24 / 25
第二話
8.一件落着
しおりを挟む
二匹目の煙々羅は一回目と同様の手順で見事に捕まえることが出来た。続く三匹目の発見報告を受けて智久は現場に急行。到着と同時に鎌鼬三兄弟につむじをやるよう指示した。
里の妖狐や池永、篠原さんには妖気探知の御札を渡して他に迷い込んだ妖怪がいないか探してもらっている。
つむじが煙々羅の煙を剥がしたところを見計らい、智久は金縛りの術をかける御札を投げ込んだ。
がさがさと音を立てて木から煙々羅が落ちてくる。周りの妖狐たちがおおっと声を上げた。
道の上に寝転がる煙々羅。だが捕獲するため智久が近づこうと思った瞬間、煙々羅は急に起き上がって飛び立とうとした。
これには智久も、つむじによって煙を霧散させていた鎌鼬三兄弟も虚をつかれた。まさか煙々羅が金縛りの術を受けてなお動けるとは思わなかったのだ。力の加減を間違えた覚えもなく、完全に動けないと思い込んでいた。
(間に合うか!?)
もう一枚御札を取り出そうとする智久だが、煙々羅は今にも飛んで逃げようとしている。
そこへ思わぬ加勢が加わった。炎の柱が四本、煙々羅の行く手を阻むように並んだのだ。周りで様子を見ていた妖狐の一人が力を貸してくれたらしい。
進行方向に壁を作られた煙々羅は、慌てて止まろうとして足がもつれて転んでしまった。
ありがたく思いながら智久は二枚目の御札を煙々羅に飛ばす。御札が張り付いた煙々羅は雷に打たれたようにびくりと体を震わせ、道端に倒れ込んだ。今度こそ動かなかった。
煙々羅を捕まえた智久は助力をくれた妖狐のところへ向かう。
「ありがとうございました。助かりました」
「いいってことよ。助けてもらってばかりじゃあれだからな」
礼を述べると耳をぴくぴくさせながら妖狐の男は言った。あれはどういう感情表現なのだろうか。智久にも分からない。
「お~い! 二宮、大丈夫か!?」
里の中を見回っていた池永が走ってくる。また別の方向からは篠原さん、忠重さんがこちらに向かっていた。
「ざっと里の様子を見てまいりましたが、どうやら紛れ込んだのは煙々羅が三羽だけのようですな」
「そうですか。結界の方はどうでした?」
「それが、どこにも解れが見当たらぬそうです。見落としているのか、もう直ってしまったのか……」
忠重さんは思案顔だ。結界が解れていないのならば、煙々羅はどこからやってきたのか謎が残る。
「なにはともあれ、これにて一件落着。二宮殿、尽力に感謝いたします」
「いえいえ、お役に立てて光栄です」
考えを脇に置いたらしい忠重さんが深々と礼をするのを礼で返し、智久は今回の騒動について考える。
煙々羅は群れを作らない妖怪だ。同じところに三羽も現れるのは非常に珍しい。おまけに一羽は金縛りの術を受けながらも動けていた。特別妖力が強い個体というのなら納得がいくが、調べた限りではどうやらそうではないらしい。
そして一番の謎は結界に穴がなかったということだ。煙々羅はいったいどこから来たのか? 誰かが連れ込んだのだろうか? その理由は。方法は。考えても分からないことだらけだった。確かなのはこの騒動に不自然な部分があるということだけ。
「二宮殿、あまりお気になさらずに」
忠重さんは言葉にしなかったが、智久は彼が言わんとした意味は分かった。この問題は里の問題、これからはこちらでなんとかする、ということだ。部外者の自分が出来るのはここまで。
「分かりました」
智久が納得したのを見て、忠重さんはうむと頷いた。
「皆のもの! 事は全て収まった。解散じゃ!」
手を叩き、忠重さんが声を張ると、一人、また一人と野次馬が減っていく。ほとんど人気がなくなったのを見計らい、忠重さんは智久たち三人に言った。
「屋敷に戻りましょう。お礼といってはなんですが、お茶の一杯でもお出しします。ささ、行きましょう」
仕切り直しとばかりに背を押す忠重さんの好意に甘え、智久たちはまたまたお茶をご馳走してもらうことになったのだった。
里の妖狐や池永、篠原さんには妖気探知の御札を渡して他に迷い込んだ妖怪がいないか探してもらっている。
つむじが煙々羅の煙を剥がしたところを見計らい、智久は金縛りの術をかける御札を投げ込んだ。
がさがさと音を立てて木から煙々羅が落ちてくる。周りの妖狐たちがおおっと声を上げた。
道の上に寝転がる煙々羅。だが捕獲するため智久が近づこうと思った瞬間、煙々羅は急に起き上がって飛び立とうとした。
これには智久も、つむじによって煙を霧散させていた鎌鼬三兄弟も虚をつかれた。まさか煙々羅が金縛りの術を受けてなお動けるとは思わなかったのだ。力の加減を間違えた覚えもなく、完全に動けないと思い込んでいた。
(間に合うか!?)
