婚約破棄された軍人令嬢、なぜか第2王子に溺愛される

せんぽー

文字の大きさ
65 / 87
第2章 大星祭編

第65話 勝ったな

しおりを挟む
 今日は待ちに待った大星祭。
 迷路脱出の練習場となっていた円形状の第1闘技場は、練習の頃とは全く違う姿になっていた。
 国中の人間を集めても、空席はできると思われた客席にはぎっしりと人で埋まっていた。グレックスラッド王国だけではなく、他の国からも遠来された方がいらっしゃるようだ。

「エレちゃん、すごく似合ってる」
「ありがとうございます」

 隣に座るアーサー様は私を見て、優しい笑みで褒めてくれた。

 今日の私はいつもの制服ではなく、大星祭に用意された服。白を基調とした軍服で、その刺繍には金色の他に、クラスごとにカラーの糸で施されていた。私たちのクラスのカラーは水色で、空のように透き通った糸で刺繍がされていた。さらに、女子の服には水色のリボンが添えられており、可愛らしいさが増していた。

 因みに、刺繍糸はアーサー様の瞳と同じ色。隣に座る彼の軍服を見に纏った姿は、目眩がしてしまうほど美しいかった。会場に来るまでにも、アーサー様を目撃した女子の中には気絶してしまう人がいたほどだ。
 もちろん、他のみんなも軍服に着替えており、嫌がっていたマナミ様もちゃんと軍服を着ており、いつもの眼鏡ではなく、なぜか丸サングラスをかけていた。日差しが強くて眩しいのかしら?

 学生たちはクラスごとに席を設けられており、出場する時以外はそこで応援するようになっていた。セレナは応援に気合を入れており、ポンポンやメガホンを持ってきていた。また、彼女に頼まれて、マナミ様はワダイコなるものを持ってきていた。叩く気はなさそうだけど。

 アーサー様とは反対側の私の隣に座るギルは、緊張しているのか少し口数が少ない。

「ギル、そんな肩を上げなくても、楽しめばいいのよ」
「………ハイ。ガンバリマス」

 返ってきたにはぎこちなかったけれども………まぁ、体調もいいみたいだし、大丈夫だろう。
 ブリジットはいつも通りの様子で、マナミ様の隣に座って会場を眺めていた。余裕たっぷりそうで非常に安心だ。

 そうして、観客席で学園長の開会宣言及び、生徒会長の選手宣誓を見守り、大星祭が開幕した。

 最初に予定されていたのは魔法戦。私とアーサー様、その他多数のメンバーが出場する種目だった。
 私はアーサー様とともに、待機場へ向かった。魔法戦には多くの学生が参加するため、待機場所は人で埋め尽くされていた。

 魔法戦は個人戦とチーム戦があり、個人戦はトーナメント形式になっている。
 私は個人戦で、アーサー様はチーム戦。チーム戦は学年ごとの対決で、多く勝利したチームが優勝だ。

 個人戦がトーナメントで休憩を要するため、競技自体は個人戦とチーム戦が交互に行われる予定になっていた。

「では、アーサー様。行ってまいります」
「いってらっしゃい」

 最初に出場するようになっていた私は、アーサー様にいつもの如く挨拶をし、私は壇上へ上がる。同時に、戦いを待ちわびていた歓声がわっーと上がった。

「よろしくおねがいします」

 白い階段を上った先の向かいにいたのは隣クラスの女の子。私の相手は彼女なようだ。
 私は彼女に挨拶をし、頭を下げると、相手も慌てて返す。

 直前にくじを引くため、誰と戦うのか分からなかったけど、それでも大丈夫。

 事前準備は完璧。私はどの人に当たってもいいように、全員を分析していた。
 結界魔法が使えない以上、他のもので防御を固めなければならない。しかし、火であれば植物系の魔法はNG、水を使われれば火はあってないようなものになってしまうため、相手の魔法によって使用する魔法を変えなければならなかった。

 彼女は確か土魔法を得意としていたはず。
 身を守るために、土壁を作ることだろう。

 そうなると魔法を使うよりも物理で行った方が早いけど………。

 攻撃は魔法を使用しなければ、失格となる。
 ならば、仕方あるまい。
 物理オンリーで無理なら、強化魔法を付与して行こう。

「バトル開始!」

 その合図とともに、私は魔法を展開。一直線に駆け出した――――………。



 ★★★★★★★★


 
 ――――結果は私の勝利だった。
 相手の方には大変申し訳ないのだが、圧勝で30秒のうちに戦闘不能にしてしまった。
 その後もあっさり倒してしまい、気づけば決勝。

 その決勝の相手はというと――――。

「………ブリジット、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく」

 まさかまさかのブリジット。彼女と私は同じクラスだが、トーナメント形式なのでクラスメイトと当たる可能性は十分にあった。
 でも、まさかブリジットと決勝で戦うことになるとは………。

 まぁ、これで1位と2位の得点は私たちのクラスとなったわけで。個人戦は勝ち取ったも同然。たとえこれでへまはしても、クラスには何も影響しない。
 でも、決勝まで来たんだし、優勝はしたいな。

 しかし、最近のブリジットの成長は凄まじい。魔法は全然使えないと言っていた。が、マナミ様と練習するようになってからは“魔法が使えない”だなんて嘘だと思えぐらいに、使いこなせていた。
 また、探求心もあってか創意工夫が卓越しており、魔法陣の構築も卒業レベルを超えていた。

 だが、私はブリジットと戦う機会がなかった。というか、彼女に拒否されていた。
 でも、今日は戦える。楽しみだわ。

 期待を膨らませながら、審判員の合図と同時に私は氷魔法を展開。

「コラプス」

 魔力量を抑えながら次々に魔法展開し、私の魔法を破壊していくブリジット。私は1人彼女に感心しながら、ブリジットの攻撃を回避。そして、宙を舞いながら反撃を行う。

「余裕ぶらないでよ! 本気を出しなさいよ!」

 どうやら100%の力を出していないことに気づかれたようで、ブリジットに強く睨まれた。
 ブリジットの戦法をじっくりと分析したかったのだけど、このまま全力を出さないのも彼女に失礼よね。

 そう思い、本気を出してみたところ。

「もぅ~~~~!! 手加減しなさいよ!」

 と理不尽な叫び声が聴こえ、その後審判員のバトル終了の声が響いた。
 砂ぼこりがおさまった先にいたブリジット。彼女の足は場外に出ていたため、負けとなり、私が優勝した。

 5人で行うチーム戦も私たちのクラスが優勝。
 アーサー様の戦いは私のものとは比べ物にならないほど、圧勝。
 私と同様自分の体に強化魔法をかけ、瞬時に相手の前へ移動。瞬きする間もなく、相手は場外へと放り出され、アーサー様の勝利となった。

 他のメンバーは苦戦することもあったが、最終的に私たちのクラスが一番となった。

 それからは次へ次へと競技が行われ、プログラムが進んでいった。
 練習したせいかがあったのか、アーチェリーも難なくこなし、本番では1つは外したものの、他は的中央へ命中。
 ギルも緊張していたわりには、競技中には驚くほど集中力を高め、全てど真ん中へ射っていた。
 
 この調子であれば、私たちのクラスが圧勝する………!!

 そうして、プログラムが半分以上終了し、迎えたリレー。

 出場しない私は同じく出場無しのギルやマナミ様、セレナたちと並んで観客席に座って、スタートに地点に立つアーサー様を見守った。
 じっ―――と見ていると、アーサー様と目が合い、にこっと優しい笑みで手を振ってくれた。それに答えるように、私は手を振り返す。

 ………なんか後ろでドタドタって倒れる音がしたけど、大丈夫だろうか。

 別クラスのクライドも出場するようで、アーサー様の隣のレーンで屈伸していた。

 アーサー様、頑張って。

 スターターピストルが鳴り、1番手が走り出す。100m走ると、次の走者へバトンが渡され、2走者が走り出す。だが、バトン渡しの際に手こずったのか、私たちのクラスは少し遅れていた。
 
「じゃあ、お先に失礼ぃ~。マナミ、勝たせてもらうね~」

 とクライドはなぜかマナミ様に宣言して、先頭を走り抜けていく。
 その後、アンカーのアーサー様へバトンが渡った。遅れに遅れて最後尾。1番は無理だと諦めた瞬間。

 えっ………………?

 軽やかにトラックを駆けていくアーサー様は、前を走っていた選手を次々と抜いていき、そして1番だったクライドをも抜いて。

「やった!!」

 見事一番でゴール。全力で走っただろうに、アーサー様は爽やかな笑みを浮かべて両手を挙げていた。
 興奮のあまり私は立ち上がり、マナミ様は優雅に拍手。ギルも習って拍手を送っていた。
 周りの観客もどんでん返しの展開に、口笛を吹きこれでもかと歓声を上げている。

 おめでとうございます、アーサー様。

 遠くて聞こえないだろうが、私は必死に拍手を送った。
 リレーメンバーに囲まれて、楽しそうに話しているアーサー様を見守っていると、彼が私の所へ真っ直ぐ走ってきた。

「これ、エレちゃんに」

 と、私の首にかけたのはリレーで勝ち取った金メダル。そして、額にちゅっと口づけ。その瞬間、近くにいた女子たちの悲鳴が上がり、どたどたと倒れる音が聞こえた。

 眩しいほどの笑顔を浮かべるアーサー様。滴る汗も美しかった。
 あまりの美しさに頬が熱くなる。ドキドキが止まらない。胸が早鐘のように高鳴っていた。

「………おめでとうございます。私も勝って、メダルをプレゼントしますね」
「うん、楽しみに待ってる」

 なんとか声を絞りだし、祝言を伝える。すると、アーサー様にハグをされ、頭をポンポンと撫でられた。また女子が何人か卒倒していた気がする。
 その隣で穏やかな笑みを浮かべるマナミ様。彼女はなぜかサングラスのブリッジをくいっと上げて。

「これは勝ったな………………クライド、約束は守ってもらうぞ………」

 とニヤリと笑って呟いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

感情の無い聖女様は、公爵への生贄にされてしまいました

九条 雛
恋愛
「――私など、ただの〝祈り人形〟でございます。人形に感情はありませぬ……」 悪逆非道の公爵の元へと生贄として捧げられてしまった聖女は、格子の付いた窓を見上げてそう呟く。 公爵は嗜虐に満ちた笑みを浮かべ言い放つ。 「これからは、三食きちんと食べてもらおう。こうして俺のモノとなったからには、今までのような生活を送れるとは思わぬことだな」 ――これは、不幸な境遇で心を閉ざしてしまった少女と、その笑顔を取り戻そうとする男の物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな

みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」 タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...