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