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第1章 約束と再会編
第57話 この世界で誰よりも
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あれから王城に戻った私たちは、しっかりと治療を受けた。
アーサー様は極度の魔力切れ。あのシュレインの攻撃を跳ね返し、さらに彼女と戦いあったおかげか、腕や脚だけではなく、顔にも傷があった。
途中で休んでいたとはいえ、私も魔力切れと大量の体力の消費で、疲れ果てていた。
当然、ナナには怒られ、私たちが喋る隙も与えないぐらいに、怒り責められた。
でも、彼女がどれほど私たちを心配していたのか、伝わってきて、申し訳ない気持ちになった。
奇絶していたリリィは帰った頃に意識を取り戻しており、私を守れず申し訳ないとしきりに謝られた。そのまま彼女を放置していたし、私に謝る必要なんてないのに。
でも、彼女の思いも受け止めつつ、回復師の治療を受ける。
ボロボロの状態の私たちは、医師には数日間は安静にしておくように言われ、私は実家の方に帰ろうとしたのだが。
「エレちゃんは僕と一緒に王城で休もうか」
と半ば強制的に療養は王城ですることになった。
とはいえ、致命傷を特に受けていない私は、すぐに体力と魔力の両方を取り戻し。
「アーサー様がルイだったなんて未だに信じられません」
そして、今。
天国かと思うほど美しい王城の庭園で、アーサー様とおしゃべりをしていた。
カゼボの日陰に置かれたソファに隣り合って座る、私とアーサー様。
彼も大きな致命傷はしていなかったものの、あと一歩で体を壊しかねないほどの魔力切れを起こしていた。
帰った直後は、力尽きたようにぴたりと動けなくなっていて、心配で心配で仕方がなかった。
だけど、今はすっかり元気になっている。
顔にあった傷もなく、優しい微笑みがあった。
「ルイのことは………死んだと思っていましたから」
「そうなの?」
「はい。上官から『ルイは死んだ』と報告を受けましたので」
「…………」
考えこみ、眉間に皺を寄せるアーサー様。
一時すると、彼は1人納得した様子で「なるほど」と頷いた。
「多分、僕の伝達が悪かったみたいだ。怪我をしてから、お母様に軍に行くなと言われてね。エレちゃんには僕が療養中だと伝えてほしいと言ったんだけど、それが何があったのかルイが死んだという情報が伝わった………」
どうやら、アーサー様の臣下は、誰にもアーサー様=ルイであることを知られたくなかったようで、ルイが突然いなくなったことを「彼が死んだ」こととして、私たちに伝えていたようだ。
王子が庶民として軍に入り、大怪我を負った。それが世間に知られれば、非難の声があがるのは間違いない。
それを回避するためにルイ・ノースの存在を隠すのは仕方がなかったこと。
「ごめん、僕がちゃんと言っていれば、嫌な思いをさせずにすんだのに」
「いえ、大丈夫ですよ。今はこうしてアーサー様とお話できてますし」
大好きなアーサー様がルイで、ルイは生きている。
今、それが知れた。
永遠に知らないままよりもずっといい。
苦しかった気持ちはあったけれど、もうそれは遠い昔のこと。
今以上に幸せなことなんてない。今が幸せであるのなら、文句なんてあるはずがない。
「そういえば、エレちゃんに言ってなかったね」
「?」
「僕の名前はルイ・ノース、本当の名前はアーサー・グレックスラッド」
「うふふ、知ってますよ」
私が笑うと、ぱぁと笑顔の花を咲かせるアーサー様。
彼は私を抱き寄せると、自分の額を私の額にこつんと当てた。
彼の水色の瞳は眩しいぐらいに輝いていて、そこにはじっと見つめる私が映っていた。
「ずっと好きだった。出会った頃から、ずっとずっと」
真剣だけどその甘い声。
出会った頃、ルイとして出会った頃からずっと私を思ってくれていた感情がこちらにも伝わってきた。
私自身、自分の恋心に気づくのは随分と遅かった。
