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第2章 大星祭編
第81話 見つめ合いの勝負
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遅れてすみません! なんだかんだイチャイチャ回! よろしくお願いします!
――――――
帰ってきた直後は体調を崩していた私。アーサー様から離れるのは怖いが、しかしながら彼ばかりに頼っていられない。部屋の中で仕事をしてくれることが多かったが、外に出なければできない公務だってある。
甘えてばっかりいないで、私も頑張らないと………。
ということで、私は外に出る練習から始めた。王城の中庭の散歩から始め、徐々に外に慣れていく。意外にも早いペースで慣れていき、数日後には外での訓練もできるようになっていった。
初めは体を動かすのが久しぶり過ぎて、練習をした次の日には全身筋肉痛に襲われた。だが、その痛みを持ちつつ毎日特訓を行っていると、以前の状態に戻すところまで回復。
また、アーサー様以外の人たちとも落ち着いて話せるようになり、人と会う回数も増え、友人ともお茶ができるようになっていた。
「先輩、すみませんでした」
「ぎ、ギル。やめて、頭を上げて………あなたは何も悪くない」
その来訪者の1人はギルバート。彼はクラウンに捕まったことで私に怪我をさせてしまったことを深く後悔しており、再会してすぐ頭を下げていた。
ギルバート自身は何も悪くない。全て悪いのはあのクラウンだ。彼が謝る理由なんてない。
「いいえ、俺が全部悪いのです。俺が敵に捕まっていなければ、先輩が傷つくこともなかったのです」
「そうかもしれないけど…………ああ、ギル。あなたの体の調子はどう? 元気にしてる?」
申し訳なくなって無理やり話題を変えると、ギルバートは小さく微笑んだ。
「はい。おかげで怪我も残ることなく全快していますよ。文化祭の準備で張り切っています」
「そっか。それはよかった」
氷に閉じ込められていたから、凍傷とかして後遺症が残っていないか心配してたけど、何もなかったのなら安心だ。助けれてよかった。
それにしても、文化祭か……この前のことで大星祭は結局ハチャメチャになったものね。
誘拐事件があって1ヶ月は経っている。時期的にも文化祭の日が近くなってたはずだ。
「文化祭の日、私も行けれるように頑張るわね。楽しみにしてる」
「はい。待ってますよ」
その後もセレナとリアムさん、ブリジットに、クライドとマナミ様などなど多くの人が来てくれた。
そして――――。
「よっ」
「……………エレシュキガル、久しぶり」
アーサー様と部屋に来た2人。
軽い挨拶と小さな挨拶。
ずっと気になっていた2人。
「セトとイシス…………」
元気にしているか気掛かりだった。
なぜ私を捕えてドラゴンの生贄にしようとしていたのか、彼らに聞いた。でも、その時の口調は責めるようなものではなく、柔らかくしていた。
ドラゴンの話を聞いて、何となく想像はついている。
たぶんきっと2人は………。
「俺たち、国を取り戻そうとしたんだ」
視線を下に落とすセトとイシスはポツリポツリと話し始めた。
「うん、正しくは…………死んだ人たちを生き返らせたかった、の」
「それは………お父様やお母様方をですか?」
「お母様やお父様はもちろん、他の人たちも、だよ?」
「ああ、ファーリーアスターの全国民を生き返らせたかったんだ。どんな方法でもいい、手を汚してもいい、みんなが生きている世界を取り戻したかった」
「ずっと調べていたんだけど………ドラゴンの願いは何でも叶うと知ったの……」
「ああ、本でも調べて信憑性を確認した………といってもあの偽伯爵が用意していた書庫でだが」
彼らは騙されていた。
ずっとクラウンの手のひらの上で踊らされていた。
それを後悔しているのだろう、瞳には過去の自分を責めたい気持ちでいっぱいに見えた。
「エレシュキガルを生贄にしようとしてたのはそんな理由、なんだ………」
「でも………だからといって、お前を生贄にするなんていう選択は取るべきではなかった」
同時に立ち上がるセトとイシス。2人は地面に膝をつけると、おでこを地面にぶつけた。土下座をしていた。
「…………エレシュキガル、王子さん。俺は何でもする。だからどうかイシスだけは」
「何言ってるのにぃ……女の子の方が使い勝手はいい、よね? ならイーが何でも、する………だから、にぃだけは解放して」
「お、お前。それは――」
「にぃは黙って! 計画を実行しようっていったのはイー………イーが主犯みたいなもの………」
「何言ってるんだ! 巻き込んだのは俺だろ!?」
「違う! にぃじゃない!」
お互いを庇い合って言い合う2人。兄妹が思い合っているのがひしひしと伝わってきた。
2人に罰になんて与えるつもりなどサラサラない。確かに大星祭はめちゃくちゃになってしまってがっかりはしているし、捕まっていなければクラウンと会うこともなかった。
だが、結局2人もクラウンの被害者、洗脳され操られた実行者。
アーサー様の報告によると、2人の体にも私と同じような体を拘束する魔法をかけられていたようで、本来の力は出せないようになっていた。クラウンの正体など気づきそうな2人だが、そう言った理由もあり騙されていた。
だから、2人に罰を与えようだなんて思ってない。むしろ………。
しかし、隣のアーサー様の顔は随分と険しい。
容赦のない罰を与えそうなほど物騒な顔をしていた。
「君たちの罪は決して軽くない…それ相応の――――」
そう、アーサー様が言いかけた時だった。
「――――愛おしい妹の代わりに、俺が2人に罰を与えよう!」
扉をバァン!と開いて現れたのは1人の眼鏡の男性。私と同じ髪色を持つ、私の兄様。シン兄様だった。颯爽と現れたシン兄様は「チャオ――!!」相変わらず明るい挨拶を全員にした。
「エレシュキガル、そこの2人を俺に預けてくれないか?」
「えっ、兄様に?」
「ああ、アーサーも別に構わないだろう?」
「…………」
「もちろん、罰はちゃんと与えるとも!」
「………………まぁ、シンが罰を与えてくれるというのなら」
アーサー様の返事に「おっけー! ありがとう!」といつになくハイテンションで返す兄様。彼はセトとイシスに近づくと、豪快に2人を担いだ。
「わっ」
「えっ? えっ?」
「さぁーて2人には何をしてもらおうかな?」
そうして、「わっはっは!!」と愉快な笑いを漏らして、困惑する2人を攫って、兄様はどこかに消えてしまった。相変わらず嵐のようなお兄様だ。元気そうで何より。
あの様子だと罰らしい罰は与えない。きっと私と同じ考えの兄様は、2人に本来行くはずだった道へと導いてくれるだろう。
2人が去ったことで物騒なオーラが静まったアーサー様。私と視線が合うと穏やかな微笑みを浮かべる。その笑顔は何よりも温かった。2人がいなくなって、機嫌は良くなったようだ。
「ところで、アーサー様。1つ私からお願いがあるのですが…………」
「なぁに? 何でもいってみて。エレちゃんの願いなら何でも叶えてあげるよ」
そのお願いを納得してもらえそうな理由とともにアーサー様に伝えた。しかし、やはり許可できないのだろう、彼はすぐに返事はしてくれなかった。
「………………」
「たぶん2人とも………できていないと思うんです。何もできないままで………」
真っすぐ彼のスカイブルーの瞳を見つめて訴える。アーサー様も私の目をじっと見て黙ったまま。あまりの美しさに照れて視線を逸らしそうになったけど、私も負けずに見つめ続ける。
すると、アーサー様がはぁと折れたようにため息をついた。
「可愛い顔で見つめるのはズルいよ…………ああ、分かったよ、エレちゃん。これ以上見つめられると………僕が………」
「僕が? 何ですか?」
「こほん、今のは気にしないで………気を取り直して、エレちゃん。君の願いを叶えよう。エレちゃんの願い事なら何でも叶えようと言ったのは僕だしね」
「本当ですかっ! ありがとうございます!」
これで2人が前に進めるようになれるわ………。
「じゃあ、僕からもエレちゃんにお願いがあるんだ」
「アーサー様、からですか?」
「うん………ねぇ、エレシュキガル、一緒に文化祭に行ってくれないかい?」
うーん。なぜそんなことを聞くのだろう。
そんなの答えが決まってるのに。
「うふふ、もちろんです」
「ありがとう」
アーサー様の胸に飛び込むと、彼は優しく受け止め抱きしめる。鼻をすり合わせ、笑い合っていた。彼に触れられるのが嬉しくてたまらなかった。
外への恐怖は完全に消えたわけじゃない。だけど、みんながいるから、アーサー様がいるから、私はもう外にどこにだって行ける。
「僕らのクラスどんな出し物をするんだろうね? エレちゃん、誰かから聞いてる?」
「いいえ? マナミ様から『秘密だから教えてあげない。知りたかったら文化祭の日に来なさい』って言われました」
「僕も同じこと言われたよ」
アーサー様にも秘密にしているらしく、マナミ様たちは私たちには知らせないように徹底していた。私たちを驚かせたいのかもしれない。