もう一枚御札を取り出そうとする智久だが、煙々羅は今にも飛んで逃げようとしている。
そこへ思わぬ加勢が加わった。炎の柱が四本、煙々羅の行く手を阻むように並んだのだ。周りで様子を見ていた妖狐の一人が力を貸してくれたらしい。
進行方向に壁を作られた煙々羅は、慌てて止まろうとして足がもつれて転んでしまった。
ありがたく思いながら智久は二枚目の御札を煙々羅に飛ばす。御札が張り付いた煙々羅は雷に打たれたようにびくりと体を震わせ、道端に倒れ込んだ。今度こそ動かなかった。
煙々羅を捕まえた智久は助力をくれた妖狐のところへ向かう。
「ありがとうございました。助かりました」
「いいってことよ。助けてもらってばかりじゃあれだからな」
礼を述べると耳をぴくぴくさせながら妖狐の男は言った。あれはどういう感情表現なのだろうか。智久にも分からない。
「お~い! 二宮、大丈夫か!?」
里の中を見回っていた池永が走ってくる。また別の方向からは篠原さん、忠重さんがこちらに向かっていた。
「ざっと里の様子を見てまいりましたが、どうやら紛れ込んだのは煙々羅が三羽だけのようですな」
「そうですか。結界の方はどうでした?」
「それが、どこにも解れが見当たらぬそうです。見落としているのか、もう直ってしまったのか……」
忠重さんは思案顔だ。結界が解れていないのならば、煙々羅はどこからやってきたのか謎が残る。
「なにはともあれ、これにて一件落着。二宮殿、尽力に感謝いたします」
「いえいえ、お役に立てて光栄です」
考えを脇に置いたらしい忠重さんが深々と礼をするのを礼で返し、智久は今回の騒動について考える。
煙々羅は群れを作らない妖怪だ。同じところに三羽も現れるのは非常に珍しい。おまけに一羽は金縛りの術を受けながらも動けていた。特別妖力が強い個体というのなら納得がいくが、調べた限りではどうやらそうではないらしい。
そして一番の謎は結界に穴がなかったということだ。煙々羅はいったいどこから来たのか? 誰かが連れ込んだのだろうか? その理由は。方法は。考えても分からないことだらけだった。確かなのはこの騒動に不自然な部分があるということだけ。
「二宮殿、あまりお気になさらずに」
忠重さんは言葉にしなかったが、智久は彼が言わんとした意味は分かった。この問題は里の問題、これからはこちらでなんとかする、ということだ。部外者の自分が出来るのはここまで。
「分かりました」
智久が納得したのを見て、忠重さんはうむと頷いた。
「皆のもの! 事は全て収まった。解散じゃ!」
手を叩き、忠重さんが声を張ると、一人、また一人と野次馬が減っていく。ほとんど人気がなくなったのを見計らい、忠重さんは智久たち三人に言った。
「屋敷に戻りましょう。お礼といってはなんですが、お茶の一杯でもお出しします。ささ、行きましょう」
仕切り直しとばかりに背を押す忠重さんの好意に甘え、智久たちはまたまたお茶をご馳走してもらうことになったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜
来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。
自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。
「お前は俺の番だ」
番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。
一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。
執着と守護。すれ違いと絆。
――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。
甘さ控えめ、でも確かに溺愛。
異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる