11 / 236
1、オアシスの夜
オアシスの夜*
しおりを挟む
満月を過ぎて、欠け始めた月が二人を見下ろしている。
「……しても?」
シウリンの瞳が、ギラギラと野性の獣のように煌めいた。アデライードはその瞳に魅入られたように、うっとりと両腕をシウリンの首筋に回す。
「ええ……シウリン。愛してる……」
シウリンの唇がゆっくりと降りて、アデライードの唇を塞いだ。シウリンが性急な手つきでアデライードの長衣をはだけ、もどかしく自分のシャツも脱ぎ捨てる。焚火の残り火が、アデライードの白い肌を赤っぽく照らす。シウリンは息を飲んで、その肌に溺れるように唇を這わせる。
シウリンから見てアデライードは年上の美しい女性であり、また同時に、あの日森の中で会った幼い少女でもあった。守るべき清らかな存在でありながら、しかし、その肌に触れ、艶めかしい身体つきを目にすれば、どうしようもなく劣情が暴れ出す。裸で抱き合う時、シウリンの身体は勝手に、二十三歳の男として暴走する。――十二歳のシウリンが知らなかった、欲望に溺れた狂暴な肉食獣が目を醒ます。意識の片隅に残る十二歳のシウリンは、圧倒的な快楽にただ、翻弄される。
アデライードの脚を乱暴に押し広げ、猛った醜い肉棒で彼女の花園に分け入り、中を穿つ。その行為は淫らで醜悪でさえあるのに、彼は止めることができない。
「アデライード……僕、君に触れていると、おかしくなる。君が好きなのに、好きすぎて壊してしまいたい。君の喉笛を噛みちぎって、赤い血を啜りたい。肉も骨も全部粉々に噛み砕いて、食べてしまいたい。……全部、全部欲しい……君に触れていると、僕は……獣になる……」
身体の中心を貫かれ、荒々しく蹂躙されて、だがアデライードは彼の残酷な行為に歓びを覚える。昼間の優しく穏やかなシウリンも好きだ。でも、自分の全てを奪いつくそうと、狂暴に求められることが嬉しい。もっと、もっと欲しがって。もっと――滅茶苦茶にして。
月の光を浴びたシウリンの鍛え上げた肉体も、動きにつれて乱れる髪も、すべてが美しく、妖艶で、淫らで、凶悪で――それでいて神々しかった。金色の〈王気〉が周囲を取り巻き、アデライードの銀の〈王気〉を掴まえ、巻きつき、締めあげ、食い破ろうとする。
美しく驕慢に、ただ欲望だけを追い求める金色の龍を下から見上げて、アデライードは全身を貫く快楽に眉を歪める。白い腕を伸ばして彼の汗ばんだ肩に縋る。伸びた髪が肩に触れ、彼の額から頬に流れた汗が、顎の下で滴となって蟠り、アデライードの胸に滴る。
「ああ、アデライード……気持ちいい……離れたく、ない……」
「シウ、リン……ああっ……いっ……あああっ……んっ……もうっ……くるっ……」
シウリンの腰の動きが激しさを増し、さらに奥深い場所を穿てば、突き上げられるたびに白い乳房が揺れ、月の光を浴びて、乱れ髮が青白く輝く。最も深い場所を幾度も穿たれて、アデライードの快楽が極限まで高まっていく。そこは、アデライード自身すら知らない場所。この世界でただ一人、彼だけが知る秘密の場所。もっと、もっと彼で満たして欲しい。いっそこのまま壊して欲しい。誰にも、奪われぬように――。
アデライードが白い脚をシウリンの腰に絡める。それを合図にシウリンの抽挿のスピードが速まる。形の良い唇から荒い息を吐き、秀麗な眉を快楽に歪めて、シウリンが獣のような低い唸り声を上げた。
「うっ……ああ……ううっ……くっ……」
「んっ……んんっ……ああっ……あっあっ……あああぁあっ……」
アデライードが達して、白い胸を突き出すようにして仰け反り、肩に縋る両手が爪を立てる。長い絶頂に、アデライードの内部が震え、シウリンを搾り取るように蠢き、〈王気〉が襞の一つ一つから彼の雄茎に流れ込み、全身を巡って彼を蕩かそうとする。
「くっ……うううっ……」
シウリンが、白い月に喉を曝して絶頂を堪える。長い硬直の後、アデライードの全身が弛緩する瞬間を狙い済まして、シウリンが再び激しくアデライードの中を突き上げれば、絶頂直後の敏感な身体を襲うさらなる刺激に、アデライードは再び、より高い頂点へと上り詰めていく。
「はっ……ああっ、だめっ……もうっ……ゆる、してぇ……やぁああああっ」
「だめっ、ゆるさ、ない……ぜんぶ、ぜんぶ、僕の……くっ……はああっ、あああっ」
ついに、シウリンも限界を迎え、繰り返される絶頂に収縮を続けるアデライードの奥に、熱く滾る精を叩きつける。
「ああっ……熱……い……」
半ば意識を失い、ぐったりしたアデライードをギュッと抱きしめ、肌と肌を密着させて、シウリンも二人だけの快楽の淵に身を委ねた。
オアシスを吹き抜ける風が、溶け合った金銀の〈王気〉を砂漠に運んでいくーー。
「……しても?」
シウリンの瞳が、ギラギラと野性の獣のように煌めいた。アデライードはその瞳に魅入られたように、うっとりと両腕をシウリンの首筋に回す。
「ええ……シウリン。愛してる……」
シウリンの唇がゆっくりと降りて、アデライードの唇を塞いだ。シウリンが性急な手つきでアデライードの長衣をはだけ、もどかしく自分のシャツも脱ぎ捨てる。焚火の残り火が、アデライードの白い肌を赤っぽく照らす。シウリンは息を飲んで、その肌に溺れるように唇を這わせる。
シウリンから見てアデライードは年上の美しい女性であり、また同時に、あの日森の中で会った幼い少女でもあった。守るべき清らかな存在でありながら、しかし、その肌に触れ、艶めかしい身体つきを目にすれば、どうしようもなく劣情が暴れ出す。裸で抱き合う時、シウリンの身体は勝手に、二十三歳の男として暴走する。――十二歳のシウリンが知らなかった、欲望に溺れた狂暴な肉食獣が目を醒ます。意識の片隅に残る十二歳のシウリンは、圧倒的な快楽にただ、翻弄される。
アデライードの脚を乱暴に押し広げ、猛った醜い肉棒で彼女の花園に分け入り、中を穿つ。その行為は淫らで醜悪でさえあるのに、彼は止めることができない。
「アデライード……僕、君に触れていると、おかしくなる。君が好きなのに、好きすぎて壊してしまいたい。君の喉笛を噛みちぎって、赤い血を啜りたい。肉も骨も全部粉々に噛み砕いて、食べてしまいたい。……全部、全部欲しい……君に触れていると、僕は……獣になる……」
身体の中心を貫かれ、荒々しく蹂躙されて、だがアデライードは彼の残酷な行為に歓びを覚える。昼間の優しく穏やかなシウリンも好きだ。でも、自分の全てを奪いつくそうと、狂暴に求められることが嬉しい。もっと、もっと欲しがって。もっと――滅茶苦茶にして。
月の光を浴びたシウリンの鍛え上げた肉体も、動きにつれて乱れる髪も、すべてが美しく、妖艶で、淫らで、凶悪で――それでいて神々しかった。金色の〈王気〉が周囲を取り巻き、アデライードの銀の〈王気〉を掴まえ、巻きつき、締めあげ、食い破ろうとする。
美しく驕慢に、ただ欲望だけを追い求める金色の龍を下から見上げて、アデライードは全身を貫く快楽に眉を歪める。白い腕を伸ばして彼の汗ばんだ肩に縋る。伸びた髪が肩に触れ、彼の額から頬に流れた汗が、顎の下で滴となって蟠り、アデライードの胸に滴る。
「ああ、アデライード……気持ちいい……離れたく、ない……」
「シウ、リン……ああっ……いっ……あああっ……んっ……もうっ……くるっ……」
シウリンの腰の動きが激しさを増し、さらに奥深い場所を穿てば、突き上げられるたびに白い乳房が揺れ、月の光を浴びて、乱れ髮が青白く輝く。最も深い場所を幾度も穿たれて、アデライードの快楽が極限まで高まっていく。そこは、アデライード自身すら知らない場所。この世界でただ一人、彼だけが知る秘密の場所。もっと、もっと彼で満たして欲しい。いっそこのまま壊して欲しい。誰にも、奪われぬように――。
アデライードが白い脚をシウリンの腰に絡める。それを合図にシウリンの抽挿のスピードが速まる。形の良い唇から荒い息を吐き、秀麗な眉を快楽に歪めて、シウリンが獣のような低い唸り声を上げた。
「うっ……ああ……ううっ……くっ……」
「んっ……んんっ……ああっ……あっあっ……あああぁあっ……」
アデライードが達して、白い胸を突き出すようにして仰け反り、肩に縋る両手が爪を立てる。長い絶頂に、アデライードの内部が震え、シウリンを搾り取るように蠢き、〈王気〉が襞の一つ一つから彼の雄茎に流れ込み、全身を巡って彼を蕩かそうとする。
「くっ……うううっ……」
シウリンが、白い月に喉を曝して絶頂を堪える。長い硬直の後、アデライードの全身が弛緩する瞬間を狙い済まして、シウリンが再び激しくアデライードの中を突き上げれば、絶頂直後の敏感な身体を襲うさらなる刺激に、アデライードは再び、より高い頂点へと上り詰めていく。
「はっ……ああっ、だめっ……もうっ……ゆる、してぇ……やぁああああっ」
「だめっ、ゆるさ、ない……ぜんぶ、ぜんぶ、僕の……くっ……はああっ、あああっ」
ついに、シウリンも限界を迎え、繰り返される絶頂に収縮を続けるアデライードの奥に、熱く滾る精を叩きつける。
「ああっ……熱……い……」
半ば意識を失い、ぐったりしたアデライードをギュッと抱きしめ、肌と肌を密着させて、シウリンも二人だけの快楽の淵に身を委ねた。
オアシスを吹き抜ける風が、溶け合った金銀の〈王気〉を砂漠に運んでいくーー。
11
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる