44 / 87
第1章 約束と再会編
第44話 もう決めたことなので
しおりを挟む
アーサー様と話し合ったその日の3日後に、私たちは学園に戻った。
学園は早く前から、通常通り授業が行われており、いつものようににぎやかだった。
「おかえりなさい、エレシュキガル」
アーサー様とともに教室に向かうと、学園再開後すぐに戻っていたセレナとマナミ様、リアムさんが出迎えてくれた。
変わらず元気そうな3人を見ると、どこか安心できた。
離宮に行ってから、会うことはなかったが、セレナとマナミ様とは手紙のやり取りはしていた。
手紙には私が元気にしていることは伝えていたが、毎回私を気遣う手紙が来ていた。
多分、セレナとマナミ様は、かなり心配されていたのだと思う。
「皆様には大変ご心配おかけしました」
頭を下げて謝る。すると、セレナとマナミ様の方からはぁとため息がそろって聞こえてきた。
気になって顔を上げてみると、2人は呆れながらも微笑んでいた。
「次から、普段からの付き合いがない方とお茶をする時には、私を誘ってくださいな。その者を見極めてますから」
「私も呼んでちょうだい。変なことをしようとしたら、動きを一生止めてあげるわ」
「はい。ありがとうございます」
色んな付き合いがあるセレナなら、どんな人なのか分かるし、魔眼持ちのマナミ様なら、万が一のことがあっても対処できる。
よし。次から絶対に2人を呼ぼう。そうしよう。
さてと………欠席で遅れた分、早く授業内容に追い付きたいところだけれど………。
その前に、私は席につこうとするマナミ様を呼び止めた。
「ん? なあに?」
「ナナのことはありがとうございました」
離宮で世話係として働いてくれていたナナ。
彼女は本来マナミ様の侍女であり、今回はマナミ様の指示で私についてくれていた。
ナナ曰く、「エレシュキガルが心配だし、あなたが世話をしてあげなさい。アーサーが選んだ侍女だけだと心配だわ」と言って、送ってきたのだそうだ。
「お礼を言われるようなことはしていないわ。むしろ、謝らないと」
「え? なぜです?」
「私はナナに、あなたが望むままに動けるようにしてやってって、指示を出していたの。でも、どういうわけか、エレシュキガルは誰かさんに監禁まがいなことをされた」
そうマナミがいった瞬間、アーサー様は目をサッと逸らす。
そして、彼と一緒に目を逸らした人がもう一人。
マナミ様は、そのもう1人をじっと睨んでいた。
「どういうわけなのか、説明してくれるかしら――――ねぇ、ナナ?」
「あはははぁ…………」
学生服姿のナナは逃げるように私の背後に隠れた。
離宮で御世話係をしてくれていたナナ。
だが、彼女は本来マナミ様の侍女。
そろそろ主人の所に戻りたいと言っていたので、ナナは私たちと一緒に戻ってきていた。
因みに、アーサー様の傍付きであるリリィも一緒に帰ってきていた。今はここに姿がないが。
「私ちゃんは、あの状況では~マナミ様の指示通りにできなかったですよーん。私ちゃんがアーサー殿下に買収されちゃって」
「はぁ?」
マナミ様はさらに睨みをきかす。眉間には山脈のようにしわができていた。
「え、なんでそんな目で私ちゃんを見るのですか? もしかして、私ちゃんに惚れちゃいました?」
「んなわけないでしょ……なんで、あなたの主人である私の指示に従わなかったのか、怒ってるのよ」
あまりの怒りに口角がピクピクと動いているマナミ様。
何の準備か、彼女は両手を組んでポキポキ鳴らし始めた。
だが、後ろのナナはなぜか余裕の笑み。
うーん。これは逃げた方がいいと思うのだけれど…………。
「マナミ様、私ちゃんに物理で勝とうとするのは無謀ですよーん」
「ハッ。なら、この目であなたの動きを止めてからにしましょうか」
「うぉ。それだけはご勘弁をぉー」
その後、結局ナナは、ご主人様に捕まり、軽く首を締められ、ぽつぽつ白状し始めた。
「いやぁ、私ちゃん的には、エレ様があそこにいる方が安全だと思ったんですよー。それに、エレ様は『どこかに行きたい』なんて、私ちゃんには言いませんでしたし、私ちゃんはエレ様を積極的に外へ出す必要はないと思ったんです~」
「バカね。あの状況で、エレシュキガルから『外に出たい』だなんて言うわけないじゃないの」
マナミ様に叱られたナナは「すみませーん」と申し訳なさそうに謝った。
「でも、これからの私ちゃんは、ずっとマナミ様のお側にいられますぅ! 今まで頑張ったのでぇ、ぜひご褒美くださぁーい!」
「指示に従わなかったんだから、なしよ。それに完全に学園が安全になったわけじゃない。あなたは一時エレシュキガルの護衛をしていなさい」
騒がしい再会だったが、授業チャイムが鳴ると、席につき授業を浮けた。
そして、その日の放課後。
学園復学の記念にみんなでお茶会をすることになったのだが。
「僕、ちょっと用事があるから」
と言って、アーサー様はサロンがある方ではなく、校門へと歩いて行った。
………………うーん。どこに行くのだろう?