ルイに対しては彼が死んだと思って2年後、アーサー様に対してはつい最近だ。
でも、ようやく心の底からの気持ちを言える。
「私も好きです。大好きっ、ですっ………」
思いを口にした瞬間、アーサー様の口元は柔らかな弧を描き、気づけば、私の唇は塞がれていた。
長くはないキス。ほんの口と口が触れただけの柔らかいキス。
でも、その口づけは何よりも甘く、優しかった。
アーサー様が直視できないほど美しい顔をようやく離すと、頬をなぞるように右手で触れられた。
「エレシュキガル」
「はい」
「この世界で誰よりも愛してる」
私もその彼の大きな手に、そっと自分の手を当てる。
「私も愛してます。もうアーサー様だけしか見えません」
アーサー様と出会ってから、全てが変わった。
『好き』を知って、復讐だけじゃない生きる希望を作ってくれた。
彼は世界で一番大切な人。
私はアーサー様と永遠に一緒に歩いていきたい。
「ずっと傍にいてください」
「もちろん」
その瞬間、庭に爽やかな風が吹き、私たちの髪をなびかせる。
もうすぐ夏が終わる。
今年は同級生に殺されかけたり、魔王軍幹部に襲われたりと波乱の夏だった。
だけど、二度と忘れられない夏。
忘れらなかったルイに、ようやく自分の思いを伝えられた。
こんなの忘れられるはずがない。
これからの学園生活も色んなイベントが待っている。
それをアーサー様と一緒にできることが、何よりも嬉しい。
私は彼の腕に自分の腕を組ませ、肩にことんと頭を置く。
私の頭を優しく撫でるアーサー様の手つきは温かくて、柔らかく優しい。
それが心地よく、ふと目を閉じる。
そうして、私たちは日が暮れるまでおしゃべり。
他愛のない話ばかりだったけれど、庭にはずっと私たちの笑い声が響いていた。
――――――――
第1章1学期と夏休み編終了です!
次回は2章に入っていきます!
体育祭に、文化祭、新キャラ登場など盛りだくさんの章になる予定ですので、引き続きご覧いただけたらと思います!
エレとアーサーのイチャイチャが加速すること間違いなし! です!
今後ともよろしくお願いいたします!<(_ _)>
アーサー様は極度の魔力切れ。あのシュレインの攻撃を跳ね返し、さらに彼女と戦いあったおかげか、腕や脚だけではなく、顔にも傷があった。
途中で休んでいたとはいえ、私も魔力切れと大量の体力の消費で、疲れ果てていた。
当然、ナナには怒られ、私たちが喋る隙も与えないぐらいに、怒り責められた。
でも、彼女がどれほど私たちを心配していたのか、伝わってきて、申し訳ない気持ちになった。
奇絶していたリリィは帰った頃に意識を取り戻しており、私を守れず申し訳ないとしきりに謝られた。そのまま彼女を放置していたし、私に謝る必要なんてないのに。
でも、彼女の思いも受け止めつつ、回復師の治療を受ける。
ボロボロの状態の私たちは、医師には数日間は安静にしておくように言われ、私は実家の方に帰ろうとしたのだが。
「エレちゃんは僕と一緒に王城で休もうか」
と半ば強制的に療養は王城ですることになった。
とはいえ、致命傷を特に受けていない私は、すぐに体力と魔力の両方を取り戻し。
「アーサー様がルイだったなんて未だに信じられません」
そして、今。
天国かと思うほど美しい王城の庭園で、アーサー様とおしゃべりをしていた。
カゼボの日陰に置かれたソファに隣り合って座る、私とアーサー様。
彼も大きな致命傷はしていなかったものの、あと一歩で体を壊しかねないほどの魔力切れを起こしていた。
帰った直後は、力尽きたようにぴたりと動けなくなっていて、心配で心配で仕方がなかった。
だけど、今はすっかり元気になっている。
顔にあった傷もなく、優しい微笑みがあった。
「ルイのことは………死んだと思っていましたから」
「そうなの?」
「はい。上官から『ルイは死んだ』と報告を受けましたので」
「…………」
考えこみ、眉間に皺を寄せるアーサー様。
一時すると、彼は1人納得した様子で「なるほど」と頷いた。