「「うーん…………」」
見当もつかない私たちは揃って唸っていた。
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帰ってきた直後は体調を崩していた私。アーサー様から離れるのは怖いが、しかしながら彼ばかりに頼っていられない。部屋の中で仕事をしてくれることが多かったが、外に出なければできない公務だってある。
甘えてばっかりいないで、私も頑張らないと………。
ということで、私は外に出る練習から始めた。王城の中庭の散歩から始め、徐々に外に慣れていく。意外にも早いペースで慣れていき、数日後には外での訓練もできるようになっていった。
初めは体を動かすのが久しぶり過ぎて、練習をした次の日には全身筋肉痛に襲われた。だが、その痛みを持ちつつ毎日特訓を行っていると、以前の状態に戻すところまで回復。
また、アーサー様以外の人たちとも落ち着いて話せるようになり、人と会う回数も増え、友人ともお茶ができるようになっていた。
「先輩、すみませんでした」
「ぎ、ギル。やめて、頭を上げて………あなたは何も悪くない」
その来訪者の1人はギルバート。彼はクラウンに捕まったことで私に怪我をさせてしまったことを深く後悔しており、再会してすぐ頭を下げていた。
ギルバート自身は何も悪くない。全て悪いのはあのクラウンだ。彼が謝る理由なんてない。
「いいえ、俺が全部悪いのです。俺が敵に捕まっていなければ、先輩が傷つくこともなかったのです」
「そうかもしれないけど…………ああ、ギル。あなたの体の調子はどう? 元気にしてる?」
申し訳なくなって無理やり話題を変えると、ギルバートは小さく微笑んだ。
「はい。おかげで怪我も残ることなく全快していますよ。文化祭の準備で張り切っています」
「そっか。それはよかった」
氷に閉じ込められていたから、凍傷とかして後遺症が残っていないか心配してたけど、何もなかったのなら安心だ。助けれてよかった。
それにしても、文化祭か……この前のことで大星祭は結局ハチャメチャになったものね。
誘拐事件があって1ヶ月は経っている。時期的にも文化祭の日が近くなってたはずだ。
「文化祭の日、私も行けれるように頑張るわね。楽しみにしてる」
「はい。待ってますよ」
その後もセレナとリアムさん、ブリジットに、クライドとマナミ様などなど多くの人が来てくれた。
そして――――。
「よっ」
「……………エレシュキガル、久しぶり」
アーサー様と部屋に来た2人。
軽い挨拶と小さな挨拶。
ずっと気になっていた2人。
「セトとイシス…………」
元気にしているか気掛かりだった。
なぜ私を捕えてドラゴンの生贄にしようとしていたのか、彼らに聞いた。でも、その時の口調は責めるようなものではなく、柔らかくしていた。
ドラゴンの話を聞いて、何となく想像はついている。
たぶんきっと2人は………。
「俺たち、国を取り戻そうとしたんだ」
視線を下に落とすセトとイシスはポツリポツリと話し始めた。
「うん、正しくは…………死んだ人たちを生き返らせたかった、の」
「それは………お父様やお母様方をですか?」
「お母様やお父様はもちろん、他の人たちも、だよ?」
「ああ、ファーリーアスターの全国民を生き返らせたかったんだ。どんな方法でもいい、手を汚してもいい、みんなが生きている世界を取り戻したかった」
「ずっと調べていたんだけど………ドラゴンの願いは何でも叶うと知ったの……」
「ああ、本でも調べて信憑性を確認した………といってもあの偽伯爵が用意していた書庫でだが」
彼らは騙されていた。
ずっとクラウンの手のひらの上で踊らされていた。
それを後悔しているのだろう、瞳には過去の自分を責めたい気持ちでいっぱいに見えた。
「エレシュキガルを生贄にしようとしてたのはそんな理由、なんだ………」
「でも………だからといって、お前を生贄にするなんていう選択は取るべきではなかった」
同時に立ち上がるセトとイシス。2人は地面に膝をつけると、おでこを地面にぶつけた。土下座をしていた。
「…………エレシュキガル、王子さん。俺は何でもする。だからどうかイシスだけは」
「何言ってるのにぃ……女の子の方が使い勝手はいい、よね? ならイーが何でも、する………だから、にぃだけは解放して」
「お、お前。それは――」
「にぃは黙って! 計画を実行しようっていったのはイー………イーが主犯みたいなもの………」
「何言ってるんだ! 巻き込んだのは俺だろ!?」
「違う! にぃじゃない!」
お互いを庇い合って言い合う2人。兄妹が思い合っているのがひしひしと伝わってきた。
2人に罰になんて与えるつもりなどサラサラない。確かに大星祭はめちゃくちゃになってしまってがっかりはしているし、捕まっていなければクラウンと会うこともなかった。
だが、結局2人もクラウンの被害者、洗脳され操られた実行者。
アーサー様の報告によると、2人の体にも私と同じような体を拘束する魔法をかけられていたようで、本来の力は出せないようになっていた。クラウンの正体など気づきそうな2人だが、そう言った理由もあり騙されていた。
だから、2人に罰を与えようだなんて思ってない。むしろ………。
しかし、隣のアーサー様の顔は随分と険しい。
容赦のない罰を与えそうなほど物騒な顔をしていた。
「君たちの罪は決して軽くない…それ相応の――――」
そう、アーサー様が言いかけた時だった。
「――――愛おしい妹の代わりに、俺が2人に罰を与えよう!」
扉をバァン!と開いて現れたのは1人の眼鏡の男性。私と同じ髪色を持つ、私の兄様。シン兄様だった。颯爽と現れたシン兄様は「チャオ――!!」相変わらず明るい挨拶を全員にした。
「エレシュキガル、そこの2人を俺に預けてくれないか?」
「えっ、兄様に?」
「ああ、アーサーも別に構わないだろう?」
「…………」
「もちろん、罰はちゃんと与えるとも!」
「………………まぁ、シンが罰を与えてくれるというのなら」
アーサー様の返事に「おっけー! ありがとう!」といつになくハイテンションで返す兄様。彼はセトとイシスに近づくと、豪快に2人を担いだ。
「わっ」
「えっ? えっ?」
「さぁーて2人には何をしてもらおうかな?」
そうして、「わっはっは!!」と愉快な笑いを漏らして、困惑する2人を攫って、兄様はどこかに消えてしまった。相変わらず嵐のようなお兄様だ。元気そうで何より。
あの様子だと罰らしい罰は与えない。きっと私と同じ考えの兄様は、2人に本来行くはずだった道へと導いてくれるだろう。
2人が去ったことで物騒なオーラが静まったアーサー様。私と視線が合うと穏やかな微笑みを浮かべる。その笑顔は何よりも温かった。2人がいなくなって、機嫌は良くなったようだ。
「ところで、アーサー様。1つ私からお願いがあるのですが…………」
「なぁに? 何でもいってみて。エレちゃんの願いなら何でも叶えてあげるよ」
そのお願いを納得してもらえそうな理由とともにアーサー様に伝えた。しかし、やはり許可できないのだろう、彼はすぐに返事はしてくれなかった。
「………………」
「たぶん2人とも………できていないと思うんです。何もできないままで………」
真っすぐ彼のスカイブルーの瞳を見つめて訴える。アーサー様も私の目をじっと見て黙ったまま。あまりの美しさに照れて視線を逸らしそうになったけど、私も負けずに見つめ続ける。
すると、アーサー様がはぁと折れたようにため息をついた。
「可愛い顔で見つめるのはズルいよ…………ああ、分かったよ、エレちゃん。これ以上見つめられると………僕が………」
「僕が? 何ですか?」
「こほん、今のは気にしないで………気を取り直して、エレちゃん。君の願いを叶えよう。エレちゃんの願い事なら何でも叶えようと言ったのは僕だしね」
「本当ですかっ! ありがとうございます!」
これで2人が前に進めるようになれるわ………。
「じゃあ、僕からもエレちゃんにお願いがあるんだ」
「アーサー様、からですか?」
「うん………ねぇ、エレシュキガル、一緒に文化祭に行ってくれないかい?」
うーん。なぜそんなことを聞くのだろう。
そんなの答えが決まってるのに。
「うふふ、もちろんです」
「ありがとう」
アーサー様の胸に飛び込むと、彼は優しく受け止め抱きしめる。鼻をすり合わせ、笑い合っていた。彼に触れられるのが嬉しくてたまらなかった。
外への恐怖は完全に消えたわけじゃない。だけど、みんながいるから、アーサー様がいるから、私はもう外にどこにだって行ける。
「僕らのクラスどんな出し物をするんだろうね? エレちゃん、誰かから聞いてる?」
「いいえ? マナミ様から『秘密だから教えてあげない。知りたかったら文化祭の日に来なさい』って言われました」
「僕も同じこと言われたよ」
アーサー様にも秘密にしているらしく、マナミ様たちは私たちには知らせないように徹底していた。私たちを驚かせたいのかもしれない。
「「うーん…………」」
見当もつかない私たちは揃って唸っていた。
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