行き先が気になり、彼を追いかけて尋ねてみると、アーサー様はスカーレットさんとブリジット様が収監されている牢獄へと向かうと言った。
また、今回の騒動について調べることがあり、今日のお茶会には参加できないと話してくれた。
ブリジット様の所に行かれるのね………………。
「待ってください」
馬車が待つ校門へ向かおうとするアーサー様は、私の声で足を止めた。
「心配しなくても、僕は帰ってくるよ」
「いえ、そうではなくって………………」
ブリジット様とはちゃんと話し合いたい。
友人になりたい。
彼女は望んでいないかもしれないけれど………………それでも。
「アーサー様、私もブリジット様のところへ一緒に連れていただけませんか?」
「…………理由を聞いても」
「はい。私はブリジット様とご友人になりたい。だから、まず彼女に会いたいのです」
そう訴えると、アーサー様は「そういえば、あの時もそんなことを言っていたね………」と小さく呟いた。
「僕が止めても、きっとダメだよね?」
「はい。もう決めたことなので」
一度決めた私は、もう譲らない。
もし、これでダメだって言われたら、後で私1人で行こう。
………………どうやって、監獄に入るのか分からないけれど。
すると、アーサー様は少し呆れたように、でも嬉しそうに笑い、私に左手を差し出した。
「じゃあ、2人で行こうか」
「はい!」
アーサー様の手を取り、私はニコリと微笑む。
彼も優しい笑顔を返してくれた。
そうして、私たちはセレナにお茶会には参加できないことを伝えて、アーサー様とともにブリジット様の所へと向かった。
学園は早く前から、通常通り授業が行われており、いつものようににぎやかだった。
「おかえりなさい、エレシュキガル」
アーサー様とともに教室に向かうと、学園再開後すぐに戻っていたセレナとマナミ様、リアムさんが出迎えてくれた。
変わらず元気そうな3人を見ると、どこか安心できた。
離宮に行ってから、会うことはなかったが、セレナとマナミ様とは手紙のやり取りはしていた。
手紙には私が元気にしていることは伝えていたが、毎回私を気遣う手紙が来ていた。
多分、セレナとマナミ様は、かなり心配されていたのだと思う。
「皆様には大変ご心配おかけしました」
頭を下げて謝る。すると、セレナとマナミ様の方からはぁとため息がそろって聞こえてきた。
気になって顔を上げてみると、2人は呆れながらも微笑んでいた。
「次から、普段からの付き合いがない方とお茶をする時には、私を誘ってくださいな。その者を見極めてますから」
「私も呼んでちょうだい。変なことをしようとしたら、動きを一生止めてあげるわ」
「はい。ありがとうございます」
色んな付き合いがあるセレナなら、どんな人なのか分かるし、魔眼持ちのマナミ様なら、万が一のことがあっても対処できる。
よし。次から絶対に2人を呼ぼう。そうしよう。
さてと………欠席で遅れた分、早く授業内容に追い付きたいところだけれど………。
その前に、私は席につこうとするマナミ様を呼び止めた。
「ん? なあに?」
「ナナのことはありがとうございました」
離宮で世話係として働いてくれていたナナ。
彼女は本来マナミ様の侍女であり、今回はマナミ様の指示で私についてくれていた。
ナナ曰く、「エレシュキガルが心配だし、あなたが世話をしてあげなさい。アーサーが選んだ侍女だけだと心配だわ」と言って、送ってきたのだそうだ。
「お礼を言われるようなことはしていないわ。むしろ、謝らないと」
「え? なぜです?」
「私はナナに、あなたが望むままに動けるようにしてやってって、指示を出していたの。でも、どういうわけか、エレシュキガルは誰かさんに監禁まがいなことをされた」
そうマナミがいった瞬間、アーサー様は目をサッと逸らす。
そして、彼と一緒に目を逸らした人がもう一人。
マナミ様は、そのもう1人をじっと睨んでいた。
「どういうわけなのか、説明してくれるかしら――――ねぇ、ナナ?」
「あはははぁ…………」
学生服姿のナナは逃げるように私の背後に隠れた。
離宮で御世話係をしてくれていたナナ。
だが、彼女は本来マナミ様の侍女。
そろそろ主人の所に戻りたいと言っていたので、ナナは私たちと一緒に戻ってきていた。
因みに、アーサー様の傍付きであるリリィも一緒に帰ってきていた。今はここに姿がないが。
「私ちゃんは、あの状況では~マナミ様の指示通りにできなかったですよーん。私ちゃんがアーサー殿下に買収されちゃって」