「多分、僕の伝達が悪かったみたいだ。怪我をしてから、お母様に軍に行くなと言われてね。エレちゃんには僕が療養中だと伝えてほしいと言ったんだけど、それが何があったのかルイが死んだという情報が伝わった………」
どうやら、アーサー様の臣下は、誰にもアーサー様=ルイであることを知られたくなかったようで、ルイが突然いなくなったことを「彼が死んだ」こととして、私たちに伝えていたようだ。
王子が庶民として軍に入り、大怪我を負った。それが世間に知られれば、非難の声があがるのは間違いない。
それを回避するためにルイ・ノースの存在を隠すのは仕方がなかったこと。
「ごめん、僕がちゃんと言っていれば、嫌な思いをさせずにすんだのに」
「いえ、大丈夫ですよ。今はこうしてアーサー様とお話できてますし」
大好きなアーサー様がルイで、ルイは生きている。
今、それが知れた。
永遠に知らないままよりもずっといい。
苦しかった気持ちはあったけれど、もうそれは遠い昔のこと。
今以上に幸せなことなんてない。今が幸せであるのなら、文句なんてあるはずがない。
「そういえば、エレちゃんに言ってなかったね」
「?」
「僕の名前はルイ・ノース、本当の名前はアーサー・グレックスラッド」
「うふふ、知ってますよ」
私が笑うと、ぱぁと笑顔の花を咲かせるアーサー様。
彼は私を抱き寄せると、自分の額を私の額にこつんと当てた。
彼の水色の瞳は眩しいぐらいに輝いていて、そこにはじっと見つめる私が映っていた。
「ずっと好きだった。出会った頃から、ずっとずっと」
真剣だけどその甘い声。
出会った頃、ルイとして出会った頃からずっと私を思ってくれていた感情がこちらにも伝わってきた。
私自身、自分の恋心に気づくのは随分と遅かった。
ルイに対しては彼が死んだと思って2年後、アーサー様に対してはつい最近だ。
でも、ようやく心の底からの気持ちを言える。
「私も好きです。大好きっ、ですっ………」
思いを口にした瞬間、アーサー様の口元は柔らかな弧を描き、気づけば、私の唇は塞がれていた。
長くはないキス。ほんの口と口が触れただけの柔らかいキス。
でも、その口づけは何よりも甘く、優しかった。
アーサー様が直視できないほど美しい顔をようやく離すと、頬をなぞるように右手で触れられた。
「エレシュキガル」
「はい」
「この世界で誰よりも愛してる」
私もその彼の大きな手に、そっと自分の手を当てる。
「私も愛してます。もうアーサー様だけしか見えません」
アーサー様と出会ってから、全てが変わった。
『好き』を知って、復讐だけじゃない生きる希望を作ってくれた。
彼は世界で一番大切な人。
私はアーサー様と永遠に一緒に歩いていきたい。
「ずっと傍にいてください」
「もちろん」
その瞬間、庭に爽やかな風が吹き、私たちの髪をなびかせる。
もうすぐ夏が終わる。
今年は同級生に殺されかけたり、魔王軍幹部に襲われたりと波乱の夏だった。
だけど、二度と忘れられない夏。
忘れらなかったルイに、ようやく自分の思いを伝えられた。
こんなの忘れられるはずがない。
これからの学園生活も色んなイベントが待っている。
それをアーサー様と一緒にできることが、何よりも嬉しい。
私は彼の腕に自分の腕を組ませ、肩にことんと頭を置く。
私の頭を優しく撫でるアーサー様の手つきは温かくて、柔らかく優しい。
それが心地よく、ふと目を閉じる。
そうして、私たちは日が暮れるまでおしゃべり。
他愛のない話ばかりだったけれど、庭にはずっと私たちの笑い声が響いていた。
――――――――
第1章1学期と夏休み編終了です!
次回は2章に入っていきます!
体育祭に、文化祭、新キャラ登場など盛りだくさんの章になる予定ですので、引き続きご覧いただけたらと思います!
エレとアーサーのイチャイチャが加速すること間違いなし! です!
今後ともよろしくお願いいたします!<(_ _)>
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