「はぁ?」
マナミ様はさらに睨みをきかす。眉間には山脈のようにしわができていた。
「え、なんでそんな目で私ちゃんを見るのですか? もしかして、私ちゃんに惚れちゃいました?」
「んなわけないでしょ……なんで、あなたの主人である私の指示に従わなかったのか、怒ってるのよ」
あまりの怒りに口角がピクピクと動いているマナミ様。
何の準備か、彼女は両手を組んでポキポキ鳴らし始めた。
だが、後ろのナナはなぜか余裕の笑み。
うーん。これは逃げた方がいいと思うのだけれど…………。
「マナミ様、私ちゃんに物理で勝とうとするのは無謀ですよーん」
「ハッ。なら、この目であなたの動きを止めてからにしましょうか」
「うぉ。それだけはご勘弁をぉー」
その後、結局ナナは、ご主人様に捕まり、軽く首を締められ、ぽつぽつ白状し始めた。
「いやぁ、私ちゃん的には、エレ様があそこにいる方が安全だと思ったんですよー。それに、エレ様は『どこかに行きたい』なんて、私ちゃんには言いませんでしたし、私ちゃんはエレ様を積極的に外へ出す必要はないと思ったんです~」
「バカね。あの状況で、エレシュキガルから『外に出たい』だなんて言うわけないじゃないの」
マナミ様に叱られたナナは「すみませーん」と申し訳なさそうに謝った。
「でも、これからの私ちゃんは、ずっとマナミ様のお側にいられますぅ! 今まで頑張ったのでぇ、ぜひご褒美くださぁーい!」
「指示に従わなかったんだから、なしよ。それに完全に学園が安全になったわけじゃない。あなたは一時エレシュキガルの護衛をしていなさい」
騒がしい再会だったが、授業チャイムが鳴ると、席につき授業を浮けた。
そして、その日の放課後。
学園復学の記念にみんなでお茶会をすることになったのだが。
「僕、ちょっと用事があるから」
と言って、アーサー様はサロンがある方ではなく、校門へと歩いて行った。
………………うーん。どこに行くのだろう?
行き先が気になり、彼を追いかけて尋ねてみると、アーサー様はスカーレットさんとブリジット様が収監されている牢獄へと向かうと言った。
また、今回の騒動について調べることがあり、今日のお茶会には参加できないと話してくれた。
ブリジット様の所に行かれるのね………………。
「待ってください」
馬車が待つ校門へ向かおうとするアーサー様は、私の声で足を止めた。
「心配しなくても、僕は帰ってくるよ」
「いえ、そうではなくって………………」
ブリジット様とはちゃんと話し合いたい。
友人になりたい。
彼女は望んでいないかもしれないけれど………………それでも。
「アーサー様、私もブリジット様のところへ一緒に連れていただけませんか?」
「…………理由を聞いても」
「はい。私はブリジット様とご友人になりたい。だから、まず彼女に会いたいのです」
そう訴えると、アーサー様は「そういえば、あの時もそんなことを言っていたね………」と小さく呟いた。
「僕が止めても、きっとダメだよね?」
「はい。もう決めたことなので」
一度決めた私は、もう譲らない。
もし、これでダメだって言われたら、後で私1人で行こう。
………………どうやって、監獄に入るのか分からないけれど。
すると、アーサー様は少し呆れたように、でも嬉しそうに笑い、私に左手を差し出した。
「じゃあ、2人で行こうか」
「はい!」
アーサー様の手を取り、私はニコリと微笑む。
彼も優しい笑顔を返してくれた。
そうして、私たちはセレナにお茶会には参加できないことを伝えて、アーサー様とともにブリジット様の所へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
感情の無い聖女様は、公爵への生贄にされてしまいました
九条 雛
恋愛
「――私など、ただの〝祈り人形〟でございます。人形に感情はありませぬ……」
悪逆非道の公爵の元へと生贄として捧げられてしまった聖女は、格子の付いた窓を見上げてそう呟く。
公爵は嗜虐に満ちた笑みを浮かべ言い放つ。
「これからは、三食きちんと食べてもらおう。こうして俺のモノとなったからには、今までのような生活を送れるとは思わぬことだな」
――これは、不幸な境遇で心を閉ざしてしまった少女と、その笑顔を取り戻そうとする男の物語。
